【徹底議論|前編】Figmaはデザイナーの働き方をどう変えたのか? 3社の事例から見る共同制作の進化

制作の現場で、広く使われるようになったFigma。特にアプリ・サービス開発を業務の中心に据える事業会社の現場では、その活用が一気に進んでいます。Figmaを導入するメリットはどこにあるのか、Figmaはどう制作業務を変えるのか。

ここではFigmaの活用を積極的に進めているGoodpatchの石井克尚さん、フェンリルの坪内陽佑さん、エイチームホールディングスの綿貫佳祐さんの3人に議論をしていただきました(「Web Designing 2025年8月号」より抜粋)。

目次

プロフィール

石井克尚 さん

事業会社のエンジニアを経て、2014年Goodpatchに入社。iOSデベロッパー、UIデザイナー、PdM、新規事業担当などを務め、2024年にゼネラルマネージャーに、2025年6月執行役員に就任。Design Division・Goodpatch Anywhere Divisionを管掌。
https://goodpatch.com/

坪内陽佑 さん

ダブルクリック、サイバー・コミュニケーションズを経て、フェンリルに入社。現在は執行役員兼デザインセンター長として、共同開発事業の戦略立案・実行およびデザイン部門のマネジメントを担当。HCD-Net認定人間中心設計専門家。
https://www.fenrir-inc.com/

綿貫佳祐 さん

エイチームホールディングス デザイナー。部長として顧客体験の向上に寄与しつつ、スペシャリストとして社内の技術をリード。
2017年に新卒でエイチームホールディングス(旧: エイチーム)に入社。2023年2月に初心者向けのFigma書籍『Figmaデザイン入門』(技術評論社)を上梓。
https://www.a-tm.co.jp/

Figmaをどう利用しているのか?

──早速ですが、まずは自己紹介と、会社におけるFigmaの利用状況について、簡単にご紹介いただけますでしょうか。

石井克尚(以下、石井) Goodpatchの石井です。社内のデザイン組織のマネジメントを担当しています。弊社は自社プロダクトとクライアントワークの両方でFigmaを活用しています。

「Sketch」や「Miro」などを利用していた時期もありましたが、現在はデザイナー職、エンジニア職をはじめ、ほぼすべてのメンバーがFigmaを使ってプロジェクトを進めています。

ただ、オンラインホワイトボードツールについては、FigJamではなく自社プロダクトの「Strap」を利用することが多いです。Goodpatchはもともと「チームでのものづくり」を重視する会社ということもあって、積極的にFigmaを利用しています。

坪内陽佑(以下、坪内) フェンリルのデザインセンター長を務めている坪内です。現在はデザイン部門のマネジメントに加え、共同開発事業の戦略立案も担当しています。

弊社にはおよそ600名ほどのメンバーがいるのですが、現状、デザイナーはフルシートでFigmaを利用し、その他のメンバーはほぼ全員がFigJamを利用しています。Figma導入の効果をひとことで表すなら、「これまでにないレベルの共同制作が可能になった」といったところでしょうか。

綿貫佳祐(以下、綿貫 エイチームホールディングスの綿貫です。グループ会社であるQiitaとエイチームライフデザインを兼務して、マネジメントとスペシャリストの両方の仕事をしています。

とりわけQiitaはエンジニア文化が強い会社なのですが、近年は特にデザインチームの充実に力を入れており、そこでFigmaが大きな役割を果たしてくれています。

Figmaの活用については、個人ではオタク的に使い込みつつ(笑)、社内への導入と活用を進めています。現状、全員が何らかのシートを持つというところまで進んできました。企画からデザイン制作まで幅広く使いこなしている組織もあれば、まだまだこれからという組織までさまざまではあります。

Figma導入で社内がどう変わったか?

──ここからは、Figmaを使うことで現場にどんな変化が起きたか、という点についてうかがいたいと思います。まずは、日頃活用されている上での感想をお話しいただけますか?

