
「大企業でもスタートアップ並みの開発スピードに」アクセンチュア・ゆめみが語るFigma MCPサーバーで変わるプロダクト開発
Figma MCPサーバーの登場により、Figmaで作成したデザインをAIで高精度なコードに変換できるようになりました。これは単に開発スピードが速くなるという話ではありません。デザインや実装のあり方、求められる役割に大きな変化をもたらします。
書籍『試して学ぶ Figma MCPサーバー』(マイナビ出版)を執筆したアクセンチュア株式会社 ソング本部 ゆめみ・インタラクションデザイナーの竹田学さん、プロダクトエンジニアの天辰一希さんと八木田裕伍さん、アプリエンジニアの高橋秀明さん、そしてマネジャーの工藤元気さんに、Figma MCPサーバー活用のメリットと、急速に進むAI時代にどう向き合えばよいのか、話をうかがいました。

目次
AIによるデザインの高精度なコード化が実現
––––MCPは、どのようなことができるものなのでしょうか。
八木田裕伍(以下、八木田) MCP(Model Context Protocol)は、AI(LLM)が外部のツールやデータと連携するためのプロトコル(通信規約)です。MCPを介することで、AIがツールやデータを呼び出して利用できます。
Figma MCPサーバーでは、AIでFigmaのデザインをコード化したり、逆にコードからデザインを起こしたりできます。

––––ゆめみでは、どのようなきっかけでFigma MCPサーバーを使い始めたのでしょうか。
工藤元気(以下、工藤) ゆめみには研究意欲の高いエンジニアが多いので、MCPの技術が出た当初から「これはデザインやデジタルプロダクト開発すべてのレイヤーで使われることになるだろう」と考え、研究し始めました。
また、ゆめみはFigmaと国内初のパートナー契約を結んでいる関係もあり、2025年6月にFigma公式のMCPが出た際には、天辰が「これはプロダクト開発のプロセスが変わるものだから社をあげて研究するべきだ」とラボを立ち上げました。そのラボでは、Figma MCPだけではなく、Figmaに関連するAIやワークフローに影響を与える周辺技術の研究にも取り組んでいます。
天辰一希(以下、天辰) Figmaはどんどん新しい機能が出てくるので、ラボではそれらをどう活かせるか、新しい技術によって何が変わるのかを研究しています。
もともとAIはデータベースなど裏側の仕組みをつくることはとても得意ですが、Figmaのデザインを再現するのは苦手でした。しかしFigma MCPを活用することで、高い精度で再現できるようになりそうだと考え、注目するに至りました。

––––そうした研究成果の一つとして、竹田さん、天辰さん、高橋さん、八木田さんが執筆し、工藤さんがプロジェクトマネジメントを手がけた書籍『試して学ぶ Figma MCPサーバー』が先日発売されました。同著では、Figma MCPサーバーを使いFigmaで作成したデザインをコード化する方法を主に紹介されていますが、コード化の精度はかなり高いのでしょうか。
天辰 生成後に人間による手直しは必要ですし、それがゼロになることはないと思いますが、日々進化してかなり精度が高くなっています。
Figma MCPでは、渡す情報量(コンテキスト)を少なくなるように調整することで、コード生成の精度を向上させています。どういうことかと言いますと、AIが一度に考えられる頭脳の大きさ(コンテキスト量)には限界があり、それを超えるとハルシネーションが起きやすくなるんです。そのため、Figma MCPサーバーに渡すコンテキストを抑えれば、よりデザインに近いコードを生成できるようになります。

––––生成されるコードの精度を高めるために、Figmaのデザイン作成時に気を付けるべき点はありますか。
竹田学(以下、竹田) 情報のコンテキストが多すぎたり、きちんと構造化しないまま渡さないようにする必要はありますが、それはエンジニアに渡す場合でも気をつけるべき観点は同じです。
高橋秀明(以下、高橋) ただ、以前はオートレイアウトや余白の指定がきちんとされなくても、エンジニアがデザインを見ながら実装していました。
天辰 しかしFigma MCPを使ってAIを活用するためには、そうしたミスや抜けがなくデザインをつくることが重要になります。
開発スピードの劇的な向上とそのメリット
––––Figma MCPでAIを活用することによって、デザインや実装工程にどのような変化が起きましたか?
八木田 精度の高いコードを生成できるようになったことで、実装コストが大幅に抑えられるようになりました。
工藤 MCPを深く理解し、AIエージェントのルールやSkillsをみっちりチューニングしているという前提ではありますが、従来なら3人で1日がかりだった作業を、Figma MCPを使えば5分で生成できるようになりました。それだけ工数が短縮できると、すべての工程にゆとりが生まれます。

