《文章力を上げる新・鉄板ルール #5》「みんなと同じ」が安心材料に? 「社会的証明」を巧みに活用し、人を動かす文章を書く方法

現代は、すべての文章作成を効率重視でAI任せにもできる時代。だからこそ、読み手との関係性を踏まえた“ならでは”の文章を書ける人の価値は増す一方です。本連載では、株式会社ワン・パブリッシングの取締役社長・松井謙介氏が、「売上につながる文章術」を徹底解説。今回は、「社会的証明」を活用した文章テクニックを伝授します。

目次

画一的ラベルで、人間性を単純化するのはなぜ?

平成を代表する名曲「世界に一つだけの花」のキーメッセージは、ずばり「ナンバーワンよりオンリーワン」でしょう。また金子みすゞさんは、自身の詩の中で「みんなちがって、みんないい」、そう書きました。

まあ、いずれもおっしゃりたいことはわかります。みんな性格も容姿も考え方も、そして生まれ育った環境もまるで違うわけですから、そんな人を無理やり「同じものとしてカテゴライズ」すること自体無理があるってものです。

おそらく、この考え方に異論を唱える方はそう多くないはず。「俺をカタにハメるんじゃねぇ!」、そういう叫びは、いつの時代も定番ワードとして存在しています。

それなのに、一方で人間は「MBTI(16タイプ性格診断)」にハマり、「自分は『主人公』だ」だとか「私は『討論者タイプ』なの」だとか、とかく自身をある一定の枠に入れたがる動物でもあります。このMBTIは、Z世代を中心に爆発的に流行中。SNSのプロフィール欄に「ENFP」「ISTJ」といった4文字のアルファベットを載せるのが当たり前になっているようです。若者が自分を、進んでカテゴライズするなんて不思議ですよね。

写真:Shutterstock.com/Maks_lab

「個性を重んじるZ世代」と「型にはめるステレオタイプな性格診断」の間には、深くて大きな川が流れているように感じますが、その辺はどうやら「コミュニケーションコスト」で考えると答えは見えそうです。

Z世代はSNSを通じ、膨大な人間関係にさらされています。一人ひとりに深い自己開示をするのは時間も精神力も消耗するため、「MBTIの4文字」というラベルを貼ることで、自分の取扱説明書を瞬時に提示しようとしているのでしょう。これは「型にはめられたい」のではなく、「効率よく自分を理解してほしい」というタイパ(タイムパフォーマンス)の追求といえると思います。

これ、意外に古くからある「血液型診断」「星座占い」と根本は同じもののように感じます。「世界に一つだけの花」と言いながら、「私、A型だから几帳面なの」「俺、獅子座だからリーダーに向いているんだぜ」といった画一的ラベルを貼ることで、複雑な人間性を単純化し、予測可能な状態にすることで精神的な安定を得ようとしているのかもしれません。

「オンリーワン、大事だよね」と思いつつ、実は「全員オンリーワンは、マジ疲れる」というのが世の中の本音。カテゴライズは「自分は何者か」という不安を解消し、同時に「同じカテゴリの仲間」との連帯感を生みだすもの。それが行き過ぎると他者排除や差別につながるのかもしれませんが、まあこの辺はある種、動物的本能なのかもしれません。

「みんながそうだ」という文章は、最強の武器である

では、その「画一化されたラベル」を活用した文章とはどんなものでしょう。それは心理学的に言えば「社会的証明」ということになります。この社会的証明とは、「自分の判断に自信がないとき、他人の行動や選択を正解だと信じて追従する」という心理現象です。

ビートたけしさんのキラーギャグに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」というものがありますが、これぞまさに社会的証明でしょう。もう少し堅い言葉で言えば、「三人市虎を成す(さんにんしこをなす)」というものがあります。一人が「街に虎が出た」と言っても誰も信じませんが、三人が口を揃えて言えば、人々は虎がいると信じ込んでしまうという意味の中国の故事です。

要するに、「みんながやっているなら正しいことだろう」、「みんなが言ってることはきっと本当だろう」と人はどうしても考えてしまうのです。映画のコピーに「本作品、視聴者のオススメ度、驚異の99.5%!」みたいなものを見たことがないでしょうか。もっと身近なところでは「食べログレビュー4.22!」みたいなものも「社会的証明」です。

「そんなに言うなら見て/行ってみようかな…」、そう思うのは自然なことで、「世界に一つだけの花」をみんな歌いながらも、やっぱり自分は周りと同じで安心したい、心の底ではそう思っているのでしょう。

ここに、先の血液型や星座のような「属性」を加えたら、それはもう鬼に金棒。「特定のカテゴリに自分はいる」と考えている人に社会的証明ワードをぶつけたら、その効果は絶大なものとなるでしょう。

