
AI時代のWeb運用はどう変わる? LINEヤフーとStudioが語る、内製化とガバナンスの現在地
タイアップ

企業におけるAI活用が広がる昨今、企業のWebサイトにはこれまで以上の成果が求められています。その一方で、CMSの選定をはじめ、制作の内製化、運用体制の見直し、運営を通じた価値の創出など、企業が直面するデジタル課題は、複雑さを増すばかりです。
本連載では、ノーコードでWebサイトを制作・運用できるプラットフォーム「Studio」を開発・提供するStudio株式会社でCOO(最高執行責任者)を務める吉岡泰之さんが、国内の先進的な企業を訪問。Web運用やWeb戦略におけるリアルな課題や最新動向を探ります。
第1回は、大規模な情報基盤や複数の多種多様なサービスを展開するLINEヤフー株式会社を訪れました。AIによって変化する制作や運用体制にどう向き合い、具体的にどう取り組んでいるのか? 同社「Design Executive Center」でデザインプログラムマネージャーを務める小林謙太郎さんとの対談を通じて、紐解いていきます。
目次
内製基盤とノーコード環境で、組織横断の運用体制を強化
──まずは本連載のナビゲーターである吉岡さんについて、Studioでの役割を教えてください。
吉岡泰之(以下、吉岡) はじめまして。私はStudio株式会社のCOO(最高執行責任者)として、国内の事業統括やプロダクトの事業推進を担当しています。現在、最大のテーマであり課題でもあるのが、激しく変化するAIの波をどう乗りこなすか。基本はマーケティングやPR戦略と連動させながら、プロダクトの今後のあり方を模索中です。そこで私のミッションは、Studioをマーケターやディレクターなど幅広い層が使えるプラットフォームへ進化させ、AIとノーコードで企業のデザイン業務の効率化と内製化を支援することです。
──では、小林さんは現在LINEヤフーでどのような役割を担われているのでしょうか。また、所属部門の課題もあわせて教えてください。
小林謙太郎(以下、小林) LINEヤフー株式会社の全社横断デザイン組織「Design Executive Center」で、デザインプログラムマネージャーを務めています。当社は約500名のデザイナーが在籍しており、横断的な「セントラル組織」と各「事業部のデザイン組織」のハイブリッド構成です。私の役割は、採用・PRを含むデザインカルチャーの醸成やUXリサーチによる品質向上に加え、デザインPMOとして全社のデザイン・ブランド戦略の立案や組織運営を支援することです。
現在の課題は、一貫したブランド体験の構築と「AI前提」の開発環境への変革です。特に、AI前提の開発環境への変革については、デザイン原則やデザインシステム・ガイドラインの「AI-Ready」化の取り組みを進めています。

──LINEヤフーという大規模な組織におけるWebサイトの位置づけや、制作の環境は現在どのようになっているのでしょうか。
小林 事業の本流はアプリやWebサービスなどのデジタルプロダクトですが、キャンペーンサイトなども基本的に内製するケースがほとんどです。LINEとヤフーの合併前から、独自のCMS兼ノーコードツール「LandPress(ランドプレス)」があり、デザイナー以外でもブランドマナーに則ったサイトを構築できる環境が整っています。
また、2019年頃からデザインデータはクラウド上で同時編集できるFigmaへ全社移行を完了しました。これによりプロセスの透明化やガバナンスが強化され、途中経過がオープンになったことで上流工程との本質的な議論や、エンジニアへの仕様共有が格段に行いやすくなりました。
吉岡 そうなんですね。以前私が代表を務めていたgazは、Studioを用いたWeb制作で豊富な実績を持つデザインファームでした。数多くの企業支援で感じたのは、Webサイトは「つくって終わり」ではなく、その後の運用フェーズでいかに仮説検証と改善をスピーディに回せるかが価値を生むということです。そのためStudioではGA4(Google アナリティクス)との連携機能を用意したり、運用中のWebサイトをそのまま引き継いでAIとの対話を通して編集・運用できる「Studio.Drop」(ベータ版、2026年9月現在)というサービスを開発したりしながら、マーケターなどの非デザイナーでも直感的にデザイン配置や運用が行えるよう、操作性を高めてきました。担当者自身がスピーディに更新や調整できることは、企業の大きなコスト削減と事業成長につながります。
小林 それはアプリ開発でも同じですね。リリースして世に出してからが本当の勝負であり、アップデートを繰り返して価値を提供し続けることで初めてビジネスになる、という構造はWebもアプリも変わりません。

