《連載:Webクリエイターの“偏愛”仕事道具 Vol.1》ワヴデザイン・松本龍彦|第2話 オンとオフを分けないワークチェア

仕事で使う道具には、その人の思考や美意識、そして働き方が自然と表れます。本企画では、日々の仕事を支える「道具」を入り口に、Webクリエイターのスタイルをひもといていきます。

初回に登場するのは、ワヴデザインCEOでクリエイティブディレクターの松本龍彦さん。選び抜かれた道具の背景から、いまの仕事観に迫ります。

目次

プロフィール

松本 龍彦 さん
Wab Design INC. CEO / Creative Director

ショップスタッフ、デザインプロダクション、アパレルのグラフィックデザイナーを経て2003年に独立。2006年ワヴデザイン株式会社を設立。衣食住の分野に豊富な知識と実績をもつ。ストラテジー、デジタル・アナログを問わないクリエイティブ、ビジネスとのバランスの取れたプランニングを得意とする。主な受賞にグッドデザイン賞など。
https://wab.cc

松本さんの仕事道具②|カール・ハンセン&サン Yチェア

カール・ハンセン&サン Yチェア オーク ソープ仕上げ
発売:カール・ハンセン&サン
価格:154,000円(編集部調べ)
URL:https://www.d-department.com/item/2010000200348.html

オンとオフを分けない、自宅での仕事椅子

リモートワークが生活の一部になったとき、松本さんがまず悩んだのが「椅子」の選択でした。オフィスでは高機能なワーキングチェアを使っているものの、それをそのまま自宅のリビングに持ち込むことには、どこか違和感があったといいます。

「いかにも事務用という佇まいの椅子が家にあると、週末のくつろぎの時間まで仕事の気配が入り込んでしまう気がしたんです」(松本)

そこで選んだのが、ダイニングチェアとしても知られるYチェアでした。普遍的な美しさを備えながら、数時間の作業でも疲れにくい。そのバランスが決め手だったといいます。

「仕事モードのときもしっくりきますし、読書をするときにも自然に馴染む。生活と仕事の境界線を、無理なくつないでくれる感覚があります」(松本)

オンとオフをきっちり分けるのではなく、ゆるやかに連続させる。その考え方は、椅子選びにも表れています。

「高い」を「資産価値」と「コスパ」で捉え直す

名作家具と聞くと、どうしても贅沢品という印象を持たれがちです。しかし松本さんは、物選びにおいて「頑張れば誰でも手が届くものかどうか」を一つの基準にしているといいます。

「長年つくられ続けているプロダクトは、中古市場でも価値が落ちにくい。もし自分に合わなければ、必要な人に譲ることもできます」(松本)

実際、長く売れ続けているものを扱うショップを参考にしたり、中古市場を活用したりすることも多いそうです。

「一時の流行で終わる安価なものを買い替えるより、何十年という単位で価値が証明されているものを選ぶ。そのほうが、結果的にコストパフォーマンスは高いと思っています」(松本)

価格だけでなく、時間軸で価値を捉える。その視点も、この椅子を使い続ける理由の一つです。

普遍的なデザインに宿る、使いやすさの証明

50年以上にわたって世界中で使われ続けている理由は、その使い勝手の良さにあります。特別な存在として飾るのではなく、日々の生活の中で使い続けること。

「実際に座ってみてまず感じるのが、ペーパーコードの座面がもたらす心地よさです。適度な反発力があり、長時間座っていても疲れにくい。背もたれのカーブも絶妙で、集中して仕事をするときにも、少し力を抜きたいときにもフィットします。

いわゆる“用の美”を体現している道具だと思います。こうしたものに囲まれていると、自分自身の仕事のリズムも自然と整っていく気がしますね」(松本)

《Vol.3》に続く

取材・文:小平淳一

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