
効果を感じているインターネット広告はどれ?
TOPIC 1 今やインターネット広告にSNSは欠かせない
企業がインターネット広告にかける費用は年々増加している。電通が発表した「2015年(平成27年)日本の広告費」(01)によれば、2015年における国内全体のインターネット広告費は1兆1,594億円に達しており、これは国内の広告費全体の18.8%にあたる。

出典:「2015年(平成27年)日本の広告費」電通/2016年2月発表
企業がインターネット広告を出稿する上では、当然ながらその費用対効果を見極めて、より効果の上がる広告費の使い道を考えていく必要がある。従来からあるディスプレイ広告や検索連動型広告以外にもさまざまなインターネット広告があるが、実際に企業はどれほどの広告費を投じているのだろうか。
本誌では、今年の9月中旬~下旬にかけてWeb上でインターネット広告に対するアンケートを実施し、実際に利用している中小企業のリアルな手応えを聞いた。本誌のFacebookページを中心に告知したため、Webへの関心が比較的高い回答者が多いとは思うが、その結果はインターネット広告の活用を考える上で一定の参考になるだろう。
そのアンケートでインターネット広告の種類について尋ねてみたところ(02)、SNS広告を利用しているという回答が約77%を占めた。もはやインターネット広告への取り組みにSNSは欠かせないという状況が窺える。実際、D2Cの調査でもSNS広告は伸びており、スマートフォン広告におけるSNS広告費は、2014年から2015年にかけて倍増している(03)。

本誌が実施したアンケート(※本誌Facebookページなどで告知し、Web上で回答。実施期間:9月14日~30日 回答社数:48社)より。現在行なっているインターネット広告の種類を尋ね、何らかの出稿を行なっているという回答のみを集計した

出典:「インターネット広告市場規模推計調査」D2C/2016年7月発表。スマートフォン向け広告での広告費の内訳
TOPIC 2 Facebook広告出稿が圧倒的多数
本誌が行なったアンケートでは、代表的なSNSごとに広告の手応えを尋ねた(04)。次ページでその内訳を掲載するが、ここではまず各プラットフォームの広告利用状況を確認しておこう。
まず、もっとも多くの広告利用があったのがFacebook。回答者の約93%がFacebookへの広告出稿の経験がある。次に多いのがTwitterで、約81%が広告出稿を経験している。本誌のアンケートということでSNS広告への取り組みが積極的という側面はあるだろうが、この2つのプラットフォームがSNS広告の中でとりわけ利用者が多いというのは間違いないだろう。
また、Instagramへの広告出稿も、実に69%に達している。国内では、2015年10月からInstagram広告が全面解禁となり(一部企業向けにはそれ以前から提供されていた)まだ広告解禁から日が浅いにも関わらず高い利用率となった。

本誌が実施したアンケートより
海外のデータでは、広告キャンペーンにおいてInstagramを利用したい企業の数がTwitterを抜いたという発表があり(05)、また、国内においては、Instagram広告スタート直後に10%のユーザーが広告から公式サイトにアクセスしたという調査結果もある(コミュニティサービス「Skets」の調査による)。こうした動きやユーザー数の増加、さらにFacebookアカウントで出稿できるという背景もあり、早期に取り組んだ企業も多かったのではないだろうか。

出典:「Twitter Continues to Die As Agencies Shift Money To Instagram」米ストラータ/2016年7月発表

Facebook:2016年4月Facebookイベントでの発表 Twitter:2016年2月公表 Instagram:2016年5月発表のニールセン調査結果より
TOPIC 3 プラットフォームによって手応えはまちまち
効果の高いインターネット広告は、果たしてどの広告プラットフォームか。この答えを大枠で語るのは極めて困難だ。それぞれのプラットフォームには異なったユーザー特性があり、出稿する企業の業種や商品ジャンルによって相性の良し悪しがある。また、ブランディングなのかオンラインストアの売り上げなのかといった広告の目的によっても変わってくる。ただし、「各プラットフォームのユーザーが広告をどう感じるか」という調査は、インターネット広告の効果を俯瞰する上で一つの指標になりうる。
ジャストシステムは、各SNSのユーザーが広告に対してどれくらいの抵抗感を抱くかをリサーチし、その調査結果を発表した(07)。

それによれば、広告への抵抗感がもっとも低いSNSはFacebookで、自分に合った広告なら配信されてもいいという肯定的な意見も多い。次いでInstagramも肯定的に捉えている人が多く、それらに比べTwitterやLINEは肯定的な回答が少ない傾向にあった。
なお、本誌で実施したアンケートでは、代表的な広告プラットフォームに対する担当者の手応えを尋ねたが(08)、やはりFacebookに手応えを感じている回答者は多かった。インターネット広告を俯瞰的に見れば、やはりユーザーの抵抗感と効果とは、一定の相関関係があると見ていいだろう。ただし、本誌のアンケートでは、Instagram広告に効果を感じている回答者はそれほど多くなかった。写真を中心としたSNSという特性を考えると、やはり広告ビジュアルにも高いクオリティが求められる。Instagramは、その点で制作にかける費用的・人的・時間的コストが要求される割に、直接的な成果が見えにくいのかもしれない。

本誌アンケートでの調査結果。各広告プラットフォームにどれほど効果を感じているかを5段階で評価してもらった。円グラフ中央の数値は回答の平均値
TOPIC 4 SNS広告は少ない投資でも効果を感じやすい?
続いて、インターネット広告費と広告の効果の関係について考えてみよう。
TOPIC 1で紹介したとおり、今やインターネット広告費は広告市場全体の18.8%に達しているが、これはあくまで広告市場全体の話に過ぎない。実際の企業がインターネット広告にどれくらいの費用を投じているかは、その企業によってまちまちだ。本誌で行なったアンケートを見ると、インターネット広告費が広告費全体の5%以下の企業から30%を超える企業までが幅広く分布しているのがわかる(09)。

本誌が実施したアンケートより
取り扱う商品やサービスとインターネットとの相性にも左右されるため一概には言えないが、広告費全体に対するインターネット広告費にここまでばらつきがあるのは、活用スキルの問題もあるだろう。アンケートでは「インターネット広告を使いこなせているかどうか」も尋ねたが(10)、「使いこなせていないと思う」と答えた回答者の多くは、インターネット広告費の割合が少ない傾向にあった。

本誌が実施したアンケートより
なお、アンケートを分析していくと、インターネット広告費の割合の大小によって手応えの傾向が変わってくることがわかる(11)。GoogleやYahoo! Japanなどのリスティング・ディスプレイ広告プラットフォームに関しては、費用の大小で評価はそれほど変わらない。一方で、FacebookやTwitterなどのSNS広告は、インターネット広告費用の割合が少ない企業のほうがより効果を感じているという傾向が見える。ビッグワードに広告費用を投じるリスティング広告に対して、地域や趣味といったユーザー属性に応じてターゲットを絞り込めるSNS広告は、少ない費用でも効果を実感しやすいのかもしれない。

本誌が実施したアンケートより。インターネット広告費が全体の10%以下のグループと21%以上のグループに分け、各広告プラットフォームの平均評価を算出した