実務ですぐ役立つデータの使いどころ

マーケティングに活用可能なデータを知る

「データ活用」を考えるときに、みなさんはどのようなデータを思い浮かべるでしょうか?

企業には、マーケティングに活用することができる、さまざまなデータが存在します。例えば、企業の商品やサービスを購入した顧客の属性や履歴情報(購買履歴・購入アイテム・お問い合わせ履歴)、反応・行動情報(サイトアクセスログ・メール開封/反応データ、キャンペーン応募データ)などがそうです。つまり、顧客についての理解を深めてマーケティングに活用していくための情報、いわば「宝の山」を企業は持っています。

企業にとって、商品やサービスを購入してくれるのが顧客です。そのため、顧客を深く理解することは、顧客がなぜ買うのか or 買わないのか、どうすれば顧客に魅力を伝えることができて、購入したいという欲求や行動を駆り立てることができるのかについて考え、実践につなげていくことができるようになります。

だからこそ、企業に蓄積されているデータを活用して、売れるための仕組み(マーケティング)をつくりあげていく取り組みが重要です。そこで、データを扱いたいなら、最初にデータの区分をしておくことをお勧めします。まず自社がどのようなデータをきちんと持っているのか、蓄積しているのかを整理していくのです。

さまざまなデータについて、最初に触れましたが、区分の観点で言い直すと、1つはマーケティングプロセスから生成され、獲得されるデータ。集客から見込み顧客の獲得、クロージング(契約)、顧客の維持などの工程で必要なデータのことです。

他には、「顧客データ」や「販売データ」。あと、メールや電話などの「レスポンスデータ」もありますし、Webサイトのログデータや行動解析データ、メール開封率などの「パフォーマンスデータ」もそうです。自社内で取得し、蓄積しているデータについて、区分や種類を明確にしておけると、データの扱い方や触り方が見えてくるでしょう。

マーケティング活用のために。何から手をつけるべきか?

データの区分やデータの種類についてまとめると、大枠が01となります。自社が取得しているデータについて、01の整理ができたら、次に何をするといいでしょうか?

「手元にあるデータを片っ端から分析していけばいいのか?」といえば、そうではありません。マーケティング活用をしていくこととは、顧客に関するデータに基づいて、適切なマーケティングアプローチを行い、顧客の態度や行動を変える施策を展開できる、ということなのです。

「新規顧客を獲得する」「既存顧客を継続的な購買に結びつける」「ロイヤルティの高い顧客をつくる」など、何に取り組むかによって、相手にする顧客は変わります。重要なのは、対象となる顧客理解を深めて、顧客の態度および行動変容のタイミングやきっかけ/要因(トリガー)を把握した上で、顧客への刺激の仕方や顧客アプローチを細かく設計することを目的に、データを分析することです。

例えば、見込みのある顧客の行動を分析するには「サイトアクセスログ」の分析が有効です。アクセスログ分析では、サイト来訪者や閲覧数、コンバージョン率の推移だけでなく、「どのようなキーワードで、Webサイトを来訪しているのか」「コンバージョンに至るルートや離脱傾向は、どのようになっているのか」など、行動傾向を捉えられるところまで広げて分析するといいでしょう。

顧客の取引実態を分析するには「売上データ」に着目し、売上総額や「何がどれほど売れているのか」を見るだけでなく、「どのようなタイミング」で、「どのくらいの頻度」で購入行動が起きているのかについて、顧客データとあわせて「どのような人が、何を買っているのか」などの「RFM(Recency /直近購入日、Frequency/来店頻度、Monetary /購入金額)視点」での分析が有効になります。

また、Aという商品を買う人はBという商品を買う傾向にある、という購入商品間の相関分析などを行うことで、A商品を購入した人にB商品をリコメンデーションする、という施策の展開も可能です。

01自社データの区分けから始めよう!

取得している「データ」がどのような種類なのかをひととおり把握していない企業や 担当者が少なくないので、まずはデータの区分や分類の整理を!

 

データに基づきどのように施策を設計していくか?

データ分析から明らかにしたいのは、「顧客への適切なアプローチの仕方」です。顧客に対して「購入」という「行動を起こさせる」ためには、適切かつ継続的な接触や刺激が重要となるのです。人の価値観やモノが多様化する現在においては、「顧客にあわせたアプローチ」が必要です。そのため、どのような人に、どのようなタイミングで、どのようなメッセージやオファーで、どのようなデバイスや形態でアプローチするかを考えることが施策設計となります。

例えば、Webサイトにおける見込み顧客に焦点をあてる場合、1ページしか見ないで離脱した人も、数ページ~数十ページ閲覧した人も同じ見込み顧客となります。そこで、同じ見込み顧客扱いのアプローチを行わず、1ページで離脱した人には、新着情報やキャンペーン情報などをフックに、ポップアップやSNSなどを介して再来訪を促すアプローチを検討します。後者のさまざまなページを閲覧している人には、見込み度合いが高い顧客とみなして、資料請求やお問い合わせするメリット、購入客の喜びの声などの情報をWebサイト上で出し分けして行動を促す、という別のアプローチを検討することができます。

