グロースハック実践③「体」グロースハックを駆動するチームを作る●特集「成長戦略 グロースハック」

【20】ハッカー、ハスラー、ヒップスターでチームを作る

製品開発に関する総合的な知識が必要になるグロースハックだが、チームには「ハッカー」「ハスラー」「ヒップスター」の3者がいればよい。ハッカーとヒップスターはそれぞれ、「エンジニア」と「デザイナー」と同義だが、ハスラーはハッカーがやる製品開発、ヒップスターがやるデザイン業務以外のすべての業務を担当する。例えばビジネス交渉やプロモーション計画の策定、オフィスの掃除や夜食の買い出しなど、ハッカーとヒップスターが製品開発に100%集中できるよう、それ以外のすべてを受け持つのである。さらに、ハスラーの語源である「ハッスル」からもわかるように、チームの障害を取り除き、鼓舞していくこともハスラーの重要な役割だ(もしかしたらそれがハスラーの一番大事な仕事かもしれない)。

 

 

 

 

【21】チームに「決済者」を巻き込む。そのための方法とは?

チームが、自分たちで立ち上げたスタートアップのように全権を持っている場合は別だが、多くの場合はそうではないだろう。その場合に忘れてはいけないのは、チームの中に製品の最終意思決定ができる人間をハッカー、ハスラー、ヒップスターのいずれかとして参加させるということだ。最終意思決定できる権限をチームに委譲してもらってもよい。

その理由は二つある。一つは「スピード」。たとえば当社の場合、行ったグロースハック施策が想定と異なる結果になった場合、2~3時間でその施策を捨てて前のバージョンに戻す、といったことも珍しくない。結果が出ていない施策を放置することはけっしてあってはならない。素早い判断が求められるのだ。

二つ目の理由は、失敗がつきもののグロースハックでは、それを認め、何度でもチャレンジする必要があるということだ。グロースハックにおける失敗は、成功に近づくために必要不可欠な要素だ。一度や二度の失敗でうまくいくなどというのは、不可能な前提であり、何度も失敗しても許されるような(最終的には成功しなければいけないが)環境下でグロースハックをしなければならないのだ。

ここまでで決済者を巻き込む必要性は理解いただけたと思うが、次はその決済者をどう巻き込んでいくかという課題にぶつかるだろう。これまでの経験で言えば、グロースハック的な施策を自分の権限の中で小さく行い、小さな成功を手土産に決済者を巻き込む方法がベストだ。グロースハックについて延々と説明をしても時間の無駄(説明して理解してもらえる環境であればこのような課題に直面することもない)。成長こそがすべての答え。グロースハックの有効性を証明すれば、百聞は一見にしかず、説得力をもって決済者を巻き込むことができるだろう。

 

【22】チームは2人でも4人でもなく「3人」がベスト

では、ハッカー、ハスラー、ヒップスターの役割で構成されたグロースハックチームは、何人にすべきか? 私はチームの構成人数は3人がベストだと考える。2名だとコミュニケーションフローが一つしかなくコラボレーションが期待しにくい。4人だとフローが6つとなり、スピードに問題が生じかねない。3人であれば、コミュニケーションフローが人数と同じ3つで、コラボレーションの可能性と意思決定のスピードと両立することができる

 

 

 

仮にグロースハックを担当できる人数が3人以上いる場合は、3人のチームを複数作り、それぞれが異なるステージでのグロースハックを担当するような形式がベストだ。

 

【23】グロースハックに役立つツールとは?

グロースハックに使うツールはさまざまあり、環境ごとにベストな選択肢は異なる。ツール選びはグロースハックにおいて死活問題にはならないのだが、どのようなツールを使うのか、もしくは内製するか、と考えた時に、総所有コスト(TCO)をきちんと考える必要がある。Webの世界は移り変わりが激しいので、たとえば内製した計測ツールが新しいOSに対応しておらずツール改修に時間を取られて肝心の施策が打てなくなる、という状況になっては本末転倒だ。可能であれば既存のツールを活用しつつ、成長へのインパクトが大きいKPIの計測で、もっと踏み込んだ分析が必要な場合のみ内製するという手法がベストだろう。

 

Webサイト計測の大定番 Google Analytics

説明不要のWeb計測のNo.1ツール。基本的に無料で使うことができる。利用ユーザーも多いために、導入や利用方法のサンプルが多く存在していることが強み。最近ではネイティブアプリの計測も可能になり、ますます活用しやすくなった。このツールを中心に計測をするのが基本となる。

経路ごとのコンバージョンを測る KISSmetrix

サイトにアクセスしてきたユーザー単位で分析できるのが特徴。「誰がどの経路で何をしたか」が、ユーザーごとに分析できるため、ECサイトのようなユーザーに特定のゴールをさせたいような場合の分析に優れている。

アプリの数値解析に特化 Localytics

ネイティブアプリの計測に特化したツール。このツールで気に入っているのはアプリ内のログデータを自動でサーバにアップロードしてくれる機能。VASILYではlocalytics経由で収集したログデータをベースにさまざまな分析を行っている。

A/Bテストのツールなら Optimizely

検証したい仮説が二つ以上ある場合に、アプリやサービス本体を改善することなく、ツール上で変更を加えることで仮説の検証ができる。ネイティブアプリにも対応しているためプラットフォームを問わず利用ができ、審査に時間を要するネイティブアプリ改善のスピードを高めることができる。

 

Text:金山裕樹
Yahoo!にてX BRANDなどのライフスタイルメディアの立ち上げを行った後、株式会社VASILYを設立。VASILYのファッションアプリ「iQON」(http://www.iqon.jp、アイコン)はファッションアプリとして世界で唯一、AppleとGoogle両社のベストアプリに選出。さらに2015年には2年連続3度目のGoogleベストアプリを受賞。会員数は200万人を超え、日本最大級の女性ファッションアプリとしてファッション感度の高い女性ユーザーに支持されている。
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