Web担当者向けー炎上・トラブル初動マニュアル

ここからは、中長期的にじっくりとオウンドメディアを運営したりSNSへの投稿を続けるという前提で、「起こしたくはない」けれど「起きてしまった」デジタル上のトラブルについて、速やかに対応できる手順を示しています。公開前の段階から起こりえるトラブル1例と、公開後、運用を開始してから起きてほしくない(でも起きてしまった)トラブル3例について、まとめました。

自分たちがデジタルという開かれた場で表現していることについて、法的な根拠を持って説明できることは、未然の回避策として必要です。ここでは、現場のミスやトラブルに直面した場合、実際に取るべき行動について、具体的に考えましょう。

周囲のユーザー(お客様)は、Web担当者が迷っている時間、悩んでいる時間を待ってくれません。特に、Web担当者になりたてという人、トラブルに直接対処したことがない人は、「何かが起きた」時に「速やかに」動くために活用してください。

Check!
Web担当者になった以上、強烈な当事者意識で事に当たリましょう。「心当たりがない」「自分のせいではない」というトラブルだったとしても…。

目次

ライターの原稿、どこかで読んだ覚えが…。もしや盗用!?

[何が問題?]
実際に盗用していた場合、盗用したライターだけでなく、採用して公開した自社側(ポータルサイト側、オウンドメディア運営側)も責任が問われます!

Answer ライターとは、事前に参照元の開示を約束しておく

外部ライターを起用する場合は特に注意が必要です。内製であっても、参考記事を仮原稿扱いでコピー&ペーストしてしまい、差し替えずに公開すればもちろんアウト。不注意という理由は通用しません。

ポイントは2点。盗作の公開は、ライターとともに自社に連帯責任が問われます。だからこそ公開前に気づきたいのです。もう1点は、ライターが何かを参考にして記事を作ること自体は悪いことではなく、その旨を伝えて、オープンに状況を告白してもらうこと。

ライターに確認しづらい場合、「全員に参照元を確認している」「他と似た記事は、オリジナルでも掲載には慎重なので」など、相手を尊重する工夫をした質問で聞き出しましょう。参考文献を記せば許容できる範囲なら、対象原稿は活かしていいでしょう。

もっと未然の防止を優先するなら、参照元の開示を執筆依頼時の条件にしておきましょう。

 

Check!
過去にやり取りのあったライターに疑惑が出た際は、過去の記事の再調査も迅速に行うこと。疑いを払拭した清廉潔白な関係性を築きたいところです。

契約切れのデータを公開したまま。相手からクレームが…

[何が問題?]
明らかな契約違反です。もしタレントさんやモデルさん(肖像権など)が絡めば、莫大な損害賠償事案に発展する危険性も。発覚時点で即削除を!

Answer 即削除を。未然防止のためにデータ管理の全面見直し

相手からクレームが来た場合、少しでも迅速に対応できれば、相手側の怒りのトーンを下げることにもつながります。社内共有と並行して、自己判断で一時的な非公開の状態を早急に行うなど、柔軟で相手に誠意を示す対応を心がけましょう。

契約切れとなったデータがレンタルフォトデータのような場合と違い、タレント事務所の肖像権も絡むケースだとさらに厄介です。同業他社への出演が禁じられている場合も多く、著作権侵害を越える多額の損害賠償請求へと発展しかねません。管理が杜撰で、デジタルデータの取り扱いを間違えると、大きな損害が待っています。

この事例は、特に「確実に」「未然に」防ぐべきです。社内で担当者が変わっても、どのデータがレンタルで、どのデータが契約の縛りがあるのか、などをきちんと共有できる管理体制を構築しておきましょう。

Check!
Webだと気づけば即削除、非公開にはしやすいが、印刷物だと回収も困難。相手側から法外な賠償請求も考えられますので、絶対に避けることが肝心です。

 

これ、うちのサイトをパクっている…?(酷似している)

[何が問題?]
明らかな盗作、完全なコピーでないと、訴えても裁判では負ける可能性が。ただし放置していれば、自社が盗作と疑われる危険性すらあります。

Answer 怒りにまかせぬ最適な対応を弁護士と協議!

難しいのは、完全なコピー&ペースト、そのままの模倣と違う場合、証明しづらいことです。相手に何も言わなければ黙認と受け取られかねない。もしくは、自分たちが真似をした側と誤解される可能性もあるので、気になれば相手側に真意を尋ねてください。

できれば、気づいた初期段階で弁護士に相談したいところです。模倣の度合い、悪質性の有無、落としどころの模索を専門的な立場でアドバイスがもらえるはずです。

何せ相手が意図的なのか、偶然の一致なのかもわかりません。相手への初回のコンタクトも、自社名義にしつつ弁護士と相談していることをにおわせるのか、弁護士名義だけで文書を出すのか。もしくは、確信犯だと感じればどのタイミングで訴訟に踏み切る意思を示すかなど、親身に相談に乗ってくれるはずです。泣き寝入りとならないようにしたいところです。

Check!
「似て非なる」の基準は、自社側で我慢できる度合いで決めましょう。納得できなければ、相手に真意を確認します。感情にまかせない対応を心がけてください。

 
 

まずい! 他者と酷似したページを公開してしまった…

[何が問題?]
前例の裏返しのケース。相手側の権利や資産を無断で犯していれば、訴訟への発展や、よりこじれた形のもつれ合いにもなりかねません。

Answer 適法なら公開継続、違法なら非公開、と至急判断する

ここでは、相手側からクレームが来て初めて問題が発覚したと想定します。この場合、早急に法的に違法(アウト)か適法(セーフ)かを判断してください。弁護士に判断を仰がずとも担当者レベルで違法だと判断できるなら、即非公開に。そうでなければ、社内でもクレーム元の主張と盗作の有無や酷似性について、素早く判断しましょう。

というのは、適法であれば非公開にする必要がありませんし、非公開が相手に誤ったメッセージになる可能性につながりかねません。ただしクレームが来るくらいですから、適法でも公開を続ければ、クレームは続きます。その際は経験豊富な弁護士のアドバイスを聞き入れながら、平和的解決を模索できればベター。自社側でもどれほど穏便に解決したいか、徹底的に主張を戦わせたいのかを確認します。最終的には事業判断(訴訟も辞さないのか)となります。

Check!
クレームが入れば無条件に非公開という対応は×。「何か言えば取り下げる」と相手に誤解させないこと。あくまで間違い(違法)に対して迅速に対応すべきです。

 
 
教えてくれたのは…桑野雄一郎1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/

遠藤義浩
※Web Designing 2017年12月号(2017年10月18日発売)掲載記事を転載

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