また、閲覧していたページ履歴やメール開封・反応の有無などに応じて、何を訴求するかを変えて、行動する確率を高めることも考えられます。

参考までに、さまざまな顧客をめぐるデータを用意できる場合、「キャンペーンマネジメントシステム」という仕組みがあり、特にECサイトに向いています(02)。キャンペーンとは、顧客との好意的な関係構築(Relationship)や、再購入(Repurchase)、長期的な取引の継続(Retention)を達成するためのマーケティング活動全般を指しての言葉です。企業が保有するさまざまなデータを横断しながらシナリオを設計し、設計内容にあったアウトプットで配信する仕組みですので、各種データがあれば、こういうことも考えられます。

02 各種のデータ連携に基づくコミュニケーションの設計

上のフレームワークは、自社の顧客データに基づいて、顧客セグメントをつくり、セグメントごとにさまざまなマーケティング活動について行うもの

 

重要なのは刺激を与える「タイミング」

データ分析に基づくマーケティング活用を考えるとき、中でも特に重要となるのが「タイミング」です。Webサイトなどで情報に接触している顧客は、もっとも関心が高くなっている状態(ピーク)にあるため、関心にあった情報を出し分けて提供し、接触後のフォローコミュニケーションは早期に行うべきでしょう。

例えば、資料請求や購入をしたタイミング、買い換え・買い増しが必要となりそうなタイミング、給与支給日など懐に余裕がありそうなタイミング、記念日を間近に控えたタイミングなどを基点としたアプローチができれば、顧客の行動を起こしやすくなります。

それらのタイミングを逃さないためには、そのタイミングを捕捉するデータを取得/蓄積する環境づくりにも取り組んでいくことが求められます。

また、データ活用で実現できることの中には「パーソナライズ」もあります。ここでは、ある個人にとって、ふさわしいタイミングでコンテンツを出し分けるという意味で捉えると、それを実務で実行する場合、顧客を細かく意味のあるセグメントに分けて、各顧客に適ったコンテンツを用意し、割り当てていくなどの工程となります。当然、自前でやるにはかなり高度で専門的な領域になってきます。そこで、「タイミング」に焦点を絞って考え直せると、もう少し現実的に自前で考えやすくなる取り組みができると思っています。

一例を挙げると、展示会当日を起点にしてメールを配信したい場合です。1日前、終了1時間後、終了翌日、終了1週間といったように、最適なタイミングだと想定した時期で、メールを配信してみます。配信後の開封状況を精査しながら、展示会参加者層への最適なタイミングがいつだったかを測るわけです。異なるタイミングで配信していくので、あらかじめ用意すべきコンテンツは同じでも実行できますし、もしくは展示会以前と以後での1本ずつの用意で済みます。メールの開封状況が高いタイミングが見えてくれば、そこが最適なタイミングとなります(03)。

03 パーソナライズでは「タイミング」の把握が重要

目的に適したコンテンツが1本でも用意できれば、アクションを基点にいくつかのタイミングに向けてメール(コンテンツ)を配信。レスポンスが顕著なタイミングが、多くの人にとって最適化されていた、と考えられる

 

データ活用の環境を整え、PDCAサイクルを高速化

データ活用のためには、日頃からデータを見ている必要があります。データを確認できる環境という観点で、最近私たちも利用するケースが増えているのが、無償で公開されているGoogle Data Portal(GDP)の導入です。GDPは簡易版BI(Business Intelligence)ツールだとお考えください。本格的なBIツールを使わなくても、GDPである程度のデータ確認が可能です。Googleアナリティクスとの連携はもちろんですが、広告データなども含んだ各種API、外部クラウドサービスなどとも連携可能です。

BIツールを入れている企業は増えていますが、Excelで慣れてきた人が、「たくさんのダッシュボードが入っているけれど、結局見きれない」という実情も聞こえてきます。そうであるなら、自社でKPIやKGIなどの指標を決めて、それらを中心にWeb上で簡易的に確認できる方が、データを確認しやすい点でも有用です(04)。期間設定や前期間比、前年比といった表示もできますし、フィルタ機能の設置も可能です。

表示形式は表、グラフ、スコアボードなどから自由に選択できるので、なるべく優先度の高い指標について、直感的に確認できる環境を整えられるわけです。自社だけでの導入が難しい場合でも、導入コンサルティグ費用と設営費用といった最低限の用意ができれば、パートナー企業の力を借りて導入もしやすいでしょう。GDP自体が無償公開中なので、導入予算を抑制できるのは頭の片隅に入れておきましょう。導入できると、実務のPDCAサイクルの高速化につながりますし、これ自体がそのまま社内共有用のレポートにもなります。