仮にZ世代の皆さんに「MBTIでのリーダー型」という特定のカテゴリに向けて「リーダータイプの9割が絶賛した○○が登場!(社会的証明)」と言えば、それはもう「これは“私のような人間”にとっての正解だ」と即断してもおかしくありません。

カテゴリをもう少し一般化し、「英語を話したいと思っている意識高い層」に向け、「このAI英会話アプリで英語力が上がったと97.5%が実感」という宣伝を向けたとしたら。転職をしようと思っている40代に「いま40代の50%が転職を考えており、そのうち8割の人がこのサービスに登録しています」とぶつけたら。頭の中に思うワードはこれです。「乗り遅れてはいけない」。

「みんなちがって、みんないい」。それはそうです。しかし現実問題としては、「みんなそういうなら私も…」の同調パワーというのは望外に大きいもの。みなさんもWebサイトで自社商品の宣伝コピーを書く際などは、この法則をちょっと意識してみてください。きっと売れる可能性が上がるはずです。

爆発的にヒットしている『生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術』の著者である私が言うんだから、間違いありません! なんてね、そういうことです。「爆発的にヒット」が本当ならばですが……。

「社会的証明」のある文章例
全米が泣いた
業界シェアNo.1(〇〇調べ)
Amazonベストセラー1位獲得
顧客満足度98%
予約10カ月待ちの状態です
上場企業の90%が導入済

著者

松井 謙介
株式会社ワン・パブリッシング取締役社長

株式会社ワン・パブリッシング取締役社長兼メディアビジネス本部長。20年間雑誌制作に従事。現在はメディア運営のマネジメントをしながら、コンテンツの多角的な活用を実践中。自社のメディアのみならず、企業のメディア運営や広告のコピーライティングなども手掛ける。「生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術」(小社刊)発売中

書誌情報

生成AI時代にこそ学びたい 自分で文章を書く技術

書籍:1,980円
電子版:1,980円
B6変:208ページ
ISBN:978-4-8399-90275
発売日:2025年09月19日

■概要

生成AIの進化により、議事録やレポート、マニュアルといった事務的な文章は効率的に自動化できるようになりました。しかしビジネスの現場では、それだけでは不十分。企画書や提案書、人材募集文、オウンドメディアの記事など──人の感情を動かし、行動へとつなげる文章には、書き手自身の思考や意見、そして「相手にどう動いてほしいか」という意図が不可欠です。

最新のAIは流麗な文章を生み出し、表現力も増しています。しかし、「誰に向けて、何を伝えるのか」という視点は、人間にしか持ち得ません。読み手を意識し、関係性を踏まえて言葉を選ぶことこそが、成果を生む文章の鍵なのです。

本書では、生成AI時代にあっても欠かすことのできない「自分で書く力」を、実践的かつ最新のテクニックとともに解説。あなたの仕事に直結する「伝わる文章術」をお届けします。

■目次

はじめに

第1章 文章を書き始める前にやるべきこと

1-1 文章の「価値」を見直しておく
1-2 準備段階で、文章の90%は完成させよ
1-3 「マクロからミクロの視点」を意識する
1-4 「結論から書けぃ!」は絶対的ルール?
1-5 書く前に「統一表記」を作ろう
1-6 「だ・である」「です・ます」を統一せよ
コラム 「普通に」って一体どの程度?

第2章 文章執筆の基本ルール

2-1 文章は「短く」、「能動態」で書こう
2-2 読み手の時間を奪う「冗長表現」を排除せよ!
2-3 カタカナ語はバランスを模索しよう
2-4 漢字と平仮名は「3:7」を目指せ!
2-5 「話し言葉」と「書き言葉」を使い分けよう
2-6 「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の秘密
コラム 「言葉の繰り返し」の新潮流とは?

第3章 文章が美しくなる7つのポイント

3-1 「読点」は感覚で打つべからず
3-2 「修飾」の正しい扱いを守る
3-3 デリケートな「並列」の扱いに注意しよう
3-4 げに恐ろしきは「主語と述語の呼応」
3-5 「は」と「が」の使い分けを知る
3-6 生成AI時代は「接続詞」の活用をマスターせよ
3-7 時代とともに変化する「副詞の呼応」
コラム 疑問文はこの上ない「断定」になる

第4章 文章の神は細部に宿る

4-1 類似表現は「ニュアンスの僅差」を把握すべし
4-2 誤解しやすい日本語表現を把握せよ
4-3 「比喩」はいまどきの若者言葉に学べ
4-4 日本語は「オノマトペ」を攻略せよ
4-5 雑誌編集者流の文章校正を学ぼう
コラム 意外と身近にある「リスクのある言葉」

おわりに

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