《Config 2026》「AIが実装を行い、クリエイターは創作の楽しさを取り戻す」Figma AI責任者・Weave創業者インタビュー

Figmaが2026年6月にサンフランシスコで開催した「Config 2026」では、Code layers、Figma Motion、Figma Weave workflowsなど6つの新機能が発表されました。速報記事に続いて、今回は注目のプロダクトを手がけた2人の開発者にへのインタビューをお届けします。FigmaのAIデザインディレクター、ギー・セイズ氏と、Weaveの共同創業者イタイ・シフ氏です。

大幅な進化を遂げた新機能は、デザイナーやエンジニアの日々の仕事をどう変えていくのか。そして「AIは人間の仕事を奪うのか、それとも広げるのか」という誰もが抱く問いに、Figmaがどう向き合っているのかを聞きました。

目次

第1部:ギー・セイズ氏(Figma AIデザインディレクター)に聞く

セイズ氏は、フォント制作を出発点にブランドデザイン、アニメーション、Flashを使ったWeb制作を経験してきました。いくつかの会社を立ち上げたり政府機関の顧問を務めたりした後、PinterestのAIチームを経て、2025年の初めにFigmaへ参画しています。

AIは単なる「機能」ではなく「素材」であり「道具」でもある

FigmaにとってのAIとは何かと尋ねると、セイズ氏は「素材(material)」という言葉を使いました。

「AIは単なる機能ではなく、人間の創造力を引き出す素材です。時間がかかる作業や、コードの知識がないといった技術的ハードルを埋めてくれる。表現の幅を広げ、学習コストをなくすことこそがAIの役割です」

今回の発表で特に印象的だったプロダクトについて尋ねると、セイズ氏は特定の機能ではなく、「すべてのツールをひとつのキャンバスに集約したこと」を挙げました。

「去年のConfigでもたくさんのプロダクトを発表しましたが、それぞれのツールに対応するたくさんのキャンバスがありました。今回もっともワクワクするポイントは、必要なツールすべてを使って協業できる場所が、ひとつのキャンバスに一元化されたことです。その共有スペースがあれば、ツールを選ぶ必要がない。すべてのツールがそこに揃っているんです」

コードもモーションも、同じ場所で

これまでは、デザイナーはFigmaで、エンジニアは開発環境でというように、別々の場所で仕事をしてきました。コードレイヤー機能によって、この2つが1つの場所に統合されます。この点についてセイズ氏は、次のように語りました。

「これからは、自分のデザインがコードとしてどう機能するかを、文脈の中で学べるようになるでしょう。抽象的にコードだけを学ぶより、自分のデザインとの関わりの中で学ぶ方が、ずっと理解が深まるはずです」

この統合の流れは、新機能として加わったFigma Motionにも表れています。セイズ氏自身、アニメーションの仕事に長く携わっていたこともあって、Figma Motionへの思い入れは強いようです。これまではFigmaでベースを作った後、別のツールでアニメーションを作り直す必要がありました。これからはFigmaの中で完結します。デザイン側で変更を加えれば、アニメーションにも即座に反映される仕組みで、ツールを切り替えるたびに生じていた品質低下や余計なミスを防ぐことができるといいます。

FigmaのAIデザインディレクター、ギー・セイズ氏

AIとの距離を分けるのは「好奇心」

AIが登場して繰り返し語られてきた問いについても、セイズ氏の率直な考えを聞くことができました。

「AIは初心者とプロフェッショナルの差を広げるのか、縮めるのか。それは、その人の好奇心次第です。プロが100倍良くなるわけでも、初心者が100倍良くなるわけでもない。AIを使って飛躍できるかどうかは、その人のマインドセット次第なんです」

今後さらに力を入れたい領域を尋ねると、セイズ氏はデザイナーの「意図や美意識」を理解する技術を挙げました。

「AIが人とどう関わるかという部分です。それは『テイスト』、つまり美意識や美的センスという考え方に関わってきます。Figmaが目指すのは、デザイナーの手間や苦労をできるだけ少なくすることです。それは、デザイナーよりも優れたAIをつくるという意味ではなく、デザイナーの意図や美意識を理解できるAIを目指しています」

何を「よいデザイン」とするかは、日本とイギリスでもまったく違ってくる。だからこそ難しい問題だとセイズ氏は言います。加えて、チームのデザインシステムに沿った形でAIが構築できるようにすることにも力を入れていきたいと語っていました。

主導権はデザイナーの手に戻ってくる

Configの参加者からの反響を尋ねると、セイズ氏はこんな話をしてくれました。

「ここ数年、人々は『AIがクリエイティブな作業を奪っていく』と考えていました。でも今回のFigmaの発表を受けて聞こえてくる声は逆です。『これでようやく、楽しい部分を自分たちがやれる』『コントロールを自分たちの手に取り戻せる』と。AIは実装を担ってくれます。作りたいものを作るのは私たち自身です。AIが得意とするのは『実現』であり、創造することではありません。今回のFigmaの発表がとてもポジティブに受け入れられているのは、創造性を私たちの手に取り戻したことへの期待の現れだと思います」