––––Figma MCPの活用が、クライアントやサービスを利用するユーザーにメリットとなる点はありますか。
竹田 開発スピードが速くなり、新しいアイデアの追加やユーザーからのフィードバックの反映がスピーディーに行えるので、サービスに対するユーザーの満足度が上がると思います。
また、大企業はこれまで規模の大きさゆえに、スタートアップのような速度で開発をするのは難しい面がありました。
しかしFigma MCPを使うことで、大企業もスタートアップ並みのスピードで開発し、変化の速い世の中についていく耐久性のある組織づくりができるようになると思います。

工藤 企業が提供するサービスなどの改善スピードが上がり、ユーザー体験が向上すれば、ブランドリフトも期待できるでしょう。単純にプロダクトがよくなる以上のメリットが生まれるのではないかと考えています。
また、オフショア企業や自社の子会社にIT部門があるような大企業で導入すると、 Figma MCPでソースコードの品質の幅やブレを減らすことができるので、コードの検品負荷も減らせます。大企業こそ、メリットが大きいのではないでしょうか。
八木田 小さな組織でも、より速くスプリントを回せるので、改善スピードはさらに上がります。
––––AIによる実装が浸透していくと、デザイナーやエンジニアの仕事にはどのような変化が起きると考えられますか。
天辰 AIによって開発スピードが速くなるので、たとえば世の中ではSaaSのサービスを契約するよりも自社でAIを使ってつくったプロダクトのほうが安い、といった見方もあります。そうしてAIでつくられた同じような品質のものが世の中に溢れるようになると、あらためてデザインが重視されるようになるのではないかと思っています。
その結果、よいデザインができるデザイナーやデザインを忠実に再現できるエンジニアの力が求められるようになるでしょう。
工藤 「もうFigmaなどのオーサリングツールは不要で、プロンプトで生成すればよい」という極端な意見も一部で出ています。しかし、すべてがAIに置き換わることは、現状はあり得ないと思っています。
プロトタイプなどはそれでよいですが、企業がブランドを統一してファンを創出し、長い関係を構築する目的においては、やはりデザインの力が求められます。開発速度が上がったことで生まれた時間を、デザインの議論や体験向上に使っていくことが大事になってきます。

AI時代にデザインの役割はどう変わるのか?
––––Figma MCPには、デザインからコードを生成する以外の活用方法もありますか。
天辰 エンジニアが実装する場合でも、デザイナーがFigmaのデザインを一度Figma MCPを介してAIで実装してみることで、実装しやすいデザインになっているかチェックできます。
構造の不備や指定漏れなどがあるときちんと再現されないので修正するべき箇所を見つけられますし、それにより後のエンジニアとのコミュニケーションコストを下げることができます。現在、支援している企業様向けに、デザイナーの新人教育に活用するために、そうしたチェックツールをつくる取り組みをしているところです。
また、書籍『試して学ぶ Figma MCPサーバー』では、MCP以外にもFigmaの提供しているAI機能全般に触れています。その中の一つとして、自然言語でプロトタイプなどを作成できるFigma Makeを紹介しています。
たとえばクライアントとプロダクト開発をする工程の初期段階で、従来は企画書やFigmaによる静的なデザインで提案していたものを、Figma Makeで実装したもので見せると関係者が共通認識を持って合意形成しやすくなります。また、そのプロトタイプがよいとなったら、Figma MakeのリソースからFigma MCPを介してAIで実装することもできます。

––––開発工数が削減されるのはもちろん、クライアント企業の満足度も高くなりそうですね。
高橋 実際に、ゆめみと他社のどちらに依頼しようか悩んでいる企業様向けに、Figma Makeでプロダクトをつくって、そのコードをアプリ開発ツールのFlutterで書き上げたものを用意してプレゼンしたところ、それが評価されて受注が決まった案件がありました。開発時間は、3時間ほどでした。こうしたやり方は、これからスタンダードになっていくのではないかと思います。

