ファンを醸成するTwitterでの情報発信と接客術「H>FRACTAL」

H>FRACTAL ディレクターの柴原寛さん

 

PCからもスマホからも美しく見えるサイトデザイン

H>FRACTALは、東京の原宿に実店舗を構えるアパレルショップだ。原宿店のディレクターを務める柴原さんは、PRやプレス業務のほか、セレクトアイテムのバイヤーなどを手がけている。

「ユニセックスの服やアクセサリー、靴などを扱うセレクトショップで、その取扱商品の中に自社ブランドが3つあります。ブランド全体としては、幾何学柄や、宇宙、トライアングルなどのモチーフが多いです」

現在はラフォーレ原宿の地下にある同店だが、2009年のオープンから1年半は路面店だったという。

「路面店の頃は原宿の裏道にありました。そのころのネット上での集客方法としては、スナップサイトに載るくらいしかありませんでした。そこで、オンラインショップを立ち上げることにしました」

H>FRACTALを運営する(株)からくさにはIT部門があり、自社案件のみならず他社案件の受注制作も行っている。

「自社内にWebのスペシャリストがいるので、サイト運営にはその力を借りています。定期的にミーティングも行い、常にサイトの改善策を練っています」

サイトはシンプルなデザインに、大きめの横長バナーがアクセントになっている。PCサイトとしても整然としているが、明らかにスマホサイトを主眼に置いたデザインだろう。

「利用者の9割はスマホからのアクセスです。IT部門の担当者が、スクロールの感じやバナーの配置などに配慮し、PCからもスマホからも使いやすく、きれいに見えるようにしています」

9割がスマホからの利用ということは、若い顧客が多いのだろうか。

「一番購入頻度が高いのは、18~22歳くらいの層です。ただ全体としては、15歳~30代半ばくらいまでのお客様に利用していただいています。3つの自社ブランドのうち、『THE TEST』は手頃な価格帯で、10代などファッションに目覚めたての若い子をターゲットとしています。そして20歳くらいの、ファッションがわかってきてちょっと挑戦したいと思っている人に向けているのが、『PARADOX』。もう少しフォーマルに着たいと思う方に向けたものが、『MUZE』です。1つの店舗の中で、成長に伴うシフトチェンジができるようなブランド構成にしています」

自社内にあるIT部門でサイト制作を手がけている。スマホからも見やすい、横長のバナーがアクセントとなったサイトデザインで、スクロールして見られることを前提とした写真の見せ方も工夫されている
 

 

現代のファッション雑誌はTwitterのタイムライン

開店当時とは違い、いまはSNSなどネット上で集客できるさまざまなサービスが存在している。H>FRACTALでは、Twitterがもっとも強力な集客ツールとなっている。

「Twitterのメリットは、拡散力ですね。リツイートされることで、ブランドが直接繋がっていない人のタイムラインにも入り込んでいけます。特に、アーティストの方が弊社の服を着てツイートしてくれたり、うちのツイートをリツイートしてくれると、反応が大きいです。一気にフォロワーが1,000人増えたこともありました。ファッション情報を、雑誌ではなくてタイムラインで収集しているという若い子は少なくないようです。その日ツイートした商品は、実店舗でもネットショップでも、動きがぜんぜん違ってきます」

Twitter上で直接コメントのやりとりをすることもあり、それもWeb上の接客だと心がけているという。

「昔はショップ定員ってちょっと怖いと思われがちでしたが、いまはTwitterなどで気軽に対応できるようになりました。失礼のないように気持ちの良い接客を心掛けつつも、少しカジュアルな感じでその人の中に入り込んでいくというのが、Twitterにマッチした接客方法かなと思っています」

H>FRACTALでは1日に何回ものツイートをしているが、運用は負担ではないのだろうか。

「各SNSの更新だけで1日かかることもあります。ただ、お客様は写真を見て何を買うか決めてから来店されるので、昔よりも接客時間が短い傾向にあります。その分、SNSにかける時間をつくることができています」

H>FRACTAL Twitter

ショップスタッフは出勤したらまずツイートし、新入荷商品があればツイートすることが業務となっている。写真は、 Twitterのラフな雰囲気と顧客にとっての実用性を考慮し、着用イメージを中心に使用。実際に、その日ツイートした商品を購入しに来る顧客が多い

 

実店舗とネットショップの関係

ネットショップも常連客が多く、店舗同様にその日Twitterで紹介したアイテムが売れやすい。ポイントシステムなど、再訪のためのサービスにも注力している。

「ずっとネットショップで買ってくれていた人が、たまたま東京に遊びにきたときに来店してくれて、ポイントカードに書いた名前を見たら『あっ、いつも買ってくれている方ですよね』となることもあります。それは、一番おもしろい瞬間ですね(笑)」と柴原さん。

ラフォーレ原宿B1にある実店舗

 

顧客との継続的な関係をつくる接客術

ほかにもInstagramやFacebook、ブログ、LINEを活用し、楽天市場へも出店している。これらはどのように使い分けているのだろうか。

「Twitterの弱点は、年齢層の高いユーザーが少ないことです。そうしたTwitterでは接触できないユーザーとの接点や新規顧客獲得の場として、さまざまなチャネルを用意しています」

H>FRACTAL Instagram

Instagramはタイムラインを追っていくだけでなく、一覧したときの写真から世界観を伝えやすいツールだとの考えから、ネットショップの下部にも読み込み表示させている

H>FRACTAL Facebookページ

Facebookは、Twitterに比べて長文で読ませられるのが利点だと考えている。そのため、自社ブランドのこだわりなどをしっかりと伝えるツールとして利用している

H>FRACTALの顧客は、常連がとても多いという。先述の、年齢幅に対応したブランド構成以外にも、何か秘訣があるのだろうか。

「特に男性は、気に入るとずっと来てくれる方が多いです。常連になってくると、ただコーディネートするだけでなく、少しカウンセリングのような要素が入ってきます。単純に、その人に似合う似合わないを正直に言うということもありますし。その方の職業や趣向などの情報がこちらも蓄積されるので、たとえば美容師さんだと、カラー剤がつくことがあるのであまり白は着られないけれど、逆にお休みの日には普段着られない白を着てみたいというような意向を汲んでオススメしていきます。もし売るために似合わないものやその人のライフスタイルにあわないものをススメてしまうと、結局1~2