AI検索時代、企業サイトは何を伝えるべきか? 小島芳樹(chot Inc.)×河原田隆徳(Ahrefs)が語る、ユーザーとの新しい接点

AIに尋ねれば答えが返ってくるようになり、検索結果からサイトを訪れずに情報を得る機会が増えています。その中で、企業サイトはどんな役割を担えばよいのでしょうか。ちょっと株式会社代表の小島芳樹さんと、SEO・AI検索分析ツールを提供するAhrefs(エイチレフス)で日本マーケティング統括を務める河原田隆徳さんが語り合いました。

ちょっと株式会社の小島芳樹さんとAhrefsの河原田隆徳さん
目次

競合を知ることから、Web施策は始まる

小島芳樹(以下、小島) 僕たちは会社でAhrefsを契約していて、お客様の施策提案に活用しています。ただ、Web Designingの読者の中にはAhrefsを知らない人もいると思うので、まず、どのようなサービスを提供しているのかを教えていただけますか。

河原田隆徳(以下、河原田) Ahrefsは2010年にCEO Dmytryによってウクライナで創業し、シンガポールに本社を置く企業です。会社名と同じ「Ahrefs」という、Webサイトが検索でどのように見つけられているかを調べるためのツールを提供しています。

もともとの出発点は、Web上のページを自動で巡回して情報を集める「クローラー」というシステムでした。そのデータをもとに、SEOを支援するサービスを展開してきた経緯があります。最近は、AIの回答の中で自社や競合のサービスがどのように紹介されているかを調べる機能にも力を入れています。

Ahrefs日本マーケティング統括の河原田隆徳さん
Ahrefs日本マーケティング統括の河原田隆徳さん。国外SaaS企業における日本市場向けのマーケティングとローカリゼーションで10年以上の経験を積み、現職へ

小島 なるほど。Ahrefsを使うと、ユーザーは具体的にどんな情報を得られるのでしょう?

河原田 競合サイトがどのような検索キーワードで上位に表示されているか、どのページが検索からの訪問を集めているか、といった情報を調べられます。こうした情報がわかると、「競合にあって自社にない情報は何か」「どのような内容のページをつくるべきか」といった施策を考えやすくなります。

小島 ありがとうございます。当社は以前からAhrefsを使っていますが、ここ数年は、日本での展開に本格的に力を入れていると感じています。日本市場を重視するようになった背景をお聞かせください。

河原田 日本には、ローカライズされる前から使い続けてくださっている方が多く、グローバルで見ても非常にシェアが高い国なんです。そうした評価を受けて、2024年8月にAhrefs Japanを立ち上げ、日本での展開を本格化させました。今後も日本語でのカスタマーサポートや、大企業向けの支援を強化していきたいと考えています。

ちょっと株式会社代表取締役社長の小島芳樹さん
ちょっと株式会社代表取締役社長の小島芳樹さん。1986年生まれ。会社員としてWebデザイン・ディレクション・事業開発に携わり、2018年5月に独立。2019年4月にちょっと株式会社を設立。同社は、Next.jsなどのモダンフレームワークを活用したWebサイト構築を得意とするほか、これまでの制作で培ったノウハウを活かした独自のWebサイト構築プラットフォーム「Orizm」を開発・提供しています
ちょっと株式会社が開発するWebサイト構築プラットフォーム「Orizm」

被リンクだけでは測れない、日本の「読む」文化

小島 海外と比べたとき、日本のSEOにはどのような特徴がありますか?

河原田 以前、海外企業で働いていたときは、他サイトから自社サイトへ張られる被リンクを増やすことが非常に重視されていました。もちろん日本でも被リンクは重要ですが、日本の検索結果を見ていると、リンクの強さだけでは説明しきれないケースがあります。被リンクがそれほど多くなくても、検索した人が求める内容と関連性の高いページが上位に表示されていることがあるんです。

小島 つまり、日本ではページの中身まできちんと読まれる傾向がある、ということでしょうか。

河原田 そう感じます。前職では、「日本の利用者はファーストビューだけで判断せず、その下までスクロールして読む傾向がある」と、海外のチームに説明していました。海外では「最初の画面がきれいなら十分」と見られることもありましたが、日本向けのページでは、その先の2つ目、3つ目の画面まで内容をきちんと組み立てる必要があると考えていたんです。実際、ヒートマップでもページの下のほうまで見てもらえていました。

