来店につながる指標を見抜く! 集客型Webサイトのデータ活用

WebサイトのコンバージョンやKPIを決める際、ECサイトには売上金額という明確な指標があるが、店舗集客型Webサイトでは来店につながる指標を的確に定めるのが難しい。今回は、オンラインから実店舗(オフライン)への送客を目的としたサイトを例に、店舗集客型のWeb解析について解説する。その結果に基づいた施策により、Web経由での予約数がどのように増えたかも紹介していこう。

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実店舗への送客が課題

今回の事例である「三橋矯正デンタルオフィス」は、東京駅近くで矯正治療を専門に行っている歯科医院だ。矯正治療の技術力が高く、一般歯科医師やクチコミによる紹介患者が多かったが、Webサイト経由での予約数は伸び悩んでいることが課題だった。そこで、コストを抑えながら、Webサイト経由での予約数を上げるために、どのような解析・施策を行ったかを紹介していこう。

三橋矯正デンタルオフィス 東京駅近くにある矯正治療専門の歯科医院。立地条件のよさから、神奈川、千葉、埼玉の各県からの患者さんも多い。右は、今回の施策により作成したスマホに特化したランディングページ

Webサイトの成果を計測する

サイト運営では、正しく成果を計測することが非常に重要だ。店舗集客型のWebサイトでは、時にはオフラインで計測する数値が重要になってくる場合がある。

今回の事例では、Webサイトを見たユーザーが電話して初診予約に至った回数をWebサイトの成果として設定した。これを正しく計測するために、Webサイト掲載用の電話番号を新たに取得し、その電話番号で受けた予約電話の回数を計測した。これは、知人の紹介や看板などの他媒体からの予約と区別するためだ。

イベントトラッキングとGAの目標設定

Google アナリティクス(以降、GA)では、「イベントトラッキング」を使うことで、特定のリンクのクリック回数を計測できる。この機能を活用して、Webサイト内にある「初診の相談をする」という通話ボタンのタップ(以降、TELクリック)の回数を計測した(01、02)。

01 Googleアナリティクスのイベントトラッキングを使うと、クリック(タップ)されたボタンを計測することが可能だ(左)。イベントトラッキングの実装には、リンク部分に特定のコードを追加する(右)
02 Googleアナリティクスで、[レポート]→[行動]→[イベント]→[サマリー]より、イベントの発生状況が確認できる。また、ラベルを設定すると、どのページのどの部分のボタンがクリック(タップ)されたかを判別することも可能だ

このTELクリックをGAの目標に設定することで、目標到達から辿ってさまざまな詳細情報が得られる。つまり、今回の事例では、TELクリックしたユーザーの数がわかるのはもちろんのこと、それに付随する次のような情報も収集可能となったわけだ。

・TELクリックの発生ページ
・TELクリックの発生した時間帯
・TELクリックの発生した地域
・TELクリックユーザーの流入ページ
・TELクリックユーザーの流入媒体
・TELクリックユーザーの流入キーワード

これらのCVにつながるユーザーの指標をウォッチすることで、改善すべき点とその対策がみえてくる。

GAのフィルタリング設定

アクセス解析ツールでは膨大な情報が取得できるが、どの数字を、どのように扱えばよいのかに気を付けよう。入手できる情報が多いため、本来見るべきことが見えなくなってしまう場合がある。

今回の事例を使って、店舗集客型Webサイトの場合に気を付けるポイントを紹介しよう。

・エリア
どんなにアクセスが増えても、商圏外からのアクセスは集客につながらない。この事例では、患者の9割が東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県から来ていたため、これをターゲット地域とした(03)。GAのビューを活用すれば、エリアで絞ったアクセスデータを見ることが可能だ。

03 Googleアナリティクスで、[アナリティクス設定]→[ビュー]→[フィルタ]より、条件に合ったアクセスに絞り込む設定が可能だ。この事例では、CVにつながる可能性のあるアクセスを解析するために、地域を限定した

・デバイス
来院した患者さんを調べたところ、そのほとんどがモバイルユーザーで、Webサイトもスマホで見ていた。そこで、モバイルユーザーだけのビューを設定した

これらの設定により、「商圏内のユーザーで、モバイルからのアクセス」で、「サイトの通話ボタンをタップ」して、「専用ダイヤルで初診の予約」というCVのアクセスデータを取得する準備が整った。