Webサイト全体のパフォーマンスデータ、ユーザー個別のパフォーマンスデータもそれぞれ確認できるこうした用意は、自社内でデータ活用のイメージを持つために必要なことです。

04 Googleデータポータルで確認したいデータを表示

「Googleデータポータル」で表示したサンプル画面。新規ユーザー数、リピーター、流入レポートなど、特に注視している指標や動向データを適宜カスタマイズ表示して、データ「活用」できる体制をつくろう

Googleデータポータル https://datastudio.google.com/navigation/reporting

 

ツール導入は、マーケティング実行能力を高めるため

データを活用するためにはツールの力もたしかに必要です。ただし、ツールの選択がうまくいかないとすれば、それは手段ありきになっているからです。あくまで顧客体験の最善策として、さらにビジネス貢献も意識して「設計」をしっかりと組み立てた上で、初めて必要な手段としてツールが選べるのです。先にツールを選び、ツールのできそうなことにあわせて施策を打っても、うまくいきません。自社の設計にあわせて施策を検討し、必要ならツールを選ぶ。そうしない限り、ツールを導入しても成果が得られず、さまざまなツールを入れて使いこなせない仕組みばかりが増え、予算が膨らんでしまう。ツールにばかり予算が割かれると、用意すべきコンテンツをつくる予算が残らず八方塞がりな状況を生みかねません。

そこで、マーケティングファネルを参照しましょう。顧客のステージごとにアプローチが変わるからです。異なる相手の欲求や行動に応じて、最適なマーケティングテクノロジーは違います(05)。

潜在顧客だと、DMPが考えられます。自社サイトで捕捉できていないユーザーに向けて、外部のオーディエンスデータなどを用いて、潜在顧客層から見込み顧客化を図っていくのに必要なプラットフォームです。DMP自体にはアクションの生成機能がないため、導入にはMAとの連携が一般的です。

見込み顧客に対してのアプローチに用いられるのがMAです。見込み顧客の中でも有望の度合いを高めるためのツールです。有望度が高まった見込み顧客やすでに顧客となった相手への営業活動を記録、管理していくのがSFAです。継続的な顧客やロイヤル顧客には、顧客情報の一元管理を行うCRMの力が求められるでしょう。LTVやロイヤルティ度合いで顧客の識別を行って、顧客の利便性や満足度を高めながら顧客維持を図ります。

当然、すべてを導入するものではありません。きちんと設計を行い、優先度の高いところから妥当な手段(ツール)を選べるか、が問われます。

05 マーケティングテクノロジーの利活用とは?

1つのツールを選んだだけですべての顧客ステージの対応は厳しい。いくつかを組み合わせて、自社が特に弱いところ、力を入れていきたい顧客区分で得意なツールを選べるようになりたい

 

重要なのは、「どのツールをどう活用するか」の検討

最後に、企業のデジタル担当者は、特にマーケティングのことを問われる機会が増えていると思います。となると、MAについて判断を求められる機会も多いでしょう。前ページでも触れた通り、MAは見込み顧客対策に向いたツールですので、見込み顧客への課題感が強いと判断したときに、初めて検討のテーブルに乗せます。実際、MAを導入したからといって、自動的に見込み顧客データが取得できるわけではありません。そもそも見込み顧客データを取得するところから始めないといけません。BtoBの場合、オフラインだと展示会やセミナーでの名刺交換、オンラインならダウンロード資料などで必要な登録作業を通じて、メールアドレスとcookieを取得していきます。

裏返すと、メールアドレスとcookieがうまく紐づけられないとMAは機能しません。オフラインでもオンラインでもこうした機会が少ないBtoCの場合、cookieだけで運用できるWeb接客ツール、もしくはCXツールと呼ばれるツールの方が、短期間で成果を得られる確率が高まります。MAほど複雑なことはできないツールですが、例えばcookieの取得で、「匿名だけれど3回目の訪問」といったユーザーの特定は可能なので、「この条件の来訪者にはポップアップでこの情報を出そう」といったことができます(06)。

少しでもこうしたことを知っていれば、ツールありきの選び方を回避できます。担当者のみなさんには、CX向上とともに、ビジネス貢献のために必要な「設計」の重要性を繰り返し伝えたいのです。自社だけでの対応が厳しそうな場合は、自社をよく理解するパートナーと組めるかが鍵ですが、パートナー探しの支えになる知識としても、まだまだ一部とはいえ、ここまでの説明がとっかかりにもなるでしょう。

06 MA or CXツール? 決め手は見込み顧客との出合い方

見込み顧客を醸成したい場合、業界や置かれた状況によって、MAを選ぶかCXツールを選ぶか判断が分かれるだろう

 

教えてくれたのは…杉田 裕一
(株)ジェネシスコミュニケーション 代表取締役社長 オウンドメディア、「マーケの強化書」を運営 https://genesiscom.jp/
山本 知拓
(株)ジェネシスコミュニケーション コミュニケーションデザイン担当 執行役員 マーケティングコンサルタント
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