これからの新常識は 「CMSマーケティング」だ!

進化を続けるCMSをWebサイトの制作・更新にしか使っていない企業もまだ多いのではないでしょうか? これからの新常識はCMSマーケティング! 今すぐ使いこなして、売り上げアップにつなげましょう。


高村治男さん
株式会社イノーバ  プロダクトマネジメント部 マネージャー
https://innova-jp.com

1. CMSは強力なマーケティングツールになる

企業によって二極化する CMSの活用

Webサイト運営の基盤とも言えるCMS。しかし、今やCMSは「Webサイトの制作・更新」という役割だけにとどまらず、企業のマーケティング、営業を担うツールとしても非常に重要になっています。

オウンドメディアのパッケージサービスの提供や、独自のCMSを用いた、Webのコンテンツマーケティングに強みを持つ株式会社イノーバの高村治男さんも、ここ数年でCMSの使い方に変化が現れているといいます。

「以前はCMSというと、Webサイト管理システムとしての意味合いが強くありました。しかし、最近は企業のCMS活用は二極化しつつあります。1つは、多機能は求めず、自社サイトの最低限の更新・管理を目的としてCMSの導入・刷新を検討する企業。こういったケースは、専門的な知識がない人でも、いかに簡単にページを更新できるかという点に関心が高く、専任のシステム担当者がいない中小企業のニーズが高いと言えます。もう1つは、コンテンツマーケティングを見据えた頻繁なコンテンツ発信や、CMSを用いてお客様にどのようなアプローチができるかなど、CMSをビジネスツールの1つとして重視している企業です。こうしたケースでは、HTMLやCSSの知識がある人がWeb上でのしかけを展開したくなったり、メールマガジンを配信したりなど、CMSをさらに活用したくなった場合、そうした仕様に耐えられるのか、拡張性があるのかといった点が重要になります。ただ、実態は前者のようにCMSを『Web更新のツール』としか捉えていなかったり、あるいは『マーケティングや営業ツールとして使えることは知っていても、活用できていない』企業がまだ多いように感じます」

CMSは、一度導入すれば頻繁に入れ替えるものではないため、情報を積極的にはアップデートしていない人も多いでしょう。しかし、Webを活用したマーケティングの重要性を認識する企業が増えるなか、CMSにその役割の一端を担わせることで、ビジネスを成長させようとする傾向は強くなっていると高村さんは言います。

「今はBtoBでもWebでリサーチをすることは珍しくありませんし、Web上で相手企業のことを調べて、商談に臨むことはもはや当たり前になっています。そうした背景もあって、近年はお客様にとって最初のコンタクト先になるWebサイトをマーケティングや営業窓口として使えるように、さまざまな機能を持ったCMSがリリースされています」

CMSで解決できるマーケティング課題

 

マーケティング視点から見たCMS選びの注意点

多くのCMSが提供されている今、マーケティングに活用するためには何を基準に選べばいいのでしょうか? 高村さんは「基本的なWebサイトやページの作成・更新であれば、どれを選んでも問題ない」と前置きしつつ、次のような注意点を挙げます。

「まずは、マルチデバイスに対応しているかどうかという点です。これは1度の更新で、PC、スマホ、タブレットなど、デバイスにあわせて反映される機能ですが、今、リリースされているCMSであれば、大半のものは対応しています」

そして何より重要と高村さんが話すのが、「Webサイトの目的を明確にすること」と「運用の方法」。それによって必要な機能が変わり、コストも変わってくるといいます。そのために必要なのが、営業担当者やマーケティング担当者を交えたCMSの検討です。

「CMSをマーケティングツールとしてしっかり機能させるためには、情報を更新・発信していくことに加え、ページ分析や、訪問者情報の取得、情報のプッシュなど、さまざまなアプローチをすることになりますが、必要な機能は『Webサイトの目的』『展開したい施策』などによって異なってきます。メールマガジンの配信機能の有無や、入力フォームの有無、顧客リスト管理の必要性など、CMSで行える機能を実際の営業フローに照らし合わせて、まずは取捨選択する。さらに取得したデータを営業やマーケティングの担当者に渡しやすいかなど、CMS上でできることだけでなく、その先のフローまで考えて、CMSを検討することが重要です」

Point❶
マーケティングツールとしても使えるCMSが増えている。
Point❷
営業・マーケティングフローの第一歩目まで考えて、機能を取捨選択する。

2. CMSを使って成果を出すには?

CMSマーケティングの基本はコアな機能を徹底的に使いこなす

マーケティングツールとしても豊富な機能を備える現在のCMS。特に重視すべき機能にはどのようなものがあるのでしょうか? 高村さんはCMSによって異なるものの、マーケティングの基本と的な施策を行える機能をしっかり押さえることが重要と言います。

