[バズ施策:Burglars Just Want Tacos]ユーモア倍返し

最近は、広告表現に対する自主規制が激しくなっています。過剰にクレームを恐れて思い切った表現を自粛し、少しの毒気も排除しようとする“無菌室志向”が蔓延しているのです。マス広告とは違い、Webムービーはわりと表現の自由度が高いフィールドですが、それを遥かに凌駕するCMが出現しました。ラスベガスにあるタコス料理店が制作した本作品、これがまあ秀逸。なんと、自店に強盗が押し入った際の防犯カメラの映像をそのままCMにしてしまったのです!

無音の防犯カメラが映し出すのは、深夜の店舗。怪しげに近づく車から出てきた若者が店のガラス扉めがけてブロックを投げつけ、侵入しようとします。そこにテロップが―「彼らはタコスが食べたいようだ。でも店は閉まっている」。そこから店内に侵入した泥棒に対してテロップは、「狂ったようにタコスを探しまくる彼ら」と続きます。そう、このCMでは、金目の物を必死で探る泥棒を“タコスが食べたくてしょうがないおバカなお客”に仕立てあげているのですが、その小馬鹿にした演出が絶妙! 詳しくはCMを観てもらいたいのですが、最後はこう締めくくります。「なぜ彼らはこんなにもタコスが食べたかったのか? あなたもお店に来て確かめて!」と(笑)。ただ犯人を晒し者にするだけでなく、それをウィットに富んだジョークに変換し、映像をユーモアたっぷりに仕上げています。このCMを観ると、同情したくなるのと同時に、そのクレバーさに心底この店のことが好きになります。

こんなCM、日本ではあり得ませんよね。こういった思い切った表現を目にすると、「日本人は本質ではない部分にとらわれすぎているのでは?」と考えてしまいます。少しくらい、この“毒気をユーモアへ変換するやり方”や“ただでは転ばない精神”は見習わないといけない気がします。

 

【Buzz】Burglars Just Want Tacos

生々しい映像に、洒落のきいたテロップ。「フリホレス&グレスカス・グリルド・タコス(Frijoles & Frescas Grilled Tacos)」のセンスに脱帽です

 

ナビゲーター:眞鍋海里 Kairi Manabe
BBDO J WESTコンテンツプランナー。タワーレコード、Webプロダクションを経て現職。“コンテンツ発想”を軸に話題を生み出す。AUTOWAY「雪道コワイ」から続く動画シリーズは累計1,500 万再生を超え世界的に話題に。最近の仕事は、SUNTORY集中リゲイン、HOME’S「ドリーマー」、密室ホラーハウス「訪問者」等 。 @gattamanJP
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