小島 ユーザーが中身まで読むから、企業側も読み応えのあるページをつくる。その積み重ねが、日本の検索結果の特徴にもつながっているのかもしれませんね。

河原田 そうですね。どちらが先かは簡単に言えませんし、検索順位が決まる理由を1つに絞ることもできません。ただ、日本では被リンクの数やページの第一印象だけでなく、検索した人が求める内容を、最後まで読める形で提供することが大切だと感じています。

SEO・AI検索分析ツール「Ahrefs」のトップページ
Ahrefsのトップページ。Ahrefsは、独自のクローリングデータを保有するSEOサービスです。同社によると、GoogleやOpenAIといったビッグテック企業に並び、世界で第8位の活動量を持つWebクローラーだといいます

AI検索で、企業とユーザーの接点はどう変わったか

小島 SEO・AIO(AI最適化)を取り巻く環境は、目まぐるしく変わっていると感じています。当社も2026年7月に、AI検索を意識してコーポレートサイトをリニューアルしました。その後、ChatGPTなどに「Next.jsの開発会社」「Next.jsに強い会社」などと尋ねると、当社が紹介されるようになってきたんです。

僕らも研究している最中ですが、まだ多くの会社が手探り状態なのではないかと思います。河原田さんから見て、AI検索によってユーザーの情報収集はどのように変わってきていますか。

AIに質問できる、ちょっと株式会社のコーポレートサイト
ちょっと社のホームページ。訪問者が知りたいことを文章で入力すると、即座に情報が表示されるエージェント型Webサイトを構築しています

河原田 今はGoogleの「AIによる概要(AI Overviews)」やAIチャットが、さまざまなWebページの内容をまとめて回答してくれます。AIの回答を読むだけで調べものが済む場面が増え、これまでGoogle検索で上位に表示されていたページでも、訪問されないケースが増えています。

一方で、お客様からは「検索結果からのクリックが減っているのに収益は伸びている」という話を聞くこともあります。

ユーザーがAIの回答で企業を知り、別の場所で商品やサービスを選んでいる可能性もあります。しかし、このような行動は従来のアクセス解析だけでは捉えにくいため、問い合わせの際に「何で知りましたか」と聞くなど、別の方法も組み合わせて確認する必要があるでしょう。

また、「検索」を行う場所もGoogleだけではなくなりました。AIチャットに加え、SNSやYouTube、ECサイトの中でも検索されています。企業はWeb上の検索順位だけを見るのではなく、さまざまな接点で自社がどう認識されているかを考えなければならない時代になっています。

小島 Ahrefsでは、Google検索以外はどこまで見られるんですか。

河原田 AI検索におけるブランドの見え方を調べる「ブランドレーダー」という機能があります。検索データをもとにつくられた質問や、利用者が登録した質問に対するAIの回答を収集し、自社や競合の名前がどのように紹介されているかを確認できます。さらに、AIが回答をつくる際に、どのWebサイトの情報を引用しているかも調べられます。これによって、Googleでの検索順位とは別の角度から、AIの回答内で自社がどのように扱われているかを把握できるのです。

AI検索におけるブランドの露出や言及を分析する「ブランドレーダー」
ブランドレーダーの紹介ページ。AI検索や主要なAIプラットフォーム上における、自社や競合のブランド露出・言及状況を可視化・分析できるサービスです

自社サイトと外部の情報を、正しく伝わる状態に

小島 AIに自社を正しく紹介してもらうために、各社がどのようなことをしているのか気になっています。

当社は、WordPressでのWeb制作からNext.jsに強い開発会社へと軸足を移し、現在は自社開発のCMSも提供しています。ところが、比較サイトにはWordPressでの制作を中心としていた頃の情報が残っていたんです。それがわかってからは、外部に残る古い情報をコツコツ直しています。この対策によって、AIでの紹介のされ方にも変化が出てきました。

河原田 情報の食い違いをなくすことは、AIに誤った回答をさせないという意味でも大切ですね。あるお客様の例ですが、AIが紹介した料金と実際の料金が違っていたため引用元を調べてみると、外部サイトではなく自社サイトの料金ページが古いままだったそうです。公式サイトの情報に古いものが眠っていないかを調べ、最新の状態に保つことも重要です。

小島 まずは、自社サイトに古い情報が残っていないかは確認しておきたいですね。

河原田 あわせて、AIがどのような情報源を重視しているかを知ることも大切です。日本ではYouTubeやPR TIMESなど、日常的に目にするサービスがよく引用元として登場します。そうした情報源を把握して、発信する場所を考えていく必要があります。

