新聞記事の社内利用でどこに許可をもらうか
つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道が、中日新聞社(2月17日)に続き日本経済新聞社(5月19日)からも訴訟を提起されました。複製した新聞記事を社内の電子掲示板に掲載し、従業員に閲覧させていたことが著作権侵害にあたるというのが訴訟の理由です。
新聞に掲載されている記事や写真も著作物ですから、利用する際には著作権を侵害しないように注意することが必要です。個人が自分で使う目的でコピーしたり、スキャンしてPCに保存したりすることは「私的使用目的の複製」として許されていますが、企業内で社員が見る資料とする場合は「私的使用目的」にあたらないとされています。ですから、コピーやスキャンをすると複製権、コピーを配布すると譲渡権、回覧すると貸与権、デジタルデータを社内で共有すると公衆送信権の侵害になります。
企業内で新聞を利用する場合、新聞社に使用料を支払って複製の許可を取る必要があります。ただ、複数の新聞を利用したいとなると、それぞれの新聞社に許可をもらうのは大変です。そこで、(公社)日本複製権センターを利用する方法があります。主要な新聞については、1回につき20部以内という制限はありますが、所定の使用料を支払うことで、コピーをして社内に配ることが可能です。
また、複製権センターは、以前はコピーにしか対応していませんでしたが、2018年10月1日から、スキャンや撮影などによってデジタルデータ化してPCに取り込むことにも対応する「電磁的複製許諾契約」を行うようになりました。データは外部の第三者とはシェアできませんが、社内の共有サーバやクラウドにアップして、同時に30人以内であれば社内共有することが可能です。さらに、ファイル暗号化などの措置をとれば、30人以内にメール送信して共有することもできます。このように、普段の業務に必要な新聞記事をシェアする場合、複製権センターはとても便利です。
ただし、複製権センターでは、継続的・反復的に記事を複製して共有するクリッピングは許可していません。また、資料をアーカイブ化したり、検索データベースを構築したりするためにデジタライズすることも許可していません。このような場合は各新聞社に許可を得ることが必要です。
首都圏新都市鉄道が複製権センターと契約していたかどうかは不明ですが、報道によると「長年にわたり記事を画像データ化して社内掲示板に掲載していた」ということで、複製権センターからは許可がもらえない利用方法だったようです。
社内での新聞の取り扱いについては、その態様や用途、展開する人数に応じて、どこに許可をとるかよく注意をする必要があります。
桑野雄一郎
※Web Designing 2020年6月号(2020年4月17日発売)掲載記事を転載