《連載:Webクリエイターの“偏愛”仕事道具 Vol.1》ワヴデザイン・松本龍彦|第6話 「消費されない」時間を刻むカレンダー

仕事で使う道具には、その人の思考や美意識、そして働き方が自然と表れます。本企画では、日々の仕事を支える「道具」を入り口に、Webクリエイターのスタイルをひもといていきます。
初回に登場するのは、ワヴデザインCEOでクリエイティブディレクターの松本龍彦さん。選び抜かれた道具の背景から、いまの仕事観に迫ります。
プロフィール

松本 龍彦 さん
Wab Design INC. CEO / Creative Director
ショップスタッフ、デザインプロダクション、アパレルのグラフィックデザイナーを経て2003年に独立。2006年ワヴデザイン株式会社を設立。衣食住の分野に豊富な知識と実績をもつ。ストラテジー、デジタル・アナログを問わないクリエイティブ、ビジネスとのバランスの取れたプランニングを得意とする。主な受賞にグッドデザイン賞など。
https://wab.cc
松本さんの仕事道具⑥|DANESE TIMOR

TIMOR
発売:DANESE
価格:36,300円(編集部調べ)
URL:https://www.webo-kobe.com/items/stationary/danese01/danese.html
「消費されない」カレンダーとの出会い
松本さんが仕事場で使っているのは、日付と曜日が書かれたプレートを自分の手で回して切り替える、万年カレンダー「TIMOR」です。1年で使い切って捨てるのではなく、何十年も使い続けられる。その仕組み自体に惹かれたといいます。
「アナログな構造ですけど、だからこそ“消費されない道具”だなと思いました」(松本)
実はこのカレンダー、フリマサイトで「割れあり」のジャンク品として出品されていたものを、5,000円ほどで譲り受けたそうです。本来、新品であれば3万円前後する名作プロダクトです。
「名品を中古で手に入れて、手入れしながら使う。そういう付き合い方も、道具としては健全だと思っています」(松本)
デジタル全盛だからこそ、アナログで「時間」を掴む
仕事のスケジュール管理は、分刻みでデジタルツールを使っています。それでも、ふとした瞬間に「今日は何日で、何曜日なのか」を直感的に知りたくなることがあるといいます。
「iPhoneを見れば一瞬なんですけど、部屋の中で視界に入る場所にあるほうが、情報として自然に頭に入ってくるんですよね」(松本)

毎朝、その日の日付にプレートを合わせる。その小さな動作が、日々の心地よさを生んでいるそうです。
「仕事モードへの切り替えって、本来はグラデーションだと思っています。でも、この作業を挟むことで、“今日が始まった”という実感が生まれる。思考が整っていく感覚があります」(松本)
「普遍的であること」が証明する使いやすさ
なぜ、何十年も前にデザインされたものが、今なお世界中で使われ続けているのか。その理由は、見た目の良さに加え、使い勝手の良さにあると松本さんは考えています。
「主観的な好みを超えて、何世代にもわたって支持されている。その事実自体が、機能美の証明だと思います」(松本)
イタリアのダネーゼ、スイスのヴィトラ、日本の無印良品。特定の国やブランドに偏ることなく、世界中の「良いもの」を自分なりの基準で選ぶ。それぞれの背景や文化を楽しみながら、自分の空間に共生させていく。
「道具を選ぶときは、そのバランス感覚を、なんとなく大切にしています」(松本)
取材・文:小平淳一
