UI改善はユーザーの「自己解決」向上に貢献する
「データのミカタ」は、トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長/マクロミル総合研究所所長の萩原雅之さんによる、最新の調査や統計をとおして、少し先の未来を見通してみる本誌の人気連載です。
萩原 雅之さん
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。
日経リサーチ、リクルートリサーチを経て、1999年よりネット視聴率調査を手がけるネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。
インターネット普及以前から、消費者と企業とのダイレクトコミュニケーション接点(インターフェイス)を担ってきたのはコールセンターだ。電話に抵抗のある若い人たちが増えて、コール(電話)だけでなくメールやチャット、SNS公式アカウントへの問い合わせへの対応も不可欠なので、最近ではコンタクトセンターとも呼ぶ。こうした多種多様なチャネルに求められるのも、広い意味でのUIといえる。
コンタクトセンター業界では、Webサイトやスマホアプリによる「自己解決」がキーワードとなっている。消費者や顧客が自らWebサイトで適切なコンテンツを探し出し、課題や問題を解決することを目指す。自己解決が増えれば問い合わせ件数は減り、浮いたコストを別のマーケティング施策に利用することもできる。消費者と企業の双方にメリットは大きいのだが、現実にはなかなか難しい。
業界大手のトランスコスモスが、2022年末に公表した調査によれば、企業や商品に関して探し物や調べ事をする際に、半数以上のユーザーが企業の公式サイトに必要な情報やコンテンツを見つけられない、あるいは探しにくい、たどりつけないという経験をしている。自己解決できない場合、3人に2人は他社乗り換えを検討したことがあるという結果も出ている。逆に言えば、まだまだWebサイトのUI改善の余地はあるということだろう。
UIの出来は消費者の感情や評価に直結し、ダメなUIはストレスを生む。コンタクトセンターに蓄積されたユーザーの良い体験(UX)についての情報や知見は、WebサイトのUIにも示唆を与えてくれるものが多い。先入観にとらわれず、ユーザーが求める適切なコンテンツを探そう。そしてデータに基づいたデザインや導線の設計で、ユーザーの自己解決率の向上に貢献してほしい。
※本記事は『Web Designing』2023年2月号に掲載されたものです。