
「体験」をデザインするプロ集団「1→10drive」
新しい時代を切り拓く「体験をデザイン」する新会社
「素人でも5分あれば、ステキなWebサイトが作れます!」そんなキャッチコピーを掲げた無料サービスが台頭している中で、2000年代に業界を牽引した名だたるWeb制作会社は、どこに向かうのでしょう。大量生産型サービスに、淘汰されてしまうのでしょうか?
答えはNOです。時代を作った会社は今も、新しい時代を切り拓き続けています。そのフィールドは、Webを飛び出して「体験」に。
広告畑から1名、技術畑から1名、そしておもちゃメーカーから1名。異なるバックグラウンドを持つ3人が中心となる新会社の名前は「1→10drive」。Web制作業界で名を馳せる1→10Holdings(以下、1→10)の、あたらしい挑戦を取材しました。
Company Profile
組織形態:株式会社
資本金:700万円
事業内容:ブランドプロトタイピング
スタッフ数:6名(2015年12月現在)
設立:2015年7月

大手広告会社のマーケティング部署を経てコミュニケーションデザイン領域へ。マーケティング領域の多様化にともない、デジタル、PR、プロダクト/コンテンツ開発など、新たな領域を幅広く積極的に取り込み、プロジェクト全体を推進していくチーフプロデューサーとして活躍。2015年7月に、1→10driveの代表取締役兼CEOに就任。

東京工芸大学大学院博士後期課程を単位取得退学し、京都のメーカにて画像処理、画像認識、信号処理の研究開発を行う。2014年より1→10designに参画。インスタレーションやプロダクトまで開発まで、1→10技術チームをけん引する役割を担う。

大手玩具メーカーに入社し、企画立案から商品生産の実現までに至る工程の管理に従事。玩具、玩菓、キャラクターフィギュアなど、100を超える商品を手がける。2015年8月より1→10driveに参画。世の中を楽しくさせる仕組みを考案する商品企画を主に担当。
ーーまずは、今回の分社化の経緯を教えてください。
梅田:広告の形がどんどん変わって、今は「あたらしい体験」を提供することの価値が高まっています。そして、これまで1→10が築いてきた技術や知見は、そのニーズに応えることができる。そこで生まれたのが1→10driveです。これ、僕が名付けたわけじゃないんですけど、すごくいい名前だなって。一緒に取り組む企業さんのブランドをドライブさせる。ぐるぐる加速させていく。そんな意味があります。
森岡:今、スタートアップがすごく盛り上がってますよね。その中を覗くと、支援するアクセラレーターの存在があって、彼らは成長を加速させています。一方、既存のメーカーとなると、今やどんどん企業規模を縮小してしまっています。そんな日本のメーカーに必要なのは、プロトタイプを開発する技術力なんじゃないかって。だから僕らは、メーカーにとってのアクセラレーターであり、「ドライブ」になりうる存在でありたいんです。
ーー「メーカーのモノづくりを加速させる、頼れる存在」ということでしょうか。
梅田:そうですね。僕は10年以上広告代理店にいましたが、広告だけを受託するやり方に、ずっと違和感を感じていたんです。クライアントの商品をプロトタイプ段階から一緒に作るほうが、ずっと本質的なモノづくりができるはずです。でも、そんな環境はなかなかありませんでした。そんな中、作る技術力を持った1→10なら、商品づくりからコミットできるじゃないか、と。HOLDINGS代表の澤邊と話がトントン拍子に進み、僕が社長として入社することになりました。
森岡:僕は技術畑出身なのですが、1→10のエンジニアはスゴい人が多いんですよ。普通、エンジニアってゴールに向かって最短ルートを攻めていく人が多いんです。でもここでは体験をどのようにデザインするかを考えながら、プログラミングをしています。デザイナー的視点を持っているんです。あと、どんな技術も食わず嫌いせずに習得するし、基盤やハードウェアも作る。HOLDINGS社内にコミュニケーションテクノロジーセクションという8人のエンジニアチームがあるんですけど、彼らはみんな頼もしいですね。
OFFICE & PEOPLE
1→10HOLDINGS.Incが一体となったオフィスは、
まさしくモノづくりの環境が整った空間でした


