
アクセス解析ツールだけで「課題」は見つかるのか
解析ツールでわかる「4W」
アクセス解析ツールは、その名の通り、「ユーザーのアクセスを解析した」データを提供する。それには、01のようにさまざまな情報が含まれており、「いつ」「誰が」「どこで」「何を」について、詳細なデータを得ることができる。これらのデータを分析することで、たとえば「新規ユーザーと2回目訪問ユーザーでは、あるいは流入ページ別では、直帰率はどう違うのか?」「スマートフォンユーザーの広告別でのコンバージョン率」といった状況を把握できる。
実店舗との比較で考えると、これは画期的なことなのだ。実店舗では、POSレジを導入することで「どの商品がいつ売れたか」ということまではデータとして得られるが、「どんなお客さんが、どの経路から入って、店舗内のどの棚を、何分見ているか」「このお客さんは、はじめて訪れたのか、2回目に訪れたのか」「どの商品を手にとって、戻したか」といったことを測定するのは、不可能ではないものの、多大なコストが必要になる。解析ツールを使えば、このような貴重なデータを簡単に得ることができるのだ。

アクセス解析で最も有名なツール。無料で高機能なので、小規模サイ トから大規模メディアまで導入されている。Webマーケターなら最初に習得すべきツール

もともと「SiteCatalyst」という名称だったアクセス解析ツール。有料だが、KPI設定やカスタマイズ機能が豊富で、大企業サイトなどで導入が多い
アクセスデータに含まれる主な情報

「Why」は教えてくれない
では、アクセス解析データから課題を発見することができるかというと、そう簡単ではない。多くのWeb担当者が「アクセス解析データを見ても、何が課題なのか、よくわからない」という悩みを抱えている。それはなぜだろうか。
上述の通り、アクセス解析によって「4W(When、Who、Whrere、What)」のデータは得られるが、「Why(なぜか)」は含まれていなからだ。たとえば「2回目訪問ユーザーに比べて、新規ユーザーはトップページでの直帰率が2倍」という分析結果が得られたとしよう。これは、あくまでも現状を数値で説明したに過ぎない。Web担当者としては、「なぜ直帰率が高いのか」、つまり、「何が課題なのか」を知りたいわけだが、データはそこまで教えてはくれないのだ。本当の課題を導くためには、単にアクセス解析をするだけではなく、そのデータを元に自らの頭を使って「Why」を見つけ出す必要がある。
Webサイト改善における「課題」とは?

「本当の課題」とは「ギャップ」である
しかし、「考えてWhyを見つけ出せ」といっても、そう簡単ではない。そこで本稿では、「『サイト改善のための課題』とは何か」を定義した上で、それを特定するための3つのアプローチを紹介しよう。
Webサイトを改善するための「本当の課題」とは、一言で表わせば「ユーザーのニーズ・行動パターン」と「Webサイトの情報・機能」との間にある「ギャップ」のことである。「ユーザーは価格情報を知りたいのに、Webサイトには価格情報が掲載されていない」などが典型的な例である。「本当の課題を見つける」とは、「ユーザーとWebサイトの間にある致命的なギャップを捉えること」と言い換えることができる。
ギャップを見つけるための3つのアプローチ
アクセス解析データからギャップが見つけられない(考えられない)場合、課題発見の方法として3つのアプローチが考えられる。
課題発見のための3つのアプローチ

1つ目は、「サイト自体についてもっと知る」ことだ。そのためには、足りないデータを集めたり、データ分析技法を学ぶことが必要となる。アクセス解析だけでも相当なデータがあるが、「ページ内のどの箇所を見ているか」「どこまでスクロールされているか」といったデータまでは得られないので、これらを補完するツールの導入が必要となる(04)。
サイト自体をもっと知るために

それにより、アクセス解析によって判明した「改善すべきポイント」を「どのように直せばよいのか」が見えてくる。また、アクセス解析ツール自体も、より多くのデータを取得できるように日進月歩で進化している。それらのデータを組み合わせて考えることで、思いがけない課題が浮かび上がってくることもある。そのためには、アクセス解析に関する新しい書籍を参考にしたりセミナーに参加したりなど、最新の知識を仕入れておこう。
2つ目は、ユーザーについてのデータや知見を集めて、「ユーザーの心理を理解すること」だ。アクセス解析では「ユーザーの行動」をデータとして取得できるが、「商品を検討する時に何が知りたいのか」「どんな不安があるか」といった「ユーザーの心理状態」はわからない。これらを把握するためには、ユーザーテストやアンケート、電話インタビューなどが有効である(05)。
ユーザーをもっと理解するために

最後のアプローチは、「先人の知見を学ぶ」ことだ。Webサイトだけでなく、マーケティング全般において、多くの実務家・研究者が、さまざまな成功事例や研究成果を発表しており、解説講座なども数多く開かれている(06)。これらを知れば知るほど、新たな課題が見えてくるはずだ。同じアクセス解析のデータも、違って見えてくるに違いない。本特集の「課題解決のための地頭を鍛える一冊」も参考にしてほしい。
先人の知見を学ぶために


- Text:池田朋弘
- (株)ポップインサイト 代表取締役社長。(株)ビービット在籍時、ユーザーテスト/ユーザー行動観察を軸にしたコンサルティングなどに従事。2013年1月にユーザーテストなどを扱うポップインサイトを創業、2年半で調査実績は2,000件以上。http://popinsight.jp/