インバウンドの主役・中国人の財布は「スマートフォン決済」でつかめ!

中国人の購買ポテンシャルは高く今後多業種にビジネスチャンスの可能性が!

近年、日本を訪れる外国人は増加していますが、中でも最も多いのが中国人です。1人当たりの旅行支出も2017年は1位の約23万円で、そのうち約11万円を買い物代(国土交通省観光庁 訪日外国人消費動向調査(2017年))が占めており、日本の小売業やサービス業に大きな影響を与えていることがわかります。ビザの発給条件の緩和などにより、最近は多くの中国人が訪日できるようになりました。日本を再訪する中国人も増えていて、日本での行動の多様化が進んでいることも見逃せません。中国人旅行客の行動範囲が広がっていけば、今後より多くのエリアや業種にビジネスチャンス拡大の可能性があります。

 

キャッシュレス化が進む中国は、現金払いよりスマートフォン決済が当たり前

日本に来る中国人旅行客に商品やサービスを販売する場合、理解しておきたいのが、中国ならではの決済方法です。いまだに現金払いがメインの日本と違い、キャッシュレス化が大幅に進む中国では、スマートフォンを使った支払い、いわゆるモバイルペイメントが主流になっています。そもそも中国でキャッシュレス化が進んだ背景には、中国の最高額紙幣は100元札で、これは日本円に換算すると約1,640円(2018年9月23日時点)3にしかならず、高額商品を購入する場合、大量の紙幣を持ち歩かなければならないことや、中国は偽札の流通がたびたび報じられていることもあり、中国人は現金決済をあまり好まないという事情があります。そのため、2000年代にはキャッシュカード兼デビットカードの「銀聯(ぎんれん)カード」が普及しました。その後、スマートフォンが爆発的に広がり、より手軽に支払いができて、店側も専用の端末がいらないスマートフォン決済がスタンダードとなりました。

日本は2018年に経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を掲げ、モバイルペイメントを推進する方向に動いています。しかし、スマートフォン決済への取り組みはまだまだこれからというのが現状です。今は訪日中国人も現金での支払いが多いのですが、買い物のたびに小銭や紙幣を出すのは中国のスタイルからすると面倒。さらに、中国の人民元を両替所で日本円に換金するよりも、スマートフォン決済の方がレートが優遇されることが多いことから、現金決済への不満を持つ中国人は少なくありません。日本の小売店や飲食店、施設なども訪日中国人のスマートフォン決済への対応を考える時期に来ていると言えそうです。

 

中国のスマートフォン決済はアリペイとWeChatPayの「QR決済」が主流

中国のスマートフォン決済で特徴的なのは、QRコードを使った「QR決済」です。これはアプリをインストールしたスマートフォンでQRコードを見せるかスキャンするだけなので、店側は設備投資が少なくて済み、簡単に導入できることから、中国では都市部だけでなく地方の露天商まで幅広く普及しました。

このQR決済を牽引しているのが、「アリペイ(支付宝)」と「WeChatPay(微信支付)」の2つの決済サービスです。この2つで市場を寡占していて、ともにユーザー獲得にしのぎを削っています。どちらも支払いが簡単なことに加え、ユーザー同士の送金が無料・即時反映できるので、例えば訪日を予定している友人にチャットで買い物を頼み、気軽に送金することもできます。さらに、アリペイは割引などのイベントが盛んに実施されている他、アプリ内の「コウベイ」と呼ばれるクチコミサイトの地図にアリペイ利用者が多いお店をプロットしてくれる機能も付いています。WeChatPayもクチコミが盛んでお店の情報が拡散されるメリットがあります。日本の小売業やサービス業が、アリペイやWeChatPayのQR決済に対応することで、中国人の利便性アップだけでなく、お店のPR効果も望めそうです。

 

2020年に向けてビジネスチャンスを拡大しよう!

中国人観光客のアリペイやWeChatPayでの決済に対応する動きは日本国内でも進んでいて、百貨店や家電量販店、ドラッグストアなどがすでに対応している他、アミューズメントパーク、地方の商店街や飲食店などにもQR決済に対応する動きが広がっています。

QR決済に対応しようとする場合、方法はいくつかありますが、低コストかつ短期間でできるのが、決済代行会社などを利用する方法です。決済用のスマートフォンやタブレット端末とWi-Fi環境を整え、加盟店登録をして、スマートフォンやタブレット端末に専用アプリをインストールすれば、QR決済が始められます。申し込みの費用や月額費用は無料で、必要なのは決済ごとの手数料だけということもあり、手数料もクレジットカード決済より低めです。実際に導入した都内のディスカウントストアでは、全売り上げのうち、アリペイの利用率が約25%となり、前年同月比140%の売り上げを記録した例もあります。決済が効率化できるうえ、他店との差別化も図れるので、集客効果が見込めそうです。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、政府が訪日外国人旅行者数4,000万人を目標に掲げ、インバウンドの取り組みを進める中、中国人旅行客もまだまだ増えると考えられます。ビジネスチャンス拡大のひとつの策として、QR決済への対応を考えてみましょう。

 

教えてくれたのは…國藤弘展さん
ペイメント事業を展開する「株式会社ユニヴァ・ペイキャスト」のマーケター兼クリエイティブディレクター。日本のインバウンドや中国のモバイルペイメント事情に詳しい。グラフィック/Webのデザイナー経験もある。
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