《デザイン基礎講座》レイアウトの基本原則を理解する #2

「デザインをする」ときくと、身構えてしまって自分には無理と思う人もいるかもしれません。しかし、情報を伝える意図を持って人の手でつくられたものであれば、それは誰がつくったものであってもデザインされたものになります。
手がける対象が紙であってもWebでも、まずは基本だけをしっかり押えておけば、誰にでもデザインはできるものです。ここでは、余白やグルーピングなどの手法を学び、レイアウトの基本原則をさらに深めていきましょう。

メリハリを意識する

レイアウトは画面全体に文字や図版を配置するものではなく、必ず周囲に余白を設ける必要があります。

文字や図版の占める割合を高く、余白を少なくすると、情報量が多く引き締った印象のレイアウトになり、余白を広めに取っておくと、ゆったりと見せるレイアウトになります。

どの程度の余白にするかは、扱う情報やテーマに応じて検討をしていきます。

上下左右の余白の範囲や文字や図版を配置するための根拠となるものが基本フォーマットやグリッドシステムですが、どのページでも要素が画面全体に配置されていると単調な印象になり、面白みのないレイアウトになってしまいます。

ページごとに画面の中で変化をつけるためには、基本フォーマットやグリッドに沿いつつ、要素の配置に粗密の差をつけるようにします。文字や図版を左右に振り分けたり、上下の余白に大きな差を設けるなどのメリハリをつけると、統一したフォーマットの中でも飽きのこないレイアウトで見せることができます。また、優先度の高い情報の周囲に十分な余白を設けることで、目線を誘導して注意を引くことにも利用できます。

余白


画面に対して文字や図版が占める範囲は70〜80%程度にしておくと安定して見せることができます。余白は上下左右が均等である必要はなく、上側を広く、下側を狭くしたり、その逆で見せて構図を変化させるのもいいでしょう
文字や図版の占める範囲を80%前後にすると、情報量が多く全体に引き締った印象に、文字や図版を70%前後に収めるようにすると、全体にゆったりとした印象になりますので、どのように見せたいかに応じてフォーマットを決めるようにしましょう

画面の粗密

左) 基本フォーマットに則って要素を配置していくことは大前提となりますが、画面の中を文字や図版が埋めつくしていると単調で面白みに欠ける印象になってしまう場合があります
右) 余白を設計した上で、文字や図版の要素を左右に振ったり、上下のいずれかに余裕を持たせて配置をすると、画面の中に密度の変化とリズム感のあるレイアウトにできます

情報の優先度

左) 文字要素は伝えたい優先度に応じてサイズに差をつけて、重要なものほど大きく扱うことが基本ですが、サイズの変化だけでは十分な効果を果たさない場合があります
右) 優先度の高い情報は大きくし、太めの書体にすることがセオリーですが、それだけではなく、周囲から独立させて扱うことで、より自然と目に入っていくようになります

揃える軸を考える

レイアウトは全体の基本となるマージンやグリッドを設計して、文字や図版をその基準に揃えながら配置することで、情報を意図した通りに見せるとともに、安定した印象を与えることができるようになります。

文字や図版はマージンに対して左揃え、中央揃え、右揃えという単純な軸で揃えるだけではなく、細分化したグリッドから複数の軸を設定して揃えることで、複雑であっても規則性を持ったレイアウトが可能になります。

また、一見すると基準が見えないようなレイアウトでも、配置された要素の延長線上や交点が一定の基準に沿うようにしておくと、フリーレイアウトのように変化を持たせながらも、見えない基準に則したレイアウトで構成されていることがわかります。

ただし、すべてがこの基準から外れてはいけないわけではなく、あくまでガイドラインですので、ワンポイントで注意を引きつけたいものは、あえてこの基準から外してレイアウトをすることもあります。

見えるラインと見えないライン

マージンやグリッドに合わせて右揃えや左揃えにするのはもっともわかりやすいラインで、要素を揃える場合の大前提となります。細分化したグリッドの中から、一定のルールに則って揃えることもあります
タイトルと本文、図版はマージンの上下左右で揃えることで、要素が置かれていないところでも見えないマージンのラインがわかり、本文も上下のアキが均等になるラインで揃っていることがわかります

文字と図版を紐付ける

整列は一定の基準に基づいて文字や図版を配置するもので、揃える基準は上下左右のいずれかにするのが基本です。中央揃えもわかりやすい基準ではありますが、単調に見えたり本来伝えたい情報が不揃いになることがあります
余角版の写真にキャプションをつける場合は、写真の上下左右いずれかに揃えるだけですが、切り抜きの写真の場合は、絵柄の重心や設置面などを基準にするといいでしょう

ラインから外す

マージンやグリッドを基準に要素を揃えて配置することがレイアウトの基本ですが、ワンポイントで見せたいもの、目立たせたい要素などは、あえてこの基準から外してレイアウトをするのも効果的です
ワンポイントで目立たせたいものは、グリッドや基本のラインから外すことで、異質な印象を持たせて、結果的に注視するようになる効果があります。あくまでワンポイントなので、全体は規則性を持っていることが大切です

情報のグルーピングを考える

情報を整理して誤解を招かないように見せるのがレイアウトの大切な役割のひとつです。そのために情報を整理し、重要度に応じた優先順位を付け、内容を構造化する準備をしておきます。この準備が整ったら、画面上で視覚的に具体化するのがレイアウトの作業となります。タイトルや諸条件などを構造化して、ひとつのまとまりを持たせることがグルーピングで、複数のグループで共通となる要素は同じ見せ方をしておく必要があります。

文字や図版の都合で同じグループをまったく同じ形状で見せられないという場合でも、要素の持つ構造や条件を揃えておくことで、同じグループに属する情報であると伝えることは可能です。グルーピングをするということは、要素ごとに差別化をするということで、ひとつのグループであることを明確にするために囲みを用いたり、グループ同士の違いが明確になるように、余白をうまく使って見せるというのが基本となります。なお、囲みや余白は必ずしもすべての角が直角となる矩形であったり、グリッドに則していない場合もあります。

共通要素の見せ方

レイアウトは複数のページを作成することを前提に、基本骨格を設計するようにします。マージンや段組み、ページ情報のようにすべてのページで必要となる共通の要素を配置する大枠を決めて、どのページでも共通した印象を持つようにするが基本フォーマットです
それぞれのグループで同じ階層にあるものは同じ扱いをして見せることが前提となります。ただし、グループ同士がまったく同じものの繰り返しで単調になってしまうのを避けたい場合には、レイアウトの動きで変化を持たせるといいでしょう

グループ化と差別化

複数の情報をわかりやすく伝えるためのもっとも簡単な方法は、グループであることが明確になるように区分けをすることです。本文とは異なる構造を持つものは囲みで差別化したり、余白を設けるなどして明示的に違いを見せるようにしましょう
情報量が多く、個別に囲むには余白が少な過ぎるという場合には、グループを無理に囲む必要はなく、あえて不定形な囲みで区分けするのも有効です。文字と図版が1つのブロックであるとわかることが重要なので、囲みが水平垂直である必要もありません

教えてくれたのは…

島﨑 肇則さん
書店員、編集プロダクションを経て、現在フリーランスに。おもにデザイン・DTP関連の書籍・雑誌で、レイアウトや文字組みのほか、カラーマネジメントなどの解説を中心に執筆・編集を行う。

Text:小泉森弥
※本記事は「Web Designing 2024年2月号」の記事を一部抜粋・再編集して掲載しています。

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