アクセスログ解析を使った現状把握で見るべき項目

集客でユーザーの「動機」を掴む

アクセスログを用いてサイトの「現状把握」を行うことで、Webサイトの問題を知ることができる。アクセスログはユーザーのWebサイト閲覧のフローに従って「集客」「回遊」「コンバージョン(CV)」「リピート」に仕分けると、ユーザーの気持ちをイメージしやすい。

まず集客としては、分析ツールで得られるデータのうち、ユーザーが訪問した「タイミング」と「参照元」の項目に着目する。訪問の状況を把握することで、ユーザーがどのような目的で訪問したのか理解できるからだ。

「タイミング」は、ユーザーのサイト訪問を日別や曜日別、時間別にグラフ化して観察する。曜日・時間帯・デバイス別に訪問数の推移を見ると、ユーザーのアクセス傾向がよく分かる。たとえば01の平日の時間帯別・デバイス別のアクセス数グラフでは、「ユーザーは身近なデバイスから自由に(気ままに)サイトを見ている」ことが推測できる。

 

01 例として、一般社会人向けWebサイトにおける、デバイス別、時間帯別の訪問数の比較グラフを見てみよう。早朝~8時はスマホ、9時~11時はPC、12時はスマホ、13時~17時はPC、18時以降はスマホからのアクセスが多い。スマホは通勤時間や余暇時間に、PCは勤務時間中にアクセスしている様子がうかがえる。このことから、「ユーザーは身近なデバイスから自由に(気ままに)サイトを見ている」と推測できる

 

「参照元」では、以前はオーガニック検索※1のキーワード別にサイトの閲覧状況(直帰率、PV/訪問、CVR)を見るのが一般的だったが、最近は検索エンジンのSSL化※2により約70~80%のキーワードを把握できなくなってしまった。しかしGoogle Search Console※3を使えば、確認することができる。キーワード上位100件を取り出してキーワードカテゴリーをいくつか立て、そのカテゴリーに基づいて分類・再集計しグラフ化してみると、ユーザーがWebサイトへ来訪してくる動機の傾向が見えてくるだろう。

 

回遊でユーザーの「満足」を把握

サイトの回遊状況については、解析ツールの「閲覧開始ページ別直帰率」と「人気コンテンツ」に着目する。ユーザーは何かしらの目的や期待をもってサイトに訪問するが、閲覧開始ページで直帰したのであれば、そのページが期待にマッチしていなかった可能性がある。サイトを自由に回遊した結果、ユーザーの閲覧が特定のコンテンツに集中したのであれば、それはユーザーにとって必要性が高いと考えられる。

「閲覧開始ページ別直帰率」では、閲覧開始ページを閲覧開始数で降順に並べてみる。数が多いにもかかわらず直帰率が高いページは、問題のある可能性が高い(02)。

02 閲覧開始ページを、閲覧開始数の降順に並べたデータ。閲覧開始数が多いページの方が、直帰率改善をする効果は高い。改善を要する直帰率の目安は60%と考えるとよい。このデータでは、ページCとページDの改善を行うことが効果的だといえる

 

問題ページを基点に参照元や検索キーワードを調べ、訪問前のユーザーニーズを推測しつつページを観察し、「ニーズはマッチしていたか」「次ページへの誘導は適切だったのか」を問いてページの問題を考察する。ヒートマップを併用するとページのどの部分が閲覧されていたのかを把握できるので、状況がより分かりやすくなる。

「人気コンテンツ」の把握は、全訪問数を100%としてページ別訪問数をコンテンツマップに整理すると、ページごとにどの程度の訪問数を得ているのか可視化できる。これをコンバージョンした(購入などのサイトの目的を果たした)ユーザーか否かでセグメントを作成し比較すると、コンバージョンしたユーザーにとってのみ相対的に閲覧の多いコンテンツが浮上する(03)。ここから、「どのようなユーザーが、これらのコンテンツに対してなぜ着目するのか?」というターゲットとコンテキストを掘り下げ、コンバージョンとコンテンツの関係性を推測していく。

03 サイトの総訪問数を100%とし、ページ別訪問数の割合を算出したコンテンツマップから、各コンテンツにどの程度の訪問割合があったのかをプロットする。ここでは、サイトに対してコンバージョンしなかったユーザーとコンバージョンしたユーザーでセグメントし、比較を行っている。そうすると、赤の点線で囲った部分がコンバージョンしたユーザーの方のみ著しくアクセスが多いことがわかる。これらのコンテンツは、コンバージョンを起こす引き金となっているのか、いくつかのセグメント(新規/リピート、デバイス別、男女別など)でも比較し確認していく