「デザインシステム」を通じて、自由と統制を両立する
──ノーコードツールや生成AIの普及で「つくる」ことの民主化が進み、非デザイナーでもつくりやすくなりました。組織には、どのような変化や課題が生まれていますか?
小林 形をつくるハードルは劇的に下がりましたが、でき上がったものをそのまま世に出せるかは別問題です。日常生活に関わる多様なサービスを提供する当社には、一定の品質はもちろん、情報の信頼性やアクセシビリティ、安全性の確保が不可欠です。品質や安全性を担保するためのプロダクトマネジメント上の基準があり、新しい制作手法を導入する際にも、必要な検証を行いながら進めています。
一方で社内では、AIドリブンなプロトタイピングによるユーザーテストが爆発的に増えています。多様な属性のメンバーが在籍するLINEヤフーグループの環境を活かし、幅広いユーザー像を想定した検証を社内で完結できる強みがある一方、デザイン組織としては「一貫した品質担保」「生産性向上」、それとLINEヤフーのミッション「WOW Our Users!」を実現するための役割として、誰もが基準を満たせるデザインシステムの環境整備を進めています。
吉岡 なるほど。現場ではプロのデザイナーが細部を詰める前に、ライトにアイデアを形にし市場の反応を見たいというニーズが高まっています。Studioでは、「Studio.Assistant」(ベータ版で申し込み制/2026年9月現在)という、AIがたたき台をつくりつつ人が磨き上げていく設計思想のもとで開発したWeb制作OSをリリースしましたが、つくれる人が増えたからこそ、権限管理やトーン&マナーを守るガバナンス、事業全体のワークフロー設計が不可避の課題です。
──大規模な組織だと、誰もがつくれる「自由」とブランドを守る「統制(ガバナンス)」のジレンマを抱えやすいと思います。どのように乗り越えようとされていますか?
小林 すべてを画一的なルールで縛ることはしていません。多様なサービスがあり対象ユーザーや世界観が異なるため、たとえばLINEの「LDS(LINE Design System)」やヤフーの「Riff」といった共通デザインシステムを提供しつつも、使用の最終判断は各事業部に委ねています。ただし、災害情報など人命に関わる領域では、より厳格なガバナンスを適用します。2026年にリリースしたAIエージェント「Agent i」のように、最初から全社横断でステークホルダーを巻き込んでシステムをつくり、一貫性を保つ先行事例もあります。
吉岡 デザインのための材料を一箇所に集め、システム側でレールを引き、その範囲内であればブランド毀損を心配せず事業部が自由かつスピーディに動けるプラットフォーム環境を提供することも、私たちの役割だと考えています。
たとえば、デザインの材料を集める取り組みのひとつとしてフォトストックサービス「Studio.Stock」をリリースしたり、今後の構想としてエンタープライズ向けにアセットライブラリを提供できないかという検討も進めていたりします。
また先ほども1度触れましたが、いま運用中のWebサイトをそのまま引き継ぎ、AIとの対話で更新・運用まで完結できるWebプラットフォームサービス「Studio.Drop」を開発し、ベータ版の事前登録を受け付けているところです(2026年9月現在)。外部のAIエージェントから自社サイトを直接更新できる設計で、つくる場面だけでなく、その後の運用もAIと協調しながら活用できる環境を目指しています。