石井 Figmaを使うようになって、誰でもアクセスできる場所で、同じ画面を見ながら作業ができるようになったこと、中でも「お互いのカーソルの動きが見える」ことのメリットが非常に大きいと感じています。

これまでもチームで仕事をする際には、正確なコミュニケーションが欠かせないと考えてきましたが、Figmaを使うようになって、制作中の画面を共有して、カーソルで指し示しながら、「ここの何が問題なのか」「ここをどうしたいのか」といった対話ができるようになりました。

ちょっとしたことのように感じますが、実は、コミュニケーションコストの低減に大きく寄与する重要なポイントだと思います。

坪内 フェンリルでもFigmaを導入して以降、工程管理がスムーズになるなど、大幅な業務の効率化を図ることができました。ただ、それよりも大きいのは、企画の段階からプランナーやデザイナー、エンジニアが一緒に作業ができるようになったことです。

これによって「何をつくるか」「どうつくるか」という点について企画の意図や狙いを共有できるようになり、制作のあらゆる面が進歩したと感じています。

綿貫 実はいま、お二人がお話されたのと同じようなことを話そうと思っていたのですが、せっかくなので、少し違う話をしてみたいと思います。

事業会社において、特にデザイナーが少ない場合、どこかで「デザイナーはセンスで仕事をしている」といったような印象を持たれることがあります。実際にはいろいろな声に耳を傾け、ロジックを組み、時に苦しみながらデザインをしているにも関わらず、です。

それがFigmaを使うようになって、誤解が解けた面があります。「こんなに考えていたんだ」といった具合に、理解をしてもらえる度合いが深まりました。

──ありがとうございます。いろいろと興味深いキーワードが出ましたが、まずは綿貫さんのお話を引き継ぎ、「デザイナーの働き方」について話を進めたいと思います。まず、Goodpatchではどんな変化がありましたか?

石井 作業環境がオープンになったことは、デザイナーにとてもよい影響を与えていると感じています。これまではデザイナーの作業が「ブラックボックス化」しがちで、ある程度作業が進むまで、彼らがどんな作業をしているのか、もちろん報告はあるにせよ、正確なところまではわかりませんでした。

それが今は、Figmaを通じていつでも作業の様子を確認できます。そのことは単に効率の話にとどまらず、デザインの質にもよい影響が及んでいると感じます。

坪内 意図を共有しながらデザインを進められること、さらには「何をつくるか」「どうつくるか」のズレを早期に軌道修正できるといった点が、質の部分にも効いているのでしょうね。

ただ、デザイナーによっては、作業の途上段階の様子を見られるのを嫌がる人もいます。ちゃんとつくり込んでから評価してほしい、と。その気持ちはよくわかります。

綿貫 若い世代のクリエイターは、そうしたオープンな環境での制作に対して、違和感を抱いていないように感じます。Figmaでのコラボレーション作業を考えるとそれはいいことなのですが、一方で、デザイナーにとっては、1人で考え込む時間も必要ではないかとも思うのですが、その辺りはどうされていますか?

石井 「デザイナーの成長」という視点から考えると、時に1人で抱え込んで、1人で解決策を見つけ出すという経験も必要なのだろうと思います。ですので、おそらく皆さんも同様だと思うのですが、Figmaのワークスペースの中に個人の作業スペースを設けて、「作業中は邪魔しないように」といったような配慮をすることも必要でしょうね。

綿貫 デザイナー同士だと阿吽の呼吸で、そうした配慮ができると思うのですが、Figmaの場合は、エンジニアや営業担当、時にクライアントが覗きに来ることもありますよね? そういう場合の配慮はされていますか?

石井 その点はあまり気にしていません。多くの場合、クライアントを含め、関係者すべてに閲覧シートを提供しています。「早い段階から多様な意見を反映できる」というメリットを優先して考えているからです。

例えば、SaaSのプロジェクトを進めているようなケースでは、クライアントの営業の方の声に圧倒的な価値があります。だからデザイナーには、意見を前向きに取り入れよう、と話しています。

坪内 フェンリルでは、多くのプロジェクトにおいて、デザイナーやエンジニアが制作を行う場としてFigmaを利用し、作成したデザインの共有や報告を行う場としてはFigJamを利用するというように、両者を使い分けています。

後編に続く>

取材・文 : 小泉森弥 写真 : 秋山枝穂 イラスト:大橋絵里奈(クックドゥードゥードゥー)
※本記事は「Web Designing 2025年8月号」に掲載された内容を一部再構成して公開しています。

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