
5日間で課題解決を行える「デザインスプリント」
5日で成果を出すデザインスプリント
ここまでご紹介してきたような、実制作前に行う課題解決のための調査や分析、検証には、通常数カ月を要します。それほど時間や予算をかけていられないという場合には、たったの5日間に凝縮して同様のフローを局所的に行う「デザインスプリント」を試してみるのはいかがでしょうか。
まず1日目は、3~4人のユーザーを対象にインタビューを行う他、データ分析や競合調査、課題定義などを行っていきます。そして2日目は、課題解決のためのアイデア出しやストーリーボード作成を。3日目は出したアイデアの取捨選択やワイヤーフレームの検討。4日目はUIを考え、プロトタイプを制作し、5日目にプロトタイプでユーザーテストを行い、その結果を分析したり仮説検証をしたりします。こうして、1日目で定義した課題に対して出したアイデアが良さそうか否かを短期間で検証していくのです。
デザインスプリントの使い所とメリット
デザインスプリントは、もともと米GV社(旧Google Ventures)がスタートアップ企業支援として考案したもので、現在では新事業や具体的にやるべきことが見えないプロジェクトの課題探し、長期プロジェクトを視野に入れたトライアル的な利用などがされています。基本的にデジタルのプロジェクトに有効な手段で、すでに公開されているWebサイトやアプリの改善にも活用できます。
メリットは、とにかく結果が速く出ること。そのため、たくさんのアイデアを次々に試していったり、何度も繰り返して改善を重ねていったりすることができます。仮説を検証した結果ダメであっても、それほどリソースを割かない段階で適切ではないアイデアの洗い出しができたという成果となります。また、この期間中はプロジェクトに関わるメンバーが集中して取り組むので、チーム内のコミュニケーション密度が上がったり、アイデア出しの会議を長々やる余裕もないのでポンポンと効率的にアイデアを出すことができたり、というメリットもあります。
ただ、5日間はデザインスプリントだけで多くの労力や時間を要するので、主要スタッフがあまり時間を取れないなど周囲の協力体制が得られない場合は実施が難しいです。ユーザーインタビューを一両日中に文字起こししてまとめたり、プロトタイプを即日仕上げたりするなど各セクションの迅速な対応力や技術力も求められます。
5日間で数カ月かけたフローと同等の正確な答えが出るわけではないので、素早くポイントを絞って仮説検証したい場合に向いている手法と言えます。