AI時代だからこそ求められる、人間の感性と専門性
──ここまで、誰もが制作しやすい環境づくりについて、うかがってきました。一方で、AIによって制作の効率化も進んでいます。そうした時代に、人間のデザイナーはどのような価値を発揮していくといいでしょうか?
小林 社内でコンテンツのネーミングを考えることがあって、AIで大量に案を出したメンバーと、自分で悩んで案を出したメンバーの両方がいました。結果的に選ばれたのは、人間のアイデアだったんです。たしかにAIは、膨大なデータを平均化し「それっぽい」答えを出すのは得意ですが、人間の考えたものには独特の「深み」や「熱」があり、感性に訴えかける力ではまだ人間が勝っているな、という手応えを強く持ちました。
吉岡 それは面白い事例ですね。デザインには、一定の品質に均質化すること以上に、あえて意表を突くような非連続な発想が求められますよね。AIに最初から最後までつくらせると、「きれいだけれど、心に刺さらないもの」ができ上がりがちです。だからこそ、レイアウトなどの再現性のある部分はAIで効率化し、ブランドの個性や魂を込める一番重要な部分に人間のリソースを集中させるべきでしょう。
企業に対し「ここまではツールや仕組みで進めながら、ここから先はオリジナルでつくり込む」というWeb戦略全体の取捨選択ポイント(線引き)を示すことが、プラットフォームを提供する側の価値の本質だと考えています。私たちとしても、全体の80%をAIに生成させながら、残りの20%を人間が直感的に調整できるといった環境を提供して、人間の創造性の最大化を目指していきたいですね。
──LINEヤフーにおける具体的なWeb制作の事例で、そうしたテクノロジーの進化と組織の変化を象徴するようなエピソードはありますか?
小林 2026年6月に開催した当社の技術カンファレンス「Tech-Verse 2026」の公式サイトが良い例です。エンジニアとデザイナーだけでAIを活用しマークアップの大部分を行いました。制作過程でデザイナーがPCカメラを用いたインタラクティブな企画を思いつき、AIの助けを借りてプロトタイプまで自力でつくり上げていきました。
実装にあたっては、個人情報の取り扱いやセキュリティについて、より慎重な検証が必要と判断し、今回は公開を見送りました。この経験から、AIによって職能の境界が広がる一方、仕組みを正しく理解し、安全性を担保する専門性が一層重要になると実感しました。

AI前提の時代に際立つ、人間ならではの価値
──最後に、2030年を見据えた時、企業やデザイン組織はどのような姿になっていると予想されますか? お二人の考えをそれぞれ、うかがいたいです。
小林 はい。2030年を想像すると、AIの性能が今とは比較にならないほど向上していることは間違いありません。その時、LINEヤフーが推進する「AI-Ready」、つまりAI活用を前提とした組織や開発体制を実現できているかが、競争力の分水嶺になります。現在はデザイン原則や行動指針など、あらゆる情報をAIが読み込んで活用できる状態に整備することを、急ピッチで進めています。
しかし開発環境がAI前提へと変わっても、ユーザーへの信頼や安全性というブランド根幹の価値は決して変えてはならない部分です。AIで加速させる領域と、人間が責任を持って守り抜く領域を明確に見極めながら、進めていきます。
吉岡 組織運営の観点では、全員をルールで縛るより、一定の自由度を与えて動き回ってもらうほうが、非連続で爆発的なイノベーションが生まれやすいものです。経営・マネジメント層には、クリエイターの創造性を解き放つ自由を提供しつつ、致命的なリスクを防ぐガイドを敷く高度なバランス感覚が求められます。
また、デジタルプロダクトがAIで瞬時につくれる時代になるほど、泥臭い営業活動やオフライン空間でのリアルな体験価値が相対的に高まります。「つくる」ことがコモディティ化した先には、人間らしい感性やブランドへの徹底したこだわりが最大の差別化要因になると信じています。
取材・文/長谷川智祥、写真/黒田 彰、企画協力:Studio株式会社
※本記事はStudio株式会社とのタイアップ企画です。