ーー森岡さんは技術畑、そして北原さんはおもちゃメーカーからご転職されたんですよね。
北原:はい。正直、1→10のことは転職活動するまで知らなかったんです。実は「京都で働きたい!」という想いがあって調べていたらたどり着きまして‥‥。
ーー1→10の本社は京都ですもんね。
北原:そうです。そんな薄い知識だったのですが、知れば知るほどビックリする、モノづくりの力がありました。なのに、メーカーに勤める知人はみんな1→10の社名を知らない‥‥。だからさっそく「こんな会社があるよ! スゴいんですよ!」と転職のご挨拶にまわっていたら、やはり反応がいいんですよね。京都水族館さんとのお仕事にもつながりまして、年末年始のクラゲの水槽で、演出を作らせてもらうことになりました。
梅田:魚の習性にはかなり詳しくなってきたよね(笑)。ぼくもいろんな方に1→10driveのお話をして、その後しばらく音沙汰なくても、数カ月後に「相談受けてもらえますかね?」とご連絡をいただいたりします。
ーーずっと相手の記憶に残っているんですね。でも「体験のデザイン」は、どのクライアントにとってもきっと、新領域なのではないかと。プレゼンして、一緒にやると決めるまでも大変なのでは?
梅田:そうですね。一度のプレゼンで決まるなんてことは、まずありません。絵で表現できないことも多いから、一緒に考えてプロトタイプを作って、そこでやっと実感してもらえます。
森岡:10月にコンセプト映像を発表したサンスターさんのスマート歯ブラシ「G•U•M PLAY」も、たくさんプロトタイプを作りましたね。大きな試作品を作って、だんだん小さくしていきました。そして、数年分の歯みがきをしたんではないか? というくらい歯をみがきました。
ーーお疲れ様です!(笑)
梅田:まだ会社ができて5カ月しか経っていないですし、いま手掛けているプロジェクトがお披露目されるのもしばらく先になります。1→10driveがモノを生み出すスピードは、これまでのWebや広告と比べると少し遅く感じられるかもしれません。でも、それでいいともってるんです。数カ月で消費されるものではなく、100年残っていくブランドを企業さんと一緒に作っていきたいですから。
CREATIVE
1→10driveの手から生まれた、インタラクティブな作品を紹介します

2016年春に発売が予定されている、サンスター(株)によるIoTプロダクト。同社の歯ブラシにアタッチメントを装着し、スマートフォンのアプリと連動させることでゲーム感覚で楽しく歯みがきをしたり、正しいみがき方のアドバイスを受けることができる。1→10drive森岡が、ソフト/ハードの両面で開発を担当。およそ2年の歳月を要して開発されたという、画期的なデバイスだ

12月26日より、京都水族館 海洋ゾーンの「無脊椎の世界」展示空間にて、インタラクティブな展示を企画、制作。遊びや体験を通して珊瑚やクラゲなどに ついて学べるエリアでもあるため、映像の美しさだけでなく、「どういった体験 ができるか」「いきものをいかに引き立てる空間に仕立てあげるか」といった点にこだわって制作が進められたという。写真右ふたつは、水族館内で撮影された作業風景


◎取材後記 1→10driveは、少数精鋭のプロ集団!


- Text:塩谷舞(しおたん)
- 1988年大阪生まれ、京都市立芸大卒。PRプランナー/Web編集者。(株)CINRAにてWebディレクターとして大手クライアントのコーポレートサイトやメディアサイトなどを担当。その後、広報を経てフリーランスへ。お菓子のスタートアップBAKEのオウンドメディア「THE BAKE MAGAZINE」の編集長を務めたり、アートに特化したハッカソン「Art Hack Day」の広報を担当したり、幅広く活躍中。 ciotan blog:http://ciotan.com/ Twitter:@ciotan