「検索エンジン対策機能や、SNSとの連携機能、マルチデバイスの対応は、現在リリースされているCMSならほとんど対応しているはずです。マーケティングツールとして使用頻度の高い機能としては、日々の情報を発信できるブログ機能、お客様からの問い合わせや情報を受けつける入力フォーム機能、メール作成・配信機能、顧客リストの管理機能、ホワイトペーパーのダウンロードなどでしょう。特にメール配信は以前からあるマーケティング手法だけに軽視されがちですが、実はもっとも効果の出やすい手法のひとつです」

見込み客を集める(SEO)機能、見込み客の情報を収集する(リードジェネレーション)機能、見込み客にアプローチする(リードナーチャリング)の機能を備えているCMSなのかをしっかりとチェックし、こうした使用頻度の高い機能が使いやすいか。想定している営業フローにスムーズに組み込みやすい仕様になっているかが重要になります。

また、マーケティングの側面で気になるのが分析機能です。しかし、高村さんは、CMSの分析機能は必要最低限で十分と言います。

「CMSによっては、非常に充実した分析機能を備えるものもありますが、必要以上の分析はおすすめしません。高度な分析を行おうとすると、CMSの操作や管理も煩雑になってしまい、本来、必要ない機能も使いこなそうとしがちになります。自社のWebサイトでのマーケティングで大事なのは、定点で観測し、それを踏まえたコンテンツや情報を更新していくこと。ですからCMS上ではコンテンツごとの訪問者数や閲覧数、滞在時間など、基本的な情報だけわかるようにして、詳細な分析は別のツールを使う方がいいでしょう。CMSには詳細な分析機能を求めるのではなく、データのエクスポートがしやすいかなどのほうが重要ですし、最低限の情報を把握できるCMSのほうが、コストを押さえられるケースが多くなります」

ついつい、あとで機能が足りなくならないようにと、充実した機能のCMSを選んでしまいそうになりますが、担当者が退職したり、体調不良になった際、たくさんの機能があるCMSでは、ほかの人が操作に戸惑い、更新が滞ってしまったり、学習コストが高くなってしまうケースも少なくありません。

そうしたことを防ぐ意味でも、高村さんは「CMSはWebサイトの目的にあわせて、コアな機能のみに絞る。少し足りないぐらいがちょうど良い」とアドバイスします。

ブログ機能

見込み客を集める
情報更新やコンテンツマーケティングなど、もっとも使われることが多いブログ(記事作成)機能はSEO対策に欠かせない。Wordやメールソフトのように直感的に使えるようになっているものが多い

問いあわせフォーム機能

見込み客の情報を収集する
見込み客の情報収集に有効なのが、メールマガジンの登録や、情報入力が必要なホワイトペーパーのダウンロード。HTMLやCSSに詳しくない人でも簡単に設定・変更できることが望ましい

CMSを使いこなして問い合わせや商談が増加

マーケティングツールとしてのCMSの考え方は、BtoCもBtoBもそれほど大きく変わりません。しかし、注意点もあります。

「例えばメール配信で考えてみると、BtoCの場合は、1人でも大勢のお客様に“ばらまく”ことが重視されるのに対し、BtoBの場合は、1人ひとりのお客様に対して、丁寧にアプローチしていく企業が多いのではないでしょうか。そうしたビジネスモデルも踏まえて、自社の目的にあったCMSかどうか、導入の際にしっかりと検討が必要です。また、これから導入する場合には、一般的にニーズのある機能、トレンドの機能が追加されていく、クラウド型もおすすめです」

CMSを利用したマーケティングを導入することで、「自社のWebサイトからのお問い合わせが増えて、商談件数が増えた」「自社で情報を更新できるようになり、低コストでWebマーケティングができるようになった」という声を聞くことが増えているという高村さん。

CMSをマーケティングツールとして使いこなすことで、売り上げアップにつなげたり、新規顧客に効率的にアプローチしたりと、さまざまな効果を期待することができそうです。

メール作成機能

見込み客にアプローチする
メールマガジンの作成、配信をCMS上で行える機能も非常に役立つ。顧客管理機能を備えるCMSであれば、取得した顧客情報と組み合わせることができるため、より効率的