 

CVの鍵は「ユーザビリティ」にあり

一般的にコンバージョンに設定される購入や申し込みにおいて、ショッピングカートやフォームのプロセスで離脱が起きていることは多い。購入、資料請求、申込みなどを行うCTAボタン※4

をクリックする行為は、ユーザーの心理変容における分岐点と考えられる。たとえるなら、コンビニで自分が買う予定の商品をカゴに入れ、レジ前に辿り着いた状態だ。あとは購入完了までスムーズに進んでもらいたいのだが、問題があるとそうならない。理由としては、フォームのユーザビリティがよく指摘される。ユーザビリティはユーザーによって評価が分かれやすいため、制作者も気づかない落とし穴がある場合が多く、客観的に「フォームの離脱」を把握しておくことはとても重要だ。

フォームの離脱は、フォームのステップごとと、フォームの項目ごとで把握する。ステップごとでは、(通常のフォームであれば)入力・確認・完了のページ別訪問数を順番に並べてみれば良い。入力のページ別訪問数を100%とすれば、確認・完了でどの程度の離脱が起きているのか分かりやすい。フォームの項目ごとでは、クリックイベントを活用して項目順にクリック数を並べてみる(04)。

04 コンバージョンまでにフォームの入力箇所が5個あるページでの、訪問数20件分のデータ例。クリックイベントを利用して、入力フィールドをクリックした回数をカウントした。ここでは項目3から4にかけて50%が離脱していて、項目3で入力のしづらさがあったか、項目4で内容に問題があってクリックされなかったと考えられる。ページを目視でチェックして、問題が分からなければ、ユーザーテストを行い原因を明確にしていく

 

最初の項目のクリック数を100%とすれば、その後の項目での離脱状況が見えてくる。また、ユーザーの閲覧環境や性別・年代によっても離脱状況に差が生じるため、属性ごとにセグメントを設けて観察するとなおよい。「どのようなユーザーによって、どの部分で離脱が高いのか」を明らかにすることによって、問題が具体的に分かってくるからだ。

 

リピートで「顧客維持」に力を入れる

解析ツールで初訪問か再訪かをチェックするリピートでは、CRM※5の実践に向けて「顧客の定着状況」や「顧客グループ別の訪問閲覧状況」の把握が主眼となる。一般的に新規顧客獲得コストは顧客維持コストに比べて5倍高いと言われ、顧客維持に注力することは収益上とても重要である。その改善のためには、Googleアナリティクスで実践できる、「コホート分析」(05)と「RFM分析」(06)を試してもらいたい。

 

 

前者は、ある属性で分けたユーザーグループごとの行動の変化を、後者は購入者を最新購買日(Recency)、累計購買回数(Frequency)、累計購買金額(Monetary)の3つの観点でグルーピングし分析するものだ。

 

いまや企業では、ほとんどのWebサイトにアクセス解析ツールが導入されていることだろう。これらは、データを集計すればすぐに取り組めるので、ぜひ実践してほしい。

 

※1 リスティング広告などを除いた、検索エンジンの検索結果のこと。自然検索ともいう。サイトにどのようなキーワードでたどり着いたのかを知る。

※2 Secure Socket Layer。インターネット上の情報を暗号化して送受信する。

>※3 Google検索結果でのサイトのパフォーマンスを監視、管理できるGoogleの無料サービス。以前は「Googleウェブマスターツール」と呼ばれていたが、2015年5月に改名され機能とともにバージョンアップした。 https://www.google.com/webmasters/

※4 Call To Actionの略。

※5 Customer Relationship Managementの略。顧客に応じたきめ細かい対応を行うことで、企業と顧客の長期的かつ良好な関係を形成する手法、戦略。

 

Text:中川雅史
(株)アンティー・ファクトリー マーケティングリサーチャー&データアナリスト。前職の市場調査会社で身につけた定量・定性調査の経験をベースに、Webサイトのユーザー調査やデータ分析に携わる。また、一般社団法人 日本Web協会(JWA・旧JWSDA)Webアナリスト委員会委員長として、Webアナリティクスの手法や技術の発展に努めている。書籍『サイトの改善と目標達成のための Web分析の教科書』(弊社刊)を監修。 http://www.jwa-org.jp/
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