「人に寄り添ったCMS」は、どのようにして誕生したのか? 現場の理想を詰め込んだ「Orizm」の真価

既存のCMSでは対応できないニーズをカバーするため、現場のノウハウと技術力を武器に理想を詰め込んで開発された、ちょっと株式会社のWebサイト構築プラットフォーム「Orizm(オリズン)」。そのユニークな開発思想や注目の機能群について、同社代表取締役社長の小島芳樹さんに聞きました。

目次

現場の必要性から誕生、「人に寄り添う」を目指したモダンなCMS

──Orizmを開発された背景にはどのような課題があったのでしょうか?

小島芳樹(以下、同)  当社は2019年の創業以来、一般的なWeb サイト制作を手がけてきましたが、2021年頃からは他社との差別化を図るため、モダンアーキテクチャに特化したフロントエンド開発に注力してきました。その中で「microCMS」や「Contentful」といったヘッドレスCMS、さらに「Next.js」やデプロイ/ホスティング基盤の「Vercel」を活用したサイト制作が増えていったのです。

しかし、より大規模なサイト開発のニーズが高まる中、既存のCMSだけでは対応しきれない場面が徐々に出てきました。特にNext.js やVercel は新しい技術であるため、これに適した大規模サイト向けCMSがなかなか見つからなかったのです。

そこで、自分たちでつくるしかないと考え、理想の形を追求して開発したのが「Orizm」です。Next.jsの強みである高速表示や高いセキュリティ性を活かしながら、更新が容易で大量のページ管理も可能であることが特徴です。

ちょっと株式会社・代表取締役の小島芳樹さん。会社員としてWebデザイン・ディレクション・事業開発の仕事に携わる傍ら、勉強会や技術者向けコミュニティを主催。2018年5月に独立し、2019年4月ちょっと株式会社設立

──お客様からはどんな理由でOrizmが選ばれているのですか?

現在使用中のCMSに対して不満や不安をお持ちだったり、Webサイトをもっと効果的にビジネス活用したいと考えたりしているお客様に、選択肢のひとつとして提示しています。

昨今はWeb サイトへの不正アクセスや情報漏洩が度々報じられており、特に上場企業のお客様からはセキュリティ確保への要望が非常に強くなっています。また、SEOの強化や回遊性の向上、離脱防止といったビジネス課題に対して、Next.jsの高速表示に注目し、それにマッチするCMSとしてOrizmが選ばれるケースも増えています。

さらに、従来のヘッドレスCMSでは扱いにくかった大規模サイトの保守・運用や、管理画面の柔軟なカスタマイズを求める声も多く、そうしたニーズにも応えられる点をご評価いただいています。

──それらの課題を、御社ではどのように解決されてきたのでしょうか?

これまでのソフトウェア開発は、「システムに人が合わせる」発想が多かったように思います。しかし、大規模な組織や複雑な業務を既存の仕組みに当てはめるのは困難です。かといって、カスタマイズを重ね過ぎれば保守が難しくなります。何より、お客様の組織や業務自体を変えることは現実的ではありません。

そこで私たちは、従来とは逆のアプローチを採りました。つまり、「人に寄り添うシステム」を目指し、カスタマイズの柔軟性と開発効率の高さの両立を前提にしたCMSです。その結果、お客様の業務や組織構造に合わせて、プラモデルのようにパーツを組み替えたり、機能を追加したりするなど、ニーズに応じて効率的な開発ができるプラットフォームとしてOrizmが誕生したのです。

顧客の運用・組織体制に寄り添う「Orizm」の注目機能

──Orizmの特徴的な機能について具体的にご紹介いただけますでしょうか?

はい。まずOrizmの一番の特徴は、「Next.jsVercel」というモダンなアーキテクチャを基盤に、その強みを最大限に引き出すCMSであることです。大規模サイトでも表示が非常に高速で、リニューアルによってPV増加や検索順位向上などSEO面で実績を挙げた例も多数あります。改修やパーツの再利用が容易な仕組みであるため、開発者の生産性向上にも貢献します。

Next.jsは最近ユーザーが増えてコミュニティも活発化しており、開発者にとって心強い環境が整ってきています。また、VercelはGitHubとの連動でコミットごとにテスト環境を自動構築できるため、確認してほしいタイミングでデプロイすれば実際に動作する状態を共有可能で、そこに直接コメントを書き込める機能もあります。つまり、非常にスピード感のある開発が可能になるのです。

Orizmでは、モダンかつ合理的なクラウドネイティブ開発基盤「Next.js+Vercel」の強みを最大限に活用。構築から公開、運用までを一気通貫で支援し、高速かつ柔軟なWebサイト開発を実現します

2つ目は、実際の画面上でコンテンツを編集できる独自の「デザインエディター」です。ブロックを組み合わせるだけの直感的な操作性によって、HTML不要でパーツの配置やデザイン変更、テキスト編集、画像の差し替えが可能です。これにより、いわゆる“固定ページ”の編集にかかる手間と時間を大幅に削減でき、内製化にも貢献します。

