【タイアップ】世界規模の大型サービス「Wix」の開発が速さと強さを持ち続けられる理由(後編)
Webビジネスに関わる方なら、ノーコードWeb制作ツールの先駆けである「Wix」の名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。Wixは誕生以来絶えず機能を拡充し続け、現在はデザイン・マーケティング・Webアプリ開発なども可能な「Webビジネスのための総合プラットフォーム」として、世界190カ国、2億人以上が利用するサービスに成長しています。
このような巨大なサービスであるにもかかわらず、Wix上では毎日のように何かしらのアップデートがリリースされています。従業員6,000人規模の大企業において、この速さで改善が可能な理由はどこにあるのでしょうか。同社の企業文化と開発体制を、Wix日本法人代表の積田英明さん、PR・コミュニケーションズディレクターの間島ゆかりさんに聞きました。(以下、敬称略)
従業員6,000人以上の大所帯でもスピーディな企業活動の理由は
「カンパニー&ギルド」と「The Wix Way」の意識
―― Wixがこの規模の組織、サービスでありながら、スタートアップのような開発速度を保ち続けられるのはなぜでしょうか?
積田 私も入社してから驚いた部分でしたが、いろいろと観察する中で私の中で出た答えは、「体制」と「マインド」の2つに理由があるのではないか、ということです。
一般的に、企業ではピラミッド型の組織で統括されることが多いですよね。しかし、Wixには軸になる組織体制が2つあります。一つは、「ストア」「ブッキング」「ブログ」など、サービスの開発単位ごとに小さな会社のように機能する「カンパニー」です。それぞれにサービスの開発責任を持つ意思決定者がいて、プロダクトやデザインなどの担当者がいるという、まさに一つの会社のように機能する組織です。
積田 もう一つは、「プロダクト」「デザイン」「マーケティング」など、同じ職種の人を一つのグループとする組織「ギルド」です。こちらにもギルドを統括する長がいて、メンバーが各カンパニーで行っている業務が共有されます。カンパニーだけでは事業が縦割りになりかねませんが、ギルドがあることで横の連携がシームレスになり、スピード感のある開発をしながら品質が担保される、という効果があります。
積田 グローバル規模でこの体制を機能させるために大切にしているのが、マインドの部分、コアバリューですね。私たちは「The Wix Way」と呼んでいます。
間島 入社すると全員が最初のオリエンテーションで、「The Wix Way」の話を聞きます。そして、これをきちんと体現できるように働くことを期待されます。「The Wix Way」をベースに組織が育ってきたからこそ、今のWixがあるのだと思います。
―― 「The Wix Way」は、具体的にどのように行動に結びついているのですか?
間島 私にとって非常に印象的だったのは、日本法人を設立した際に、本社の役員から「最初からそれほど大きな成功は期待していないから、とにかく半年は毎日いろいろなことを試し続けるように」と言われたことです。これまでの仕事でそんなふうに言われたことがなかったので、すごく新鮮でした。「失敗を許容する」とはこういうことなんだと理解しました。
積田 もし何かうまくいかないことがあっても、誰一人個人の責任を突き詰めるようなことはありません。むしろ、挑戦していないことの方が良くないという考え方です。
間島 「嫌な奴にならない」というのもそうですね、誰かの足を引っ張るとか失敗させようとか、そういう人はうちの会社には要りませんと経営陣が明言しているわけです。なので、それを体現しようと一人ひとりが「プロフェッショナルである」ことがスピード感にも繋がっていると思います。
―― 守りを優先しがちな日本の企業には耳の痛い話です。
積田 「ダイレクトに伝える」というのも、日本ではなかなか難しいところかもしれませんね。アメリカでも、ドラマなどでご存じのようにだいぶ周りくどい言い方をします。しかし、イスラエルの人はすごく直球で、お互いぶつけ合ってこそ良いものが生まれると考えて、攻撃ではなくきちんとディベートをする。それをよしとする文化なんです。本社でミーティングに出席すると、ずっと「ケンカかな?」と思うような激しいやりとりをしているのですが、会議室を出れば楽しく話すし一緒にご飯を食べたり飲みに行ったりするんですよ。
―― タフな人でないと、なかなかついていけなさそうです。
積田 そうなんです。日本では、いきなりダイレクトに言われると傷ついてしまう人もいるかもしれませんね。私も最初は驚きましたが、今ではみんな表裏がないのでコミュニケーションしやすいと思っています。
―― 組織が大きくなっても停滞せず、クリエイティブで高速な進化を続けられるのは、こういった背景があるからなんですね。人間力、というべきでしょうか。
積田 そうですね、採用面談ではその点をとても重視しています。スキルはアップデートできるものですが、価値観については、大人になるほど後から合わせるのは難しいものです。その点は面談で注意深く見極めることが、お互いにとっての良い結果になると考えています。
ただ翻訳するだけではない、
Wixが調査とサポートを重視する理由
―― Wixは海外のサービスという印象がありましたが、現在は全て日本語で問題なく使用できるようになっていますね。
積田 はい。2019年に日本法人が設立されてから、より一層ボトムアップでローカライズを進めています。単にUIを日本語にするだけではないんですね。トランスレーションとローカライゼーションは異なります。同じ機能でも、名前の付け方ひとつでユーザーの反応が大きく変わってきます。
―― 確かに、海外のサービスやアプリで、翻訳はされていても機能として使いにくい印象を受けたことがあります。
積田 私たちはヒアリングや調査を重ねてプロダクトを改善し続けています。デザイナーやUI/UXの専門家が、実際のユーザーさんがWixを使用している様子を観察して、機能をどう使っているのか、どんな操作で困っているかなどを見つけていく「シャドーイング」という調査をしたり、ヒアリングでは本社の役員クラスが来日して「この人に話を聞きたい」と個人ユーザーの方を指名して個別にお話を聞くこともあります。もちろん私たちも行っています。
間島 「カスタマーケア」という、いわゆるお客様サポート部門では、どんな問い合わせが届いているのかチケット集計やナレッジベースの投票システムで可視化・数値化して、こちらも定量的なデータとして活用しています。
―― 日本語サポートもあるんですね。
間島 はい。カスタマーケアはお客様の疑問に応えることは当然ですが、ビジョンにお客様のビジネスの成長を掲げている以上、単なるサポートを超えて、お客様が困っていることを理解した上で積極的に提案することを指針としています。Wixにおいては、カスタマーケアが一番の顧客接点であり、お客様をファンにさせる、継続的に利用し続けてもらうきっかけになる部門なのです。
―― 今後はどのような展開を目指していらっしゃいますか?
積田 Wixはグローバルで大きくシェアを伸ばしており、CMSを使った新規Webサイトのじつに約4分の1がWixを利用しているという調査もあります。日本国内でも、前回ご紹介したように事業会社さんにご利用いただいたり、制作会社さんがWebサイトの制作案件にWixを活用される事例が増えてきています。
Webサイトは公開して終わりではなく、中長期で運用しビジネス成果を価値とするツールです。その価値を生み出せる制作会社の方にとって、Wixは最適なプラットフォームになっていきたいと考えています。私たちもお客様のビジネスの成長をビジョンに掲げています。共にお客様の、そして日本の未来のビジネスの成長に貢献していきましょう。
―― ありがとうございました。
Webサイト制作プラットフォーム「Wix」 https://ja.wix.com/
「Wix」関連記事(前編)はこちら:https://tsunaweb.book.mynavi.jp/tsunaweb/tsuna/detail/id=4061
企画協力:Wix.com Japan株式会社
Text:笠井美史乃 Photo:五味茂雄