––––Figma MCPやAIを活用することは、単に開発スピードが上がるだけでなく、ビジネスや組織運営などが大きく変わる話でもあるのですね。そうした情報が書かれた書籍について、見所をご紹介ください。
高橋 導入段階からしっかり解説してあるので、まだFigma MCPを触ったことのないデザイナーさんも使えるようになると思います。AI活用に踏み出せていないデザイナーの方にも、ぜひ読んでいただきたいです。
天辰 導入部分は初学者向けに書いていますが、中・上級者向けに、将来的にAIを活用したプロダクト開発でどう変わっていくのかについても書いています。Figma MCPに限らず、AIを活用してデザインや実装をするあらゆる方に読む価値があるものになったのではないかと思います。
八木田 ただFigma MCPの使い方を紹介するだけではなく、「プロダクト開発がどう変わるか」を主題に書きました。将来的にFigma MCPの仕様が変わったり、MCPに代わる新しい技術が出てきたりしても活きる考え方を書いています。
竹田 タイトルは「Figma MCPサーバー」としていますが、汎用性は高いですよね。AI時代における思考の仕方やプロセスの変化という、耐久性のある内容を目指しました。
工藤 エンジニアの方が読まれることが多いとは思いますが、読み終わったら次はデザイナーに、その次は企画の方にと社内で回し読みしてもらうことで、会社全体としてAIを活用するメリットや課題に気づくと思います。それにより、AI-Readyな会社になるきっかけになれれば嬉しいです。

書誌情報

■著作者名:アクセンチュア 竹田 学、 天辰 一希、 高橋 秀明、 八木田 裕伍、 Figma Japan株式会社(協力)
■書籍:3,388円
■電子版:3,388円
■B5変:192ページ
■ISBN:978-4-8399-90329
■発売日:2026年02月26日
■内容紹介
Figma MCPサーバーとAIで、プロダクト開発の現場を変える!
本書は、Figma MCPサーバーとAIを使いこなし、プロダクト開発の現場をアップデートするための実践的ガイドブックです。
Figma MCPサーバーの登場により、エンジニアとデザイナーの間にあった壁を取り払うことができるようになりました。
本書では、エンジニア向けにFigma MCPサーバーを使ったデザインとコードの連携を、デザイナー向けにはAIとの連携を見据えた成果物とコミュニケーション手段の活用方法を解説します。さらに、Figma AIと共創するプロトタイプ開発として、FigJamやFigma Makeを用いたアイデアを素早く形にする開発手法も紹介します。
エンジニアとデザイナーがそれぞれの強みを活かしながら、AIと共創する新しい時代のプロダクト開発を実践するための必読書です。
■目次
第1章 Figma プラットフォーム概要
第2章 Figma MCP サーバー活用ワークフロー
第3章 Figma MCP のためにデザイナーができること
第4章 Figma AI と共創する新しい時代のプロトタイプ開発
取材・文:平田順子、写真:黒田彰
あわせて読みたい


《特別対談》Figma AIで変わる開発の現場──Sho Kuwamotoとゆめみが語る、コラボレーションの現在地
11月5日に生成AIプラットフォーム「Weavy」を買収するなど、AI(人工知能)分野への投資を一段と加速させているFigma。急速に進化する機能をユーザーに届けることで、Fi…
あわせて読みたい


《特別対談》Figma CPO・山下祐樹に、necco inc.が“現場目線の本音”で迫る。新プロダクトの真意と、Figm…
現地時間2025年5月6日〜8日、米・サンフランシスコでFigmaの年次カンファレンス「Config 2025」が開催されました。Web制作のあり方を塗り替える4つの新ツールが発表され…
あわせて読みたい


《綿貫佳祐のFigma思考ラボ|Vol.6》Claude × Figma連携が切り開くデザインワークフローの新しい形。現…
Web制作に携わる人にとって、いまや日々の業務に欠かせない存在となったコラボレーションプラットフォーム「Figma」。一方で、「もっと使いこなしたい」「ほかの人はど…
あわせて読みたい


《綿貫佳祐のFigma思考ラボ|Vol.7》スロット機能で変わるコンポーネント設計。Figmaでも「レイアウトと…
Web制作に携わる人にとって、いまや日々の業務に欠かせない存在となったコラボレーションプラットフォーム「Figma」。一方で、「もっと使いこなしたい」「ほかの人はど…
