
事例3:「100mlの醤油を売る」ための充実した情報 職人醤油(EC)●特集「コンテンツマーケティング」

違いがわかりづらい商品だからこそ、詳細な情報を提供する
コンテンツマーケティングで成功しやすい要素の一つとして、「特化すること」が挙げられる。それまで醤油とはまったく関係のない仕事をしていた代表の高橋万太郎氏が2008年の5月にローンチした「職人醤油」も、醤油というニッチ市場に特化して成功したECサイトだ。全国の蔵元を自ら訪ね、選びぬいた醤油のみを販売しているが、さまざまな醤油を試しやすくするために、100mlというミニサイズのみを販売。高橋氏の目利きと、醤油に関する良質なコンテンツで順調に売り上げを伸ばし、2010年の5月にはリアル店舗もオープンした。ECと実店舗での販売、デパートなどの小売り店への卸を含めて、月間の販売数は約15,000本に上る。
同サイトには、「醤油豆知識」と題されたコンテンツがあり、原材料からレシピ、基礎知識まで醤油に関するコンテンツが非常に充実しているのが特徴。Webの立ち上げ当初から、醤油の情報発信にはこだわったと高橋氏は説明する。
「うちは醤油しか取り扱い商品がないので、お客さまからすれば違いがわかりづらいでしょう。ですから、醤油の知識を提供することや、使い方の提案、それぞれの個性を伝えられるような情報を発信していかなければいけないと思って、立ち上げ当初からコンテンツを作っていきました」
そうしてスタートから3年程度で醤油に関するキーワードでは検索上位に表示されるようになり、現在の月間のセッション数は約5万。大半は醤油に関するオーガニック検索でこのWebサイトにたどり着く。

初心者にも上級者にも役立つ複数段階の情報を発信
同サイトで扱っている醤油は量から考えれば安い価格ではない。だが、そうした「ちょっと割高な醤油」の購買を後押しする上でも、コンテンツは役立っているという。
「コンテンツをきっかけにWebサイトを訪れていただけるのはもちろんですが、『これだけ情報量が多ければ、多少、高くても変な商品は扱ってないだろう』という信頼感に繋がっているのだと思います」
また、醤油に関する基礎知識から、使い方、さらには各蔵元の紹介記事まで、ユーザーの知識量や求めるレベルに応じて複数段階の情報が提供されているのも興味深い。
「一番アクセスの多いページは、醤油の豆知識です。そこから各蔵元のページやレシピページを見て、購入してくださる人が多いようです」
つまり、ユーザーはサイトを見ているうちに自然と醤油に詳しくなり、レシピや蔵元の情報を知ることでさらに興味を持ち、購入していることになる。なかでもこれまで400以上もの蔵元を訪ね歩いてきた高橋氏による蔵元紹介ページは、他では見られない貴重なコンテンツだ。
SEOやコンテンツマーケティングを特別意識することはなく、「ちゃんとした情報をわかりやすく発信していくことが普遍的で一番、間違いがないかなと思っています」という高橋氏。もちろん、アクセスが多いページはより良いページにするように、キーワードのボリュームなどを調べながら細かくメンテナンスを施すなど、常に改善も行っている。
ユーザーの知識にあわせた情報がしっかりと用意され、コンテンツに触れていくうちに商品を購入したくなる。そんな理想的な導線が用意されているサイトと言えるだろう。
職人醤油が成功した3つの理由
1. 醤油に特化したコンテンツの発信
2. 知識量に応じた、幅広いレベルの情報を提供
3. こだわりを伝える記事でブランディング

(株)伝統デザイン工房 代表取締役