斬新なポイント制度でユーザーを巻き込むタイムズカープラスの戦略●特集「リピーター&ファンを生む新法則」

 

 

 

個人会員の大半はアクティブなユーザー

若者を中心に車離れが進むと言われるなか、ここ数年新しい車との付き合い方として、車を共同使用するカーシェアリングが注目を集めている。公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の調査によると、2015年3月時点でカーシェアリングのステーション数は約9,451ヵ所、車両台数は約1万6,418台、会員数も約68万人と、いずれも前年に比べて25%以上に増え、認知度も上がってきた。

 

そんななか、2009年頃から本格参入し急成長を遂げているのが、時間貸駐車場でお馴染みのタイムズ24(株)が運営するカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」だ。

「カーシェアリング事業には、駐車場、車、会員の3つの要素が必要です。私たちはもともと時間貸駐車場を展開していたので、駐車場と会員は持っていました。そこで市場はほとんどありませんでしたが、レンタカー会社をグループ化し、調達や整備・管理ノウハウを取り込んで、カーシェアリングサービスを開始しました」

こう説明するのは、タイムズ24(株)タイムズカープラス事業部の亀田真隆氏。2015年10月時点で、タイムズカープラスの車両数は約1万3,149台、ステーションは7,311ヵ所。会員数も約55万人を獲得。市場を開拓し、牽引する存在となっている。

タイムズカープラスのステーション件数、車両台数、会員数の推移を示したグラフ。どれも前年を大幅に上回る成長を続けている。将来的にはすべての駅に最低1ステーションを実現したいという

 

タイムズカープラスのユーザーは月に1度以上利用する、いわばアクティブユーザーが多いという。月額基本料金が固定で1,030円かかるため、まったく使わないユーザーは自然と退会していくからだ。

 

 

「月に1~2回だけ利用する方から、毎日買い物や送迎に使っている方がいたりと、利用頻度に差がありますが、長期間にわたって使わないユーザーは少ないのが現状です」

また、カーシェアリングで一番大事なのは「ステーション数を増やすこと」とも亀田氏は言う。そのため、ステーションの増加には一番力を入れてきたが、同サービスにはユーザーが使いたくなるための施策がいくつも用意されている。

タイムズカープラスのWebサイト。サービス案内からステーション検索と予約、車両の紹介、キャンペーンなど、多くの情報が見やすくまとめられている

 

ハード面とソフト面で利用を促進

まずはサービスの柱となる車、いわばハード面から見ていこう。タイムズカープラスでは多くの車種が用意されており、ベーシッククラスだけで22車種。BMWやアウディなど、高級車を中心としたプレミアムクラスでも10車種を用意している。さらに一定のエリアでさまざまな車種・サイズを用意するようにしているという。

豊富な車種ラインアップ 軽自動車から外車まで、幅広いラインアップは同社の強み。軽自動車からワゴン、高級車までシーンや好みにあわせて選ぶことができる。TCPプログラムのステージが上がると、すべて同一料金で利用できる

 

「お客様にとって、近くにステーションがあることと、リーズナブルな料金であることが一番大事なことですが、同時に車種を豊富に用意することで、靴や服のように選ぶ楽しみも提供しています」

 

そしてユーザーの利用を促進するためのいわばソフト面、車に乗るきっかけをつくる施策にも積極的だ。

例えば「ドライブチェックイン」は、ユーザーが大手ショッピング施設やテーマパークなど、対象施設の駐車場に駐車し、一定時間が経つとカーシェアで利用できる電子クーポンが付与される仕組み。これはすべての車にさまざまなデータを収集する、タイムズ独自のシステムを搭載することで実現している。

ドライブチェックイン ショッピングモールなどと提携し、利用のきっかけをつくるドライブチェックイン。数千人の集客につながっているという

 

さらにタイムズカープラスが2014年4月から取り入れたユニークなシステムが「TCPプログラム」と呼ばれるポイントプログラム。これはユーザーが繰り返し利用したくなる仕組みであると同時に、カーシェアリング事業のスムーズな運営にも一役買っている。

「カーシェアリング事業は基本的に24時間無人でサービスを行うことが基本です。利用者にはしっかりと清掃して車を返却して下さる方もいれば、ゴミを残していってしまうお客様もいます。そこで協力していただいたお客様には何かしらインセンティブをお渡ししたいという目的で始めました」

上記のほかにも長期継続利用や洗車などでもポイントが獲得できる。PPとはタイムズカープラス専用のポイント「プラスポイント」を示している

 

TCPプログラムのユニークな点は、ユーザーの行動によってプラスだけではなくマイナスされることもある点だ。カーシェアリングを利用する際に付与される「プラスポイント(PP)」は、前利用者が車をキレイに使っていたかどうかを報告したり、急加速や急発進のないエコドライブ、給油など“いいこと”をするとポイントが貯まる仕組みになっている。一方で、無断延長や駐車違反といったマナー違反を行うと、ポイントがマイナスになる賞罰システムを導入している。このシステムはユーザーからも好評で、なかにはポイントを貯めるために給油だけして車を返却するユーザーまでいるという。

 

また、タイムズカープラスではメールもユーザーとのコミュニケーション手段に活用している。予約時や返却時などにメールを送信しているが、メールのクリック率(CTR)は高い時で20%以上にものぼるという。これはユーザーにとって大切な内容が記されているのがその理由。タイムズのメールは「必ずチェックする」という習慣が生まれるため、キャンペーンやサービスなどにも活用しやすいという。そのほか、予約が埋まった場合に、少しの時間をずらすことで別のユーザーが借りられると判断された場合には「予約移動のお願い」メールを送ることもあり、受け容れた場合には電子クーポンが贈られるシステムもある。

TCPプログラムの仕組み。ポイントが貯まることでステージが上昇し、プレミアムクラスが同料金で利用できるなど、さまざまなメリットが用意されている

 

利用方法の提案で認知・利用を促進

また、新規ユーザー獲得のため、カーシェアリングならではの利用を提案するための工夫も行っている。

その一つがカーシェアの利用シチュエーションをユーザーから募る「投稿コンテスト」だ。レンタカーでは長時間での利用を前提とする場合が多いが、カーシェアならではのちょっとした買い物や送迎のための短時間利用など、さまざまな使い方をユーザーに知ってもらい、新規ユーザーの獲得と利用を促進することが狙いだ。

ユーザー投稿による利用シーンの紹介 Webサイト内にユーザーからの投稿写真をまとめたページを用意。カーシェリングならではの利用シーンを知ることができる

 

「私たちのカーシェアリングは、1枚の会員カードがあれば日本中にある1万台以上の車が使えるというサービスだと考えています。カーシェアリングは認知もまだまだですから、まずは当たり前のように使っていただける状況をつくる。そうすれば自然とエンゲージメントも構築できるので、さまざまな手法で、お客様とのコミュニケーションを増やしていきたいと思っています」

ハード面とソフト面、両方のアプローチで新規ユーザーの獲得と既存ユーザーの利用促進を促すタイムズカープラス。今後も急成長を続けていきそうだ。

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