写真のクオリティアップと競合サイトの利用でユーザー数を倍増させた「Airbnb」●特集「成長戦略 グロースハック」

Airbnbは、空き部屋などを持つ宿泊場所の提供者(ホスト)と宿泊場所を探している旅行者(ゲスト)を繋ぐ、人気のサービスだ。しかし2008年のスタート当初は、いくつかの都市では物件の予約がなかなか行われない状況だったという。ファウンダーたちがその原因を探ってみたところ、ホストが物件を登録する際に携帯などで撮影した画質の悪い写真を使っていて、部屋の雰囲気がよく伝わっていないことがわかった。そこで、 ファウンダーたち自らニューヨークの実際の物件を訪ね歩いて撮影し、物件ページの写真を質の高いものへと差替えていった。

 

現在Airbnbのサイトでは、ほとんどの物件が質の高い写真とともに紹介されている

 

この結果、その月の終わりにはニュー ヨークでの売上は2倍以上にも跳ね上がった。さらに他の都市でも同様の施策を行ったところ、宿泊予約率が平均2.5倍も向上したのだった。いまでは2,000人以上の写真家と契約し、高いクオリティの物件写真を掲載している。

 

Airbnbのユーザー数の推移。創業者自身も、写真家を派遣するプログラムを始めてから成長が加速したと公言している。実際に、この施策を始めた2010年終盤からユーザー数が増えはじめ、成長が加速していったことがわかる

 

自らの足を使うという泥臭い施策とは対照的に、こんなクレバーな施策も行った。地域情報に関するコミュニティサイト「Craiglist」は、不動産情報も扱っていて、Airbnbにとって大手競合サイトであった。そこでAirbnbでは、ホストが物件を登録した際に、自動でCraiglistにも物件を登録できる機能を提供した。そしてCraigslistにAirbnbの物件が多数掲載された結果、Craiglist経由でユーザーが集まり、彼等は物件を借りるためにAirbnbのサイトで物件のオーナーと連絡を取ることになった。

 

AirbnbがCraiglistへの投稿機能を実装した当時、CraiglistのAPIは公開されていなかったため、Airbnbが独自に開発した。Airbnbで物件を登録したホストに届いたメールでは、リンクをクリックすると、このように簡単な追加項目を設定するだけで、Craiglistにも物件情報を登録することができた

 

こうして広告費をまったくかけることなく、何百万人のユーザー登録を獲得することができたのだった。

 

Text:梶谷健人
VASILYグロースハッカー。ファッションコーディネートアプリ「iQON」にて早くからグロースハックの実践を行ってきた。そのノウハウをカンファレンスやセミナー、ブログなどで発信をしている。1月にグロースハックに関する国内初の実践書を出版予定。
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