対談でAI時代の企業サイトについて話す河原田隆徳さん

企業サイトは、信頼と行動を支える場所へ

小島 ここからは、「AI時代に企業サイトは何のために存在するのか」をうかがいたいです。実はこの問いは、AIが登場する前からありました。以前、美容室をチェーン展開している会社にサイトリニューアルの相談でうかがった際、担当の方から「今はInstagramで情報を発信しているのに、企業サイトも必要ですか」と聞かれて、答えに困ったことがあります。

河原田 難しい問いですね……。検索上位からの流入を中心に考える手法は、今後変わっていくと思います。ただ、AI検索の回答には口コミなどと並んで企業サイトも参照されますし、「Ahrefsとは」と指名検索すれば公式サイトを見に来る人もいます。だからこそ、正確で鮮度の高い一次情報を発信しておくことが重要です。

AIで知って検索したのに、サイトの設計があいまいで問い合わせにつながらないこともあります。信頼できる発信元として、企業サイトはこれからも必要だと考えています。

また、土台となるSEOの基本も大切です。AI時代になっても、これまでSEOで取り組んできた対策は引き続き有効です。内部リンクを整えるなど、人にもAIにも読みやすい構造にすることが求められます。

小島 当社はAI以前から、SEOのためにサイトを高速化したいという依頼をいただき、Next.jsを使って取り組んできました。Next.jsには、キャッシュや画像最適化など、適切に実装することで表示性能の向上に役立つ仕組みがあります。そうした仕組みを活かし、画像が多いサイトやアクセスが集中するサイトを安定して表示できるようにする仕事を続けています。

河原田 そうした取り組みは、AEOの観点でも意味があります。AIサービスが回答をつくるためにWebページを取得する際、サーバからの応答が遅いと、情報の取得を途中で打ち切られる可能性があるためです。

表示が速く、必要な情報にたどり着きやすいサイトをつくる技術は、人だけでなくAIにも情報を読み取ってもらいやすくすることにつながります。ちょっと社がこれまで培ってきたWebサイトの高速化や情報設計のノウハウは、AI検索への対応にも活かせると思います。

対談でWeb制作とAI活用について話す小島芳樹さん

AIで分析の間口を広げ、提案に活かす

小島 ここまでは、AI検索に企業サイトがどう対応するかという話でした。視点を変えると、Webサイトをつくる側がAIをどのように使うかという課題もあります。

実は最初にAhrefsを契約したとき、機能が多すぎて何を見ればいいかわからず、一度離れてしまったんです。でもその後、AhrefsとMCP(AIと外部ツールをつなぐ仕組み)の接続機能がリリースされて状況が変わりました。Claudeにつないでみたら、URLを伝えて「競合調査して」と頼むだけで情報が出てくる。そこから一気に活用できるようになりました。

河原田 MCPを公開したときは、大きな反響がありました。小島さんと同じように機能の使い方がわからなかったり、CSVをダウンロードしてExcelで整えたりと苦労されていたようです。AIからデータを呼び出せるようになったことで、そうした準備にかかる手間を減らせたという声をいただいています。

AIアシスタントからAhrefsのデータを利用できる「Ahrefs MCP」
2025年にリリースしたAhrefs MCPサーバー。ChatGPTやClaudeなどを使い、自然言語でAhrefsのマーケティングデータを活用できます

小島 最近は、AIワークスペースも出されていますよね。

河原田 2026年8月にリリースした「Letaido(レタイド)」です。Ahrefsのデータを引き出し、ノーコードでダッシュボードやアプリをつくって分析に活用できます。さらに、つくったアプリは独自のURLで社内全員と共有することが可能です。

小島 Web制作会社でもかなり使えそうです。僕らもCMSの「Orizm」を制作会社に広め、使いこなしてもらう難しさを感じていたので、AhrefsをMCP経由で連携したところ、簡単に使えた体験はヒントになりました。専門的な道具でも、AIが利用者との間に入ることで、使い始める入口を広げられるのではないかと思います。

これからはCMSそのものだけでなく、どのようにWebサイトを運用するかも伝えていきたい。その中で、Ahrefsのデータを使って競合や検索ニーズを調べる方法も、提案の1つに盛り込んでいけたらと思っています。

レポートやダッシュボードを作成できるAIワークスペース「Letaido」
Letaidoは、マーケティングに特化したAIワークスペースです。Ahrefsの契約者は、Ahrefsの各種データと連携し、レポートやダッシュボードなどをノーコードで作成できます。Ahrefsのサブスクリプションがなくても、Letaido単体で利用できます(月額99ドル)。Google Search ConsoleやGoogleアナリティクスをはじめ、さまざまな外部ツールと接続して情報をまとめられます
対談を終えた小島芳樹さんと河原田隆徳さん

取材・文:小平淳一 写真:黒田彰

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