UXデザイナーの理想と現実_UXデザイナー深津貴之さんに聞きました

Question?? UXデザイナーとはどういう存在ですか?

 

「仕組みづくりが求められる存在。お金の話もできないと厳しいです」

「UX」という言葉の定義が人によって まちまちですので、最初に僕自身が考え る「UXデザイナー」を説明すると、商品 企画からマーケティング、できればカス タマーサポートまでも含めた企画立案 や設計、対応ができる人、となります。

かつてはUIに寄った領域の仕事をし ていましたが、2010年ごろからUXに広 げて仕事をしています。もともとのスタン スが「ユーザーに使ってもらえてナンボ」。 UIだけに取り組んで問題が解決するケー スは少なく、もっと手前のレイヤーから(UI 以外のことに)入り込む必要性を感じて、 実行に移してきました。

心がけているのは、関わる案件のビジ ネス的な成功を引き出すこと。UXデザ イナーと名乗るなら、ビジネスの言葉が 話せる必要があるし、さまざまな経営者 の考え方を学んだり、経営者と折衝す る際にきちんと対話できる素養も身につ けるべきです。上流工程の話になると、 お金(予算)や指標の絡む数字の話は 必須です。数字が苦手だと厳しいですし、 中長期的なビジョンも持っておきたい。 その上で、ユーザー目線の立場に配慮 できるバランス感覚も必要になります。

既存の状況を大きく変える役割を担 うので、僕個人の感触だとボトムアップ では進まない。トップダウンで断行しな いと前進が厳しく、経営者に対して自ら が何に長けて、どのような資質のアドバ ンテージを握る人間なのかをわかりや すく説明できる必要もある。そうやって 周辺の協力が得られるかどうかが、前進 のためには大切な要素です。

「UXデザイナー」とは、ユーザー体験充実のためのあらゆる要素について、多岐にわたって取り組む存在です

 


 

Question?? UXデザイナーが気をつけるべきことは何でしょうか?

 

「“UXに取り組むと利益が生まれます”と、発注側に説明できるようにしておこう」

昨今は、技術力だけで他と差を見い 出すことが難しい時代です。ユーザーの 使いやすさを十分考慮できた、仕組み 作りができる人材(それをUXデザイナー と呼ぶなら)のニーズが当面続くでしょう。

僕自身がガチガチのUXデザイナーと いう立場でないからこそ言えるのが、あ まりにも「UXファーストすぎるUX」を求 めるべきではない、ということ。UXの追 求の先にきちんと利益を上げる構造が 担保されているべきです。「UXありき」 すぎると、たとえ正論でも事業側は制作 費が膨らみすぎて手がつけられなくなり、 プロジェクト自体がなくなりかねません。 理想のUXを最終的なゴールに据えても いいので、性急に追求しないこと。中長 期的な計画のもと、徐々に洗練させなが ら並行して利益も上げていく。プロジェ クトが継続してこそゴールに近づけるか らです。

こうした点からも、仕組みづくりのほ かにプロジェクト全体を見通せる能力や、 利益にコミットできるスタンスもUXデザ イナーには必要不可欠。そもそも利益 が生めないと、UXに取り組むこと=コス トセンターだと思われかねません。数字、 お金の拠り所も説明できる立場であり たいですよね。

UXデザイナーを志す方は、いかに依 頼(発注)側の代表(社長)や予算権限 のある人たちと直接折衝できて理解が 得られる存在になれるか? 僕も7年か かって今があります。“ 任される人材”に なってこそ、UXの根本に関われるのです。

大事なのは中長期的に改善できること。戦略的にゆっくり進める(漸進)判断も必要です

 

深津貴之
(株)THE GUILD 代表取締役。UXデザイナーの立場で、プロジェクトの上流工程から参画する案件を多数手がける。「fladdict」運営者としても有名。2017年10月、noteやcakesを運営するピースオブケイクのCXO(Chief eXperience Officer)に就任。 http://theguild.jp/ http://fladdict.net/blog/
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