レポート機能

分析
Webへのアクセス数や、滞在時間、人気のコンテンツなど、日常的なデータはCMSでチェックできると便利。CMSではデイリーのチェック、より詳細な分析はGoogle Analyticsと使い分けるのがおすすめ

Point❸
マーケティングで重要な4つの機能をCMSで行えるかチェック!
Point❹
たくさんの機能を使うのではなく、機能を絞り、徹底的に使う。

3. CMS起点で新たな営業フローを構築

導入の際には営業フローから活用まで見据えてCMSを選ぶ

最後にマーケティングの観点から見たCMS構築・導入と活用で重要なポイントをおさらいしていきましょう。

まず導入の際にはCMSを使って構築するWebサイトの目的や達成したいことをはっきりさせること。自社の最低限の情報だけをスムーズに発信できればいいのか、あるいはWebサイトを訪問した人に積極的にアプローチしたいのか。アプローチ対象は不特定多数なのか、見込み客に絞るのか。コンテンツマーケティングを行うなら、更新頻度はどれぐらいにするのか、などです。

Webサイトの目的がはっきりしたら、次はどうマーケティングや営業に結びつけていくかのフローを考えます。Webサイトのゴールの多くは、売り上げにつなげることですから、サイトで収集した顧客情報やデータを活用するためのフローを考える必要があります。

例えば商品資料をダウンロードする機能をCMSで構築した場合、ダウンロードした顧客の情報はどうやって営業担当者に渡すのか。営業担当者がCMS上で把握してアプローチするのか、あるいは担当者がCSVデータを営業に渡すのかといったフローです。また、Webサイトに訪れるユーザーの属性や、滞在時間、人気コンテンツが把握できたら、次はどのようなアクションを誰が起こすのか、どのようなフローで誰が行うのかなど、運用の体制も考えておく必要があります。売上増につなげるための営業フロー、Webサイトの更新を継続するための運用フローの第一歩目までを考えることで、自社にどのような機能を持ったCMSが必要なのかが見えてくるでしょう。そうすれば、必要な機能だけを備えたCMSが導入でき、結果的に作業もしやすくなるはずです。

そして導入後は、備えられた機能を徹底的に使いこなすこと。コンテンツの発信であれば、どういったコンテンツが人気なのかを分析しながら、アクセス増につなげるため根気強く発信し続ける。あるいは人気コンテンツから、顧客のニーズが見えてくることもあるでしょうから、そうした”気づき”は都度、営業担当者に伝える必要があるでしょう。  もちろん、営業担当者から顧客の課題をヒアリングして、関連するコンテンツを発信することも大切です。メール配信であれば、メルマガはもちろん、ステップメールのように、より営業的なアプローチをCMSで行うのも効果的でしょう。顧客情報が思うように集まらない場合は、Webサイトやメールマガジンから情報登録への導線を見直すことも重要です。

CMSに「ないものねだり」をするのではなく、まずは今ある機能をしっかり使いこなせているかを考えてみることが大切です。

情報発信と資料のダウンロードがマーケティングの王道

イノーバのWebサイトでは、コンテンツマーケティングに関する情報やBtoBセールスに関する情報を定期的に掲載。ターゲットの課題に関連する情報を発信していくことで、見込み客の集客を行っている
見込み客の情報取得のために有効なのが、ホワイトペーパーのダウンロード。コンテンツで集客し、より有益な情報の提供には情報登録を促すことで、より有効なアプローチを行える

CMSは汎用型からビジネス特化型へ

CMSを活用したマーケティングのポイントを、「会社全体のマーケティングで、CMSがどの部分を担えるのかという視点で考えると効果をだしやすい」とアドバイスする高村さん。

「例えば弊社の『Cloud CMO』であれば、私たちの強みであるコンテンツマーケティングを行うために最適化しているCMSで、そのための使い勝手を洗練させ、機能は必要なものに絞り込んでいます。これまではさまざまなビジネスに対応できるいわば汎用型のCMSが主流でしたが、CMSが進化し、働き方改革の影響やビジネスのスピードがより増していくなかで、より特化したCMSが増えていくのではないでしょうか。」

使い方次第でブランディングから集客、顧客情報を活かした営業効率のアップまで、さまざまな効果が期待できるCMS。自社にあったCMSをぜひ探して、活用してみてください。

マーケティングは「目的」と「フロー」

 

Point❺
営業・マーケティングのフローまで考えて導入し、導入後はコアな機能を徹底的に使う
Point❻
これまでの汎用型CMSから、特化型CMSが増えていく

Text:奥田高大

  • URLをコピーしました!
目次