では、これらのデータを活用して実際に行った施策を紹介していこう。

「呼び水コンテンツ」からCVを獲得する

「呼び水コンテンツ」とは、オーガニック検索からの流入を長期にわたって安定して呼び込めるコンテンツを指す。オーガニック検索は、広告と異なり、ランニングコストをかけずに流入を呼び込めるのが魅力だ。今回の事例では、「部分矯正」というページが呼び水コンテンツとして機能し、現在は毎月約2,000~3,000セッション以上のオーガニック検索による流入がある。

しかし、改善前は、一定の流入数は確保できていたものの、このページからのCVRは0.14%と、CVまでつなげられていないという状況であり、ここから施策をはじめることにした。

まずは呼び水コンテンツとして安定的にCVを獲得していけるかどうかを確認するために、検索市場の動向をチェックした。Googleトレンドで「部分矯正」を調べると、検索回数が十分にあり、増加傾向にあることがわかる(04)。

04 Googleトレンドを使って、「部分矯正」を調べた。特定キーワードにおける検索市場の動向を確認ができ、期間の設定や複数キーワードの比較も可能なので、ニーズを探る際には活用したい

次に、Google Search Consoleでもオーガニック検索での流入状況を調べた。Search Consoleの検索アナリティクス機能を使えば、特定の検索クエリを絞り込むことが可能だ。その機能を使って「部分矯正」を調べると、検索順位が20~30位で、表示回数も少なかったため、検索順位やCTR(クリック率)に伸び代があることもわかった。これらのことから、この「部分矯正」ページを改善すれば(ユーザーのニーズにマッチしたコンテンツに改善ができれば)、呼び水コンテンツとして機能し、さらなる集客が期待できると考えた。

想定外の結果から導く「仮説」

従来は、このサイトでは7ページ以上遷移してからCVに至るケースが多かった。矯正治療は100万円近くかかることもあるため、複数のページを見比べて慎重に検討していると想像している。したがって、「部分矯正」に流入したユーザーも同様に7ページ以上遷移した後に、CVに至ると想定していた。

しかし、実際は部分矯正ページからの流入に限っては、流入後のページ遷移が少ないままCVに至るケースが見受けられたのだ。つまり、部分矯正は全顎矯正よりも費用が安いため、もっと手軽にCVに至るのではないか、CVに至るために必要な情報も限られているのではないかという仮説が生まれた。

そこで、この仮説をもとに、部分矯正ページだけで流入からCVまで完結するようにコンテンツを設計し直せば良いのではないかと考えた。また、一般にモバイルユーザーはページ遷移を嫌う傾向があるため、必要なコンテンツを1ページに集約することでモバイルユーザーに優しいページとなる。ちなみに、1ページでCVまで完結したコンテンツを作成するための必要な要素は、GA解析から導ける(05)。具体的には、料金の詳細や矯正装置の種類などを追加し、「部分矯正」での流入ユーザーに最適化したコンテンツ展開に変更した。

05 Googleアナリティクスで、[レポート]→[行動]→[サイトコンテンツ]→[ランディングページ]→[セカンダリディメンション]→[2ページ目]として表示。「/examination/petit.html」(部分矯正ページ)の次に遷移したページが確認できる。つまり、「部分矯正」のページを見たユーザーが、次に求めている情報が想定できることになる

それだけではなく、サイトを変更することで、解析データにどのような変化が起こるかもしっかりと想定しておこう。そうすることで、想定値と実測値に乖離が起きていないかを検証できるからだ。

今回は、部分矯正ページからの流入セッションやCVRが改善されると想定していたが、その反面、直帰率が上がってしまうことも覚悟していた。なぜなら、1ページ完結でCVしてもらうためのページに変更したため、ユーザーが「通うべき歯科医院かどうか」の判断も1ページでついてしまうからだ。つまり、もしユーザーが通いたいと思うならTELリンクが発生するし、そうでなければ直帰してしまうということだ。

まとめ

では、実際のGAの数値をお見せしよう(06)。改善前の2015年5月と2015年12月現在における変化を見ると、確かに直帰率は上がっているが、CV数も増えたことがわかる。

06 ページ改善前の5月(下)と改善後の12月(上)では、セッションが倍になり、CVRも約5倍になったことがわかる。そして、想定通りに直帰率が上がったことも確認できる

このように、Webサイトを更新した際はそれに伴う数値変動を想定し、その更新が妥当だったかの検証が必須となる。コンテンツを改善する際には、「どの指標が重要であるのか」を決め、それ以外の数字が下がるという思い切った施策もあるということを覚えておくとよいだろう。また、オフラインへの送客を目的とした場合でも、Web解析上の指標は売り上げに直結するということを忘れないでほしい。

※Web Designing 2016年4月号掲載記事を転載

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