
Webエンジニアになろう! 第2回 Webエンジニアの働き方
Webエンジニアになりたいという方は、比較的「フリーランスになりたい」と思われる方が多いイメージがあります。
ここでは、そんなフリーランス的な働き方も含め、Webエンジニアの働き方の種類を紹介しましょう。
働き方の種類
正社員・正規社員
特定の企業に、フルタイム(所定労働時間の上限(1日8時間など))で契約期間の定めもない雇用契約を結ぶ働き方のこと。
「会社員になる」とか「就職する」といった場合は、この正社員か次の契約社員を指す場合が多いでしょう。
最も安定して仕事をすることができますが、勤務時間や休日などは自由になりにくく、1つの会社に縛られ続けるというデメリットはあります。
契約社員
一般的には、フルタイムでは働くものの、契約期間に限りがある働き方を指します。「有期契約社員」とか「準社員」などと呼ばれることもあります。
契約期間の満了時には、契約を更新する場合もあるため、更新され続ければ正社員と同じように働くこともできますが、安定性などは正社員の方が高い場合があります。
アルバイト・パート
一般的には1日の勤務時間がフルタイムよりも短い雇用契約です。「アルバイト」という言葉は法律的には定められておらず、いずれも「パートタイム」と呼ばれます。
アルバイト・パートだけで生活を成り立たせるのは難しいことが多く、複数のパートを掛け持ちしたり、契約社員・正社員になるまでの一時的な働き方として使われることが多いでしょう。
個人事業主
企業に雇用されず、個人で仕事を引き受けて直接報酬を受け取るという働き方です。個人事業主の開業届を役所に提出し、確定申告という手続きを経て所得税などの税金を支払うことで、個人事業主として活動することができます。
フリーランス
「フリーランス」という言葉は、特定の組織に属さずに仕事単位・作業単位で報酬を得るといった働き方の総称です。主に個人事業主の人や副業として活動している人、1人会社をしている人などが、さまざまなクライアントの仕事をこなしながら、比較的自由に生活することが多いです。
時間や場所に縛られず、好きなときに仕事をして、旅行や海外移住などをしながらも、日本のクライアントや海外のクライアントと仕事をしていくといった生活スタイルが可能になります。
そんな自由に憧れ、フリーランスを目指すWebエンジニアは少なくありません。とはいえ、収入や勤務時間が不安定になりがちで、仕事の量によっては寝る時間が取れないといったこともあります。
体力やクライアントとのコミュニケーション能力、税金の手続きなどのお金の管理など、正社員などにはない苦労もあり、ずっと続けられる人は一握りだったりします。
法人成り
個人事業主やフリーランスから、会社を設立して法人になることを「法人成り」といいます。個人事業主やフリーランスを経ずに会社を設立するケースもあります。
フリーランスでの仕事が軌道に乗り、年間の収入が大きくなってくると、税金の金額が跳ね上がっていきます(後述のコラム参照)。そこで、会社を設立して、会社の「売上」とし、自分はその会社からの給与(役員報酬)を受け取る形にすることで、納税額が低くなる場合があります。
これは、個人にかかる税金である「所得税」よりも、会社にかかる税金の「法人税」の方が、その税率が安くなる場合があるためです。だいたい、年間の売り上げが800万~1,000万以上になった場合、会社にした方が税金を安くできることが多くなります。
ただし、税金を安くするためだけに安易に法人化をすると、決算という手続きなどで手間やお金がかかるようになったり、売り上げが自分の自由なお金にならなくなったりなどで困ることも出てきます。じっくりとメリットやデメリットを調べ、また将来的に仕事をどのようにやっていきたいかなども考えて、法人化をする・しないを検討すると良いでしょう。

こぼれ話 個人事業主の老後問題
個人事業主での働き方を選ぶ場合、老後のこともしっかり考えなければなりません。通常、正社員や契約社員として会社で働いている場合、給与から「保険料」と「年金」が差し引かれて支払われます。
この時、基本的に各会社が加入しているのは「社会保険」と「厚生年金」というものです。これらは、雇用している会社と社員の「折半」で支払う必要があるため、自身の給与から引かれている金額とほぼ同額を、会社側が負担して支払っていることになります。
しかし、個人事業主の場合は加入できる保険や年金として、「国民健康保険」「国民年金」という制度にしか加入することができません。これは、毎月に支払う年金額は低いものの、老後に支払われる年金の金額が先の厚生年金と比べると少ない金額になるため、老後の年金だけでは生活ができない危険性があります。
そのため、別途個人年金に加入したり、共済や貯蓄などを使って備えておかないと、いざ働けなくなったときに生活を続けられなくなってしまいます。
個人事業主になると一時的な収入や、見かけの収入は会社員に比べると増えたように思ってしまうことがあります。しかし実は、会社員は社会保険の折半分や各種手当て、福利厚生など、目に見えない部分での金銭的な補助を多数受け取っていることがあります。「今」の収入を考えるだけでなく、生涯収支で考えなければなりません。
こぼれ話 いきなりの法人成りで後悔
筆者の場合、正社員を4年間やった後24才で独立をしました。しかしこの時、個人事業主を経ることなく、なぜか直接法人成りをしてしまいました。
