
価値観の共有がカギ! ストーリーを共有する広告クリエイティブのつくり方
一貫したメッセージを持つ広告には、人を動かす強さがあります。多くの人がプロジェクトに関わる中、ブレないメッセージを発信するには?ランディングページ(LP)制作を例に考えます。
教えてくれたのは

- 高田 亮さん
- 株式会社アライバルクオリティー 執行役員/クリエイティブディレクター
ECやショッピングモール店舗のUI/UX改善を起点に創業。コーポレートコミュニケーション、サービス/アプリの開発、撮影、DTPなどを幅広く手掛ける。https://www.arrival-quality.com/
コト消費時代の企業広告
かつて、広告は商品の機能や新規性を訴求し、モノの消費を後押しするものでした。しかし現在、消費者の購買行動は共感や賛同から生まれる「コト消費」にシフトしています。広告には、商品・サービスや企業のメッセージを明確に表現し、消費者へ伝える役割が求められるようになりました。
制作者が担うのは、商品や企業から伝えるべきメッセージを導き出し、消費者へ向けてアウトプットするプロセスです。株式会社アライバルクオリティーでWebサイトのディレクション、コピーライティングなどを行う、クリエイティブディレクター 高田亮さんに、その考え方を聞きました。
【STORY】課題解決の最適解をデザインする
「売るためのストーリーづくり」とは
企業が事業を行えば、常に何かしらの売買が発生します。その形は、マーケティング手法やインターネットの発展によりどんどん変化しています。この環境の中、デザインにできることは何でしょうか?
株式会社アライバルクオリティーは、設立以来「世界に売るためのストーリーをデザインします。」というビジョンのもと、クリエイティブデザインとマーケティングデザインの2つを掛け合わせ、お客様の課題をデザイン面から解決することを事業としています。
「売るためのストーリー」とは、商品・サービスの本質、経営・販売方針、企業のミッションや歴史など、案件の背景にある情報を十分に理解し、その上に戦略を設計し、最適なアウトプットの形を考えることです。予算規模、既存のアセット(実店舗、運用中サービス、顧客層等)、社会状況やビジネス環境まで考慮すると、何が最適なのかは案件ごとに異なります。
例えば、実店舗をお持ちならそこからの流入を活用できます。チャネルの拡大や新商品開発など、事業がグロースすれば新たな障壁も現れてきます。条件の中で何を活用し、いかに障壁を乗り越えるか。それを実現するアウトプットは何か。全体を語る戦略なくしては、世界に売ることはできません。
「売るためのストーリー」とはつまり、私たち制作者にできる、デザインによる課題解決手法なのです。
デザインによる課題解決

【COPYWRITING】コピーが価値観の共通言語になる
「良い」の方向性をあわせるために
私たちのようなクライアントワークをしている会社にとって、コピーはお客様との“共通言語”になると私は考えています。PR戦略を立てる上では、よくコンセプトやターゲットのペルソナが設定されますが、それをどうアウトプットに反映するかは制作者個々の理解によって差が出ます。時に「造形は悪くないがその方向じゃない」デザインになりかねません。当然、クライアント側の担当者と決裁者とが異なるイメージを抱いていることもあるでしょう。
この状態でデザインを制作し提出しても、それぞれが「良し」とするイメージが異なるため、評価の価値観が噛み合いません。
そこで、共通言語となるコピーが必要になるのです。立てた戦略を最初にコピーの形でアウトプットし、クライアントと合意しておくのです。するとビジュアルを評価する際、トンマナ、見せ方、写真の雰囲気まで、説明に対して腹落ちしてもらいやすくなります。判断の軸をコピーの形で共有できるわけです。
私はよくコピーを軸にアウトプットを組み立てます。必ずしもそれが正解ではなく、毎回できるわけでもありません。お客様との関係性によって適した進め方は異なり、案件によっては先にコピーができているなど出発点も違うからです。ただ、どんな時も制作する上で立ち返る“原点”はコピーにあると考えています。
「良い」の方向性をコピーで定義する

【COMMUNICATION】社会情勢と広告コミュニケーション
コロナ禍に影響された企業の発信
弊社には長いお付き合いのお客様が多く、株式会社ヤッホーブルーイング様もその一つです。最初のプロジェクトは2019年の「父の日ギフトセット」のLPでした。続けて年末の「マジ福袋」のLPもご依頼いただき、成果とともに信頼関係を築いてきました。しかし2020年、再度の「父の日ギフトセット」のご依頼をコロナショックの真っ只中で迎えることになったのです。
企業広告は社会情勢に影響されます。例えば大災害の直後なら、災害に言及しない発信であっても世間の心情にあわないビジュアルは使えません。私自身が以前コーポレートコミュニケーションに関わっていた経験もあって、2020年の発信のあり方は熟慮を重ねた上で提案しました。
企業がコロナ禍に触れて発信しようとすると、どうしてもエモーショナルな表現にならざるを得ません。しかし、ヤッホーブルーイング様はファンを非常に大切になさる企業です。こんな状況の中でも(だからこそ)ファンの方には家で楽しく飲んでほしい。その姿勢から提案したテーマが「王道感」でした。コロナ禍に触れるのは避けながら、あえてこね回さず真っ直ぐにクラフトビールの王道を伝えることを選んだのです。
ヤッホーブルーイング様は、最初から私たちと対等に接し、相談し、提案を聞いてくださいました。その関係があったからこそできた選択だったと思います。
社会情勢を背景に、企業の姿勢を示す発信