
第21回「詩の着せ替え」

文脈から逃れたい。文脈は理由を生んで、そうして結果を急かしていく。なんとなくは許されない中で、確実に死んでいくのが詩だということ。(こんにちは、最果タヒです。詩を詩句ハックしながらハックするタイプの詩人をなんとなくやっています。)なにもかも説明できるなら、きっと人がロボットに変わってもきっと何一つ変わらないでしょう。
なにもかもに説明が必要で、そしてそれが可能だというならば、感情そのものの存在すら危うくなる。食べ物の好き嫌いだって理屈じゃないから却下すべきだし、そうやって、切り捨てなきゃいけない感情を拾い集める詩が書きたい。
そして文脈を引き剥がしていたいから、今回、着せ替えのできる詩を作りました。一箇所だけがめくれる本。選んだ1行だけが次のページに移り、詩全体の意味も変わる。
文脈の向こう側に何が横たわっているのだろう。詩の文脈を否定するように、ページをめくるその瞬間、それに、きっと触れられると思っている。ぜひ、あなたの指先で、文脈を否定してみてください。
- Text:最果タヒ
- 詩人/小説家。第44回現代詩手帖賞、第13回中原中也賞受賞。詩集に『グッドモーニング』(思潮社)、『空が分裂する』(講談社)、『死んでしまう系のぼくらに』(リトルモア)。小説に『星か獣になるなる季節』(筑摩書房)、『かわいいだけじゃない私たちの、かわいいだけの平凡。』(講談社)。小説『渦森今日子は宇宙に期待しない。』(新潮文庫nex)が2/27発売です。http://tahi.jp/