フリー素材でも要注意!著作権フリー・ロイヤリティフリーの利用条件
身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。
(※この記事は2018年12月時点の法令等に基づいています。)
著者プロフィール
桑野 雄一郎さん
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2018年高樹町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など
最近、地方自治体が、フリー素材としてネット公開されているイラストを広報誌に使用したところ、著作権使用料を請求されてしまう事例が増えているとの報道がありました。読者の皆さんの中にもフリー素材を使用したことがある方が多いかもしれませんが、取り扱いに気をつけないとこれらの自治体のようなトラブルに発展する可能性があります。今回はフリー素材を利用する際の注意点を紹介します。
まず大前提として、フリー素材と称してWebサイトに上げられているコンテンツが、他のサイトから流用したものである場合があります。この場合、フリー素材と思って利用しても本来の権利者からクレームを受けることになります。もちろん、Webサイトに上げられている素材の本当の権利者を利用者がチェックすることはできません。しかし、少なくともフリー素材を提供しているサイトの開設・運営者が連絡先も含めて明示されているか、本当に存在している会社なのかを確認することは最低限必要です。
また、フリー素材には権利者が著作権を放棄している「著作権フリー」の場合と、著作権は放棄していないが一定の条件さえ満たせば無料で使って良いという「ロイヤリティフリー」の場合があることを理解しておく必要があります。
著作権フリーの場合、特に利用範囲の限定なく使用できますが、ロイヤリティフリーの場合は利用条件を確認することが必須です。実際に利用条件を確認すると、フリーで使用できるのは「個人利用かつ非営利目的の場合」だけで、企業や自治体による利用、商業目的での利用、広報目的での利用、有償頒布物での利用などは使用料が発生すると明記されていることもあります。また、Webサイトの中にはフリーと称して利用者を集め、目立たない利用条件に基づき後から使用料を請求することを目的としているものもあります。
そのため、利用規約を確認すること、そして後で利用規約が書き換えられた場合に備えて、使用時点での利用規約の写しを保管しておくことが必要です。
さらに、著作権フリー、ロイヤリティフリーのいずれの場合でも、コンテンツを改変して使用する際には、そのような改変が許可されているかどうかを確認することも必須です。コンテンツの改変は著作者人格権にも関係しますが、著作権フリーの素材であっても放棄しているのが著作権だけで著作者人格権は含まれていない場合があります。この場合はWebサイトに掲載されている状態のまま使うことしか許されません。
フリー素材はとても便利ですが、「無料で好きなだけ使ってもいい」といった油断をせず、よく注意をして利用するようにしましょう。
※Web Designing 2019年12月号掲載記事を転載