見出し追加、テーブル挿入、ドラッグ&ドロップによる移動など、見たまま編集が可能な「デザインエディター」。内製化による運用コスト削減効果も期待できます

3つ目は、「カスタムデータベース」です。データベースを効率的に構築できる機能に加え、ユーザー向け入力画面のUIも柔軟にカスタマイズすることが可能です。

例えば数値入力なら、テキスト欄、プルダウン、スライダーなどから選択でき、項目の意味や用途に応じて設定することで、ユーザーにとって直感的に使いやすいUIを追求できるのです。

堅くなりがちなデータベース入力画面も、自由自在にカスタマイズ可能。マニュアル不要の直感操作で、Web担当者に寄り添った開発を実現します

4つ目は、デザインエディター機能をフォーム作成に特化させた「フォームエディター」です。Web担当者が用途に応じて自分でフォームを作成・運用できるため、セミナー申込、資料ダウンロード、アンケートなど、ビジネスやマーケティングでのWeb 活用の幅が大きく広がります。

Web担当者が思いどおりの入力フォームを作成・運用し、Webサイトを情報発信にとどまらないビジネスツールへと進化させます

最後に、複数の運営主体を統括するような組織構造に対応する「マルチテナント機能」です。例えばフランチャイズチェーン運営会社なら、各店独自のニュースを店舗のアカウントで更新でき、チェーン全体に関係するニュースは本部のアカウントが一括更新できる、といった仕組みを構築できます。1つの企業内で部署ごとに編集可能な項目を制限するなど、複雑な管理者権限の設定も可能です。

支社・支店・フランチャイズなど、総合的な管理と小回りの効いた現場の運用を両立する仕組みを構築できる「マルチテナント機能」

OrizmがAI社会のハブになる未来へ

──今後のOrizmについて、どのような展開をお考えですか?

ひとつは、先ほどお話しした「人に寄り添うシステム」をさらに進化させ、柔軟性と使いやすさを両立していくことです。開発はどうしても人手がかかるものですが、生成AIの進化によってこの1〜2年は業界的にも「システムが人の動きに合わせる」方向に転換しつつあると感じています。

またコンテンツの面でも、マーケティングやアクセシビリティの観点からユーザー一人ひとりに最適化した画面をリアルタイムで生成することが現実味を帯びてきています。ただ、そのベースには構造化されたデータやサイト運用実績の蓄積がなくてはなりません。私は、Orizmがそのハブとして機能する未来を思い描いています。技術を活用し、世の中のビジネスにどう関わっていくかがOrizmのこれからの挑戦です。

もう一つは、可能な限り自由な表現を可能にすることです。デザイナーが「デザインにこだわりたい」「お客様の要望に応えたい」と考えた要素が、実装段階で「仕様だから」と見送られるケースは少なくないと思います。しかし、今は仕様の範囲内だけで制作していては差別化が難しくなっています。

私たちは受託開発会社としてデザイナーの要望に真摯に向き合い、高い要求に応えられるCMSを提供していきたいですし、それをもっと多くの開発現場で実現してほしいと考えています。それによって制作業界をもう1歩2歩、前進させる力になればと願っています。

Orizm導入事例

SOMPOケア株式会社



運用改善と応募数増加を目指した 大規模サイトのフルリニューアル
SOMPOケア株式会社では、全国約1,000事業所、常時約2,000件の求人を掲載する採用サイトを、Orizmで全面リニューアルしました。同社の旧サイトはレガシー環境による運用面の制約が大きく、担当者の負担も課題だったといいます。リニューアルでは表示速度とセキュリティが向上しただけでなく、デザインエディターにより固定ページの内製が可能になり、運用負荷を大幅に軽減。担当者がスピード感を持って運用できる仕組みが整いました。課題解決に真摯に向き合うちょっと社の姿勢と、Orizmの強みが生んだ成果を聞きました。
<記事はこちら>

株式会社NEW FOLK



技術力があればあるほど、自由度が増す エンジニア目線の使用感と可能性
クリエイティブエージェンシーである株式会社NEW FOLKは、株式会社CanvasのコーポレートサイトリニューアルにOrizmを採用しました。ヘッドレスCMSを徐々に制作に取り入れていた同社は、フルスクラッチに近い感覚で扱えるOrizmの柔軟性に注目。さらに、フロントエンド開発で使用するアニメーションライブラリとの高い親和性も採用の決め手となりました。同社フロントエンドエンジニアの松村太樹さんは「技術力があるほど自由に扱える」と、その使い勝手を絶賛。今回は、開発者視点でのOrizmの使用感や成果を聞きました。
<記事はこちら>

取材・文:笠井美史乃、写真:山田秀隆、企画協力:ちょっと株式会社
※本記事は「Web Designing 2025年10月号」の内容を一部抜粋・再編集して構成しています。

  • URLをコピーしました!
目次