ブラウザ表示ではないそのデータ、Googleアナリティクスで解析できます!
「Measurement Protcol」という仕組みを使うと、ブラウザ以外からもGoogleアナリティクスにデータを送信できるため、Web解析のテクニックを適用できる。今回は、ウェブ解析士協会のメールを例に、その手法を紹介する。これを使えば、インターネットにつながるさまざまなデバイスのアクセス解析を行いたいというニーズにも対応できるので、今のうちにぜひ身につけておこう。
話してくれた人
江尻 俊章さん
福島県いわき市生まれ。日本でもっとも早い時期からWeb解析コンサルティングを提供。2010 年WACA設立、代表理事に就任。ウェブ解析士の教育と認定資格を開始。
一般社団法人ウェブ解析士協会
事業の成果に導くWeb解析を学ぶ機会の創出、研究開発、関心を持つ人たちの交流促進、就業支援などで、Web解析を通じての産業振興やWeb解析の社会教育を推進する。
メールやIoTをアクセス解析する?
アクセス解析手法の多くはJavaScriptが動作するブラウザを前提にしており、それ以外の環境からはデータを取得できない。たとえば、IoT(Internet of Things)などのネット接続可能な機器が該当する。しかし、「Measurement Protcol」という仕組みを使うと、非JavaScript環境でもGoogleアナリティクスにデータを送信できる。その活用例として、比較的わかりやすい「メール」のアクセス解析を紹介しよう。
メールによるアンケート調査依頼
ウェブ解析士協会では、毎年、受講者へアンケートを行っているが、売り上げ貢献や年収など、センシティブな情報を求めているため、昨年末の回答は200件未満であった。今年はアンケートの回答数を上げることが課題である。実は、アンケートの仕組みとしてGoogleフォームを使っている(01右)ため、回答数は把握できるが、基本的にはフォームでの行動はGoogleアナリティクスで測定できない。
そこで、まずは昨年のウェブ解析士協会のWebサイトのGoogleアナリティクスのデータを見てみよう(02)。アンケートの回答数は200近いのに、サイトのニュースを見たセッションは9しかない。メールでアンケートの案内をしたため、多くのユーザーはサイトのニュースを見ずに直接アンケートに回答しているということだ。したがって、案内メールの反応が重要であり、どのようなメールにすればいいのかを知るため、開封率を測定したい。ここで活用するのが「Measurement Protcol」だ。
メールの開封率の測定
Measurement Protocolとは、トラッキングコード(Webサイトに埋め込むJavaScript)を経由せずにGoogleアナリティクスにデータを送付する方法だ。これにより、JavaScriptが動作しない環境からでもGoogleアナリティクスにデータを送ることができる。
今回は、メールの開封率を調べるために、メールに画像を埋め込んで利用する(01左)。詳細は割愛するが、Measurement Protcolを設定したメールをユーザーが開くと、データがGoogleアナリティクスに届くことになる。なお、簡単にパラメータを作ることができる「Hit Builder」(03)というサイトも用意されている。
測定の結果
前回の報酬は2名にiPadをプレゼントというものだったが、今回は1万円相当の金券を10名に変更した。これが功を奏し、前回は200件に満たなかったアンケート回答結果は400件を超えた(04)。
では、アクセス解析の結果を見ていこう。メールの開封(05:EmailOpen)した時間帯とメールを開封したときのセッションあたりのイベントの数は、開封した時間帯は10時と17時がピークだが、イベントを複数回クリック(Open/Session)したユーザーは夕方に集中している。また、回答完了(ConfirmSession)したユーザーは14時と17時にピークがあった。
このことから、二つユーザー傾向が見えてくる(06)。この二つのユーザー群によるメール開封タイミングの違いと、その後のWebへの訪問の違いには興味深い差異がある。
開封してもアンケートに回答しなければ成果とならないことを考えると、今後、アンケートの案内メールを配信するときは、13時か16時頃が最適ではないかという結果が得られた。
Measurement Protocol利用の注意点
このように、Measurement Protocolはとても便利だが、定義を間違えると誤った値が送られてしまい、判断を間違える可能性があることには注意したい。このメール開封の値も、イベントではなくページビュー数として取得すると、特定のページのページビューが上がってしまう。Webサイト上の行動として捕捉したいのであればセッション、ページビュー、ユーザーを定義した上で送るべきだし、そうではないならば、イベントやカスタムディメンションなどに送ったほうが賢明だ。この行動は何にカウントすべきか、そのデータをどう活かすのか、定義をしっかり考えることが必要だ。
IoT時代のMeasurement Protcol
現在、多くのアクセス解析手法は、Webビーコン型となっている。つまり、JavaScriptが動くことを前提としているため、それ以外の環境ではトラッキングができない。前述したように、IoTがその代表例だ。Measurement Protocolを使うと、たとえば、POSと連携し、会員ごとの店舗での購買履歴をWebでの購買履歴と連動させることも簡単に可能になる。ルームキーとしてアプリを採用しているホテルではチェックイン/アウトを測定することも可能であるし、iBeaconやRFIDなどを使えばユーザーが商品を手に取ったといった指標も取得・送信できる。
もっと身近な例としては、チラシなどに掲載するQRコードに適用することが考えられる。個人ごとに発行する資料にMeasurement Protocolを含んだQRコードを使えば、それぞれのアクセスをGoogleアナリティクスで取得・分析できるようになる。これまでもログを取ることは可能ではあったが、Googleアナリティクスを使ってWeb解析の手法で分析できるのが大きい。さらに、QRコードでサイトに来たユーザーにオフラインの会員向けイベントを告知配信するなど、O2Oマーケティングにもつながる。つまり、これまでは取得することが難しかったブラウザ以外のデバイスのアクセスのデータを解析できるようになるため、さまざまな展開が考えられるのだ。
今後は目的に応じたブラウザやアプリの利用が一般的になるので、デバイスをまたいだトラフィックを把握できるMeasurement Protcolは、活用方法を身につけておこう。
※Web Designing 2015年10月号掲載記事を転載