第2部:イタイ・シフ氏(Figma Weave共同創業者)に聞く

「Weave tools」は、複数のAIモデルを連携させ、画像や動画、VFXを生成できるワークフローツールです。プロンプトを入力するだけの一般的な生成AIツールとは違い、途中の工程を自分の手で組み立てられ、一度組んだワークフローは何度でも呼び出して再利用できます。もともとはスタートアップ「Weavy」が開発していたプロダクトでしたが、2025年11月にFigmaが買収して今の名前になりました。今回のConfigで、この技術が20以上のプリセットとしてFigmaのキャンバスに統合されたと発表されています。

専門用語だらけのツールへの違和感から

Figma Weave共同創業者であるイタイ・シフ氏には、VFXアーティストというクリエイターとしての背景があります。シフ氏に開発のきっかけを尋ねると、当時使っていたオープンソースのAIツールへの違和感をこう振り返りました。

「機械学習の専門家向けに作られたツールだったので、とにかくとても複雑でした。クリエイティブな仕事とは関係のない専門用語ばかりが並んでいました。そうしたツールと格闘している私を見て、共同創業者のジョナサンが『クリエイター向けに、もっといいものが作れるはず』と言ったんです」

開発を始めてからMVP(最小限の試作品)ができるまではわずか3ヶ月。イスラエルの大手企業で働く友人たちに見せたところ大きな反響があり、方向性が正しいと確信したそうです。そこから投資を受け、2年ほどでFigmaへの売却に至っています。

Weave tools 写真提供:Figma

あえて「手動」を手放さない

Weaveの特徴的な点は、多くの生成AIツールとは別のところに価値を置いていることです。

「プロンプトを入力し、結果を受け取る。これが一般的なAIツールの目指す方向ですよね。求めに応じて生成する力こそAIの持ち味ですから、当然だと思います。でも、私たちが目指したいのはそこじゃないんです」

その方針のために、Weaveでは、タイムラインやカラーグレーディング、クロップといった手動の調整ツールを豊富に用意していると、シフ氏は説明します。

「AIが提示したものに対して、私たちは簡単に満足できてしまいます。プロンプトを打ちこんでアウトプットを受け取り、納得して作業を終えることもできるんです。しかし、Weaveはそれだけでなく、制作工程を自分の手で動かせるツールを提供しています。手動でさまざまな調整ができるからこそ、クリエイターは制作物に『意図』を込めることができる。それこそがクリエイティヴには必要不可欠なんです」

長期的なビジョンについても、シフ氏は「人間の職人技を守りながら、それをAIで強化すること」だと語ります。AI任せにするのではなく、アーティストが主導権を握り、最大限のコントロールを持てるプラットフォームであり続けたいという考え方です。

Weaveの共同創業者イタイ・シフ氏

「ワークフロービルダー」という新しい職業

Weaveの登場でもっとも働き方が変わりそうな職種を尋ねると、シフ氏はこう答えました。

「正直、どの職種が一番変わるかはわかりません。ただ、いま私たちが目撃しているのは『ワークフロービルダー』という新しい職業の誕生です。複数のAIモデルを組み合わせて成果を出すことが急に必要になったのに、そのやり方をまだ誰も知りません。だから、技術志向の強いデザイナーやマーケター、動画編集者たちが、ワークフロービルダーになっていく。それでも彼らは変わらずクリエイターであり続けます。オーケストラの指揮者のような存在ですね。AIは既存の職業を脅かすというより、新しい職業を切り拓くものだと私は捉えています」

製品発表後の反響を尋ねると、シフ氏はこう明かしました。

「大げさに聞こえるかもしれませんが、『Weaveで人生が変わった』とよく言われるんです。映像制作のスキルを持っていなかった人が、自分の表現を発信できるようになった。それから、あまり満たされていなかったデザイナーや動画クリエイターが、企業向けのワークフロービルダーという新しい仕事を見つけたケースもあります」

おわりに

背景も専門も異なる2人ですが、その話には重なる部分がありました。セイズ氏は「好奇心のある人がAIから最も多くを引き出す」と語り、シフ氏は「ワークフロービルダーという新しい役割が生まれつつある」と語ります。どちらも、AIが仕事を代替するという話ではなく、人間が主体的に関わり続けることで新しい役割や表現の幅が生まれる、というポジティブな捉え方です。

デザインもコードも、モーションも生成AIの出力も、これからはすべてが同じキャンバス上で扱うことのできる「素材」になっていく。Config 2026で発表された一連の新機能は、人が創作の楽しみを取り戻すための、Figmaからのメッセージのように感じられます。

文:藤井亮一

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