
事例2:福井県の工場が膨大なコンテンツを作り続けられる理由 三和メッキ工業(BtoB)●特集「コンテンツマーケティング」

提案からクロージングまでWebで完結
福井県福井市にある三和メッキ工業は従業員約30名。日本の製造業を高い技術で支える、典型的な地方企業と言っていいだろう。しかしメッキ業界も他業種と同じく、海外を巻き込んでの価格競争は増す一方。新規開拓が難しい地方企業のままでは先細りであることは否めなかった。そんな状況を打開するために同社が取り組んだのがWebサイトだった。
「Webサイトを立ち上げた頃は、会社はかなり厳しい状況でした。新規顧客の開拓といっても、近所の企業に飛び込んで提案したり、地元の電話帳に広告を出すぐらい。そこで少しでも多くの人に会社のことを知ってもらえればという気持ちでWebサイトを始めました」(西山喬之氏)
藁にもすがる思いで始めたWebサイト。ところが今では、同社のWebサイトは「メッキ」に関するキーワードで検索をかければ、必ずといってもいいほど上位に表示されるまでに成長した。質はもちろんだが、膨大な情報量で同業他社を圧倒している。
「今のようにコンテンツを増やしだしたのは2004年頃から。営業マンを何人も採用する余裕はなかったので、代わりにWebで提案からクロージングまですべて完結できるようなコンテンツにしました」
その結果、今ではすべての仕事を受け入れられないほどに注文が増加。現在は新規開拓のための営業担当者を一切置かず、9割以上がWeb経由での発注や問い合わせなどになっている。
制作が容易なQ&Aでコンテンツを充実
同社のコンテンツは、メッキの特性をわかりやすく説明するものから、各加工の説明、同社オリジナル技術のレポートまで、とうてい一日では読み切れないほどの充実ぶりで、「メッキ辞典」と言えるほどの情報量。なかでも圧倒的なのは「めっきQ&A」で、ここには常時公開のものだけで4,000~6,000のQ&Aを掲載されており、非公開のコンテンツを含めると約2万件を超える。Webサイトを訪れる人の大半も、このQ&Aから。メーカーの開発担当者や研究担当者から問い合わせや相談があり、その後、メーカー系列の工場などと取り引きすることが多いという。

訪問者が知りたいことがわかりやすくまとめられている三和メッキ工業のコンテンツ。デザインに凝った作りではないが、技術と知識の深さが窺える内容だ
「ほぼ毎日のように追加しているコンテンツがQ&Aです。これはサイトを見てくださるお客さんにとって一番役立つというのもありますが、それと同じくらい大事なのが、作るのに時間がかからないこと。業務の中で日常的に発生する問い合わせを記事にしていくだけなので、簡単に作ることができるんです」
また、同社のWebサイトが心がけているのが、情報を隠さないこと。強みとなるオリジナルの技術情報を惜しげもなく公開する一方で、できないこともはっきりと記載している。これもWebですべてを完結するための工夫。「Web経由の発注や問い合わせがほとんどだからこそ、できないことは明確にしておく必要があります」と西山氏。
月間のセッション数は約15万。同社ではサイトのコンバージョンを電話やメールでの問い合わせに設定しており、1日平均で10件程度の問い合わせや仕事の依頼があるという。

BtoB向けの本サイトに加えて、2004年からBtoC向けの「必殺めっき職人」も公開。売り上げでは全体の10%にも満たないが、こちらも検索上位に表示されている
どの企業にとっても、コンテンツを作る作業は大きな負担。だがコンテンツを提供する側に負担が少なく、かつ、ユーザーに役立つQ&Aは非常に効率がいいと言えるだろう。もちろん、そのためには日々、ユーザーのニーズをくむ必要があるが、ぜひコンテンツ作りの参考にしてほしい。
三和メッキ工業が成功した3つの理由
1. 専門知識に裏打ちされた膨大な情報量
2. 制作の負担が少ないQ&Aの充実
3. よりわかりやすく説明したBtoC向けサイトも公開

三和メッキ工業(株) WEBセールス 統括マネージャー