ECのエンゲージメント向上に立ちはだかるユーザー登録の壁●特集「リピーター&ファンを生む新法則」

『中小企業向け 2016年EC戦略白書』とは?

https://www.paypal.com/jp/

インターネット決済サービス「PayPal」と日本Eコマースコンサルタント協会(JECCICA)が共同で制作しまもなく公開する、全国の2万人(20~50代 男女 有職者)、および国内の中小EC企業1,000社を対象にしたアンケートをもとにまとめた調査結果。ECサイトの利用動向から囲い込み戦略の実状、モバイルシフトの現状などECにかかわるあらゆる調査結果が網羅されている。

 

会員登録がユーザーを遠ざける

ECショップを利用しようとした際、会員登録が面倒で購入するのをやめてしまったり、多少価格が高くてもすでにアカウントを持っているECショップで購入した経験は誰もが持っているのではないだろうか? ユーザーからすれば商品が購入できればいいのだから、すでにアカウントを登録しているショップで買いたいと思うのは自然な流れだ。では、ひるがえってあなたのECサイトはどうだろうか? ユーザーに対して、会員登録せずに購入できる選択肢を用意しているだろうか?

決済サービス「PayPal」が発表したデータによると、「直近1年以内に中小ECショップで購入した回数」が3回以下と答えているユーザーは52.5%と半数以上。そのうち、「新規で会員登録するのが面倒だから」という理由で購入を見送っているユーザーが34.4%もいるという。では、そもそもなぜ大多数のECサイトは、購入の際に会員登録を必須にしているのだろうか? その理由をPayPal.Pte.Ltd 東京支店の白石高志氏はこう説明する。

「ショッピングカートのシステムを導入すると、そのなかに会員登録が組み込まれているものが少なくありません。それが会員登録必須のECショップが多い理由の一つに挙げられると思います。もう一つは、今までユーザーに情報を登録させて、それを活用するという戦略が一般的だったからだと思います」

そんななか、「カゴ落ち」対策の1つとして有力と考えられるのがPayPalや楽天ID決済、トなどのID決済サービスだ。ID決済サービスは利用サイトごとに支払い方法を入力する必要なく、クレジットカード情報でスムーズに決済をすることができるというもの。海外ではかなり普及しており、会員登録せずに購入できるECショップのほうが一般的だ。PayPalを例にとると、メリットは3つあるという。

「一つ目はユーザーの決済のしやすさ。二つ目は海外ユーザーの信頼も厚く、トラブルがあった際にも購入者への保障の仕組みがあること。三つ目はサービス提供側のセキュリティリスクを減らせることです」(白石氏)

「囲い込み戦略」における中小EC企業と消費者の意識差(抜粋)

EC戦略白書によると、ECサイト運営側が「消費者は会員登録を嫌がっていない」と答えたのが49%に対し、ユーザー側が「会員登録することにまったく抵抗がない」と答えたのはわずか4%と、運営側とユーザー側の認識に大きな隔たりがあることがわかった

※□中小EC企業担当者の回答 ■消費者の回答

国内の中小EC企業1,000社を対象にアンケート調査(2015年10月度実施)、消費者は全国2万人(20~50代 男女 有職者)を対象

 

会員登録による囲い込みは時代遅れ

こうして見ていくと、ID決済サービスを導入するデメリットは運営側、ユーザーの双方とってもなさそうに思えるが、日本でなかなか導入が進まない背景には「ID決済サービスを導入すると会員登録のフローを組み込めないと誤解している人が多い」と白石氏は指摘する。

だが、実際にはID決済の導入と会員登録はどちらも同時に実現できる。例えばPayPalを導入しているヤマダ電機では、決済のタイミングで会員になるかどうかのチェックボックスを用意して、会員登録も促せる仕組を導入している。またID決済はユーザーの手間を減らすのとあわせて、運営側のセキュリティにおけるメリットも見逃せない。

「最近、情報流出に関するニュースがよく流れていますが、実はその大半は、銀行や当社のような金融機関ではなく、クレジットカード情報を所有しているサービスやショップなのです」(白石氏)

ID決済を導入すれば、運営側は顧客のクレジットカード情報をそもそも所有しないため、もし事故が起きても、クレジットカード情報の流出を避けることができるというわけだ。

また、ID決済のメリットはモバイルでも大きい。スマートフォンになると入力のハードルはより一層高くなり、途中離脱する可能性もぐっと高くなる。その点、ID決済を導入すれば、ユーザーが入力する情報を減らすことができ、「カゴ落ち」の要因をひとつ減らすことに繋がる。よりユーザーフレンドリーなECショップを実現する上で、今後はこうした決済方法も検討していく必要があるだろう。

全国2万人のECサイト利用動向:中小のECサイトで商品を購入していない理由

購入していない理由の第2位に「新規会員登録が面倒」が入っている。「商品数が少ない」や「セキュリティが不安」より、「新規会員登録が面倒」という理由が強い結果は、見逃すことはできないのではないだろうか

ID決済サービスでも会員登録を組み込める

「PayPalを導入しているヤマダ電機では、決済のタイミングで会員になるかどうかのチェックボックスを用意している。決済をスムーズにすると同時に会員登録も促せる仕組みになっており、運営側、ユーザー両方にとって大きなメリットがある http://www.yamada-denkiweb.com/

白石高志氏

PayPal.Pte.Ltd 東京支店 シニアマネージャー https://www.paypal.com/jp/

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