違法アップロードにおけるサーバー会社の責任とは?
身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。
この記事を書いたのは…
2020年1月7日、出版社の竹書房が、米国の通信事業会社クラウドフレア社に対する民事訴訟を提起したことをプレスリリースとして発表しました。クラウドフレア社が海賊版サイトにサーバを提供しているとして、アップロードされた著作物の削除と損害賠償を請求したとのことです。
もちろん、著作権を直接侵害しているのはあくまで海賊版サイトです。クラウドフレア社はサーバを提供しているだけで、そのこと自体は違法ではありません。ですから、本来は海賊版サイトの運営者を訴えるのが筋だといえます。
しかし、海賊版サイトの運営者を見つけて裁判をするのは簡単ではありませんし、海賊版サイトが次々と場所を変えてしまうとモグラたたき状態となってしまいます。竹書房が裁判の相手をクラウドフレア社としたのにはそんな理由もあるのでしょう。でも、勝算はあるのでしょうか。
参考になると思われるのが、違法にアップロードされた動画にリンクを貼る行為が著作権侵害になるかどうかが問題となった裁判例です。その事件では、「リンクを貼る時点でリンク先の動画が違法にアップロードされたものだとは明らかではなかったこと」「違法にアップロードされたものだと認識し得た時点で直ちにリンクを削除したこと」などを理由として、侵害にはならないと判断されました。
逆にいうと、最初から違法にアップロードされたものだと知りつつリンクを貼った場合や、リンクを貼った後であっても、違法アップロードだと知ったのに削除せず放置した場合は著作権侵害だと判断される可能性があるといえます。
リンクを貼る行為とサーバを提供する行為は異なりますが、どちらも海賊版サイトの運営と、運営を通じた著作権侵害を助長するものという点は同じです。ですから、海賊版サイトへサーバを提供する行為も、海賊版サイトだと知りながら提供した場合や、相手が海賊版サイトだと知ったのに適切な対応をせず放置した場合は著作権侵害だと判断される可能性がありそうです。
竹書房のプレスリリースでも、訴訟の理由の一つとして、「違法アップロードされた著作物をサーバ上から削除するよう求めたのに対応してもらえなかった」ことが挙げられています。
サイト運営者としては、「著作物の違法アップロードに対する予防装置を設ける」「違法にアップロードされた場合でも判明した時点で直ちに削除する」といった措置を講じることが必要です。サーバを提供する側も、そのような仕組みが相手のサイトに整っているかどうかを確認すること、違法にアップロードされた作品を確認したら削除に応じることなどの適切な対応が必要でしょう。
桑野雄一郎
※Web Designing 2020年4月号(2020年2月18日発売)掲載記事を転載