自分自身、会社をやりたいという思いがあったことや、勢いなどもあったのですが、実際にはその後、結構後悔をすることになります。後述のコラム「Webエンジニアが知っておきたい税金・保険の話」で詳しく紹介しますが、法人にしてしまうとお金の面で不自由になったり、余計なお金がかなりかかったりして、仕事量や売上に比べて、自分の「手取り」がものすごく少なくなってしまいました。
もっと当時から、しっかり知識をつけてから独立すべきだったと後悔していますが、今はそんな会社を20年以上維持できていて、もう1つ会社を立ち上げていたりもするため、結果的には失敗はしていないかなと自分をごまかしています。
インボイス制度時代のフリーランスの生き方
本文でも紹介した通り、Webエンジニアを志す方の中にはフリーランス的な働き方を希望する方も少なくないでしょう。
しかし、個人事業主や法人のいずれも、これからの時代はなかなか大変になるかもしれません。それが「インボイス制度」と呼ばれる制度です。
誤解を恐れずに結論を言えば、このインボイス制度によってフリーランスの税負担がこれまでより増えました。正確には、これまで見逃されていた消費税の納税義務が発生するようになりました。詳しく紹介しましょう。
インボイス(適格請求書)
インボイス制度の「インボイス」とは、請求書の種類のことで、日本語では「適格請求書」といいます。
通常、クライアント(お客様)から仕事を引き受けた場合、その仕事が終わった後で「請求書」というものをクライアントに送ります。そこに記載された金額が、振り込まれて収入または売上になるというわけです。
インボイス制度は、この請求書に「適格請求書発行事業者」の登録番号が記載された請求書である「適格請求書」の発行を国が義務付けるという制度です。それぞれ紹介していきましょう。
消費税
消費税は、商品を購入するときなど商品やサービスの提供を受ける際に、その価格に上乗せして(2024年時点で10%または8%)支払う税金のことです。100円の商品を購入するときは、110円支払わなければなりません。
ここで支払った消費税は、受け取ったお店などの「事業者」が国に納税することになります。
この消費税は、フリーランスのエンジニアなどであっても例外ではありません。開発作業をした場合や、ソフトウェアを販売した場合なども、消費税を受け取っているため、これを納税する必要があります。納税の義務がある事業者を「課税事業者」といいます。
ただし、消費税にはこれまで「納税義務の免除」という制度がありました。「課税期間の基準期間における課税売上高が 1,000万円以下の事業者」とされているのですが、わかりやすくいえば「1年間の売上が 1,000万円以下の場合」と考えて良いでしょう。
個人事業主の場合は、1月1日から12月31日まで、法人の場合は自社で定めている「決算期間」が「基準期間」になります。
売上1,000万円というのは、なかなか大きい売上(ざっくりいえば、年収1,000万)なので、ここに届かないフリーランスの方はかなり多いです。つまり、Webエンジニアの多くは「免税事業者」なのです。
インボイス制度で免税から課税に
インボイス制度で困るのが、この「免税事業者」です。なぜなら、免税事業者はこれまで「消費税を受け取ってはいたが、納税はしていない」という立場、つまり受け取った消費税をそのまま「収入」にできていたという立場です。
しかし、インボイス制度が始まるとこれが使えなくなります。というのは、先の「適格請求書」を発行するための「登録番号」という番号が、免税事業者では取得できないためです。
この登録番号は、税務署に「登録申請書」を提出して発行してもらう必要があります。しかし、この申請は「課税事業者」でしか発行ができません。つまり、登録番号を得るためには、売上が 1,000万円に届いていない免税事業者であっても、課税事業者にならなければならず、消費税を納税しなければならないというわけです。
例えばこれまで、年間の売上が900万円あった場合、消費税を含めて990万円の請求をして、90万円分の消費税の納税を免れていました(実際の納税額は 90万円ではありませんが、ここでは計算をかなり単純にしています)。
しかし、適格請求書発行事業者になった場合は、この消費税に納税義務が発生するというわけです。かなり大きな負担額になるでしょう。
適格請求書発行事業者に登録しない場合
適格請求書発行事業者に登録をしてしまうと、消費税の納税義務が発生するなら、そもそも登録をせずに「適格請求書(インボイス)」ではなく、従来の請求書を発行すれば良いのではないかと考えるかもしれません。
これは、法律的には問題はありません。しかし、請求書を受け取るクライアント側が嫌がる可能性があります。というのは、インボイスではない請求書の場合、クライアント側に余計な税負担が発生するためです。
このあたりの話はややこしくなるため、興味があれば参考書籍や筆者の YouTube等を参照していただければと思いますが、いずれにしても登録をしない場合はクライアントから仕事の依頼を断られる可能性があります。
このように、インボイス制度はフリーランスのWebエンジニアにとっては、なかなか頭の痛い問題です。しっかりと税の知識を身につけて、正しく納税しながら、利益を確保できるようにしましょう。
参考動画:インボイス制度ってなに? フリーランサーがやるべきこと
※本記事は『Webエンジニアを育てる学校』の本文を一部引用・再編集しています。
『Webエンジニアを育てる学校』発売1周年記念キャンペーン中!
『Webエンジニアを育てる学校』は現在お得なキャンペーンを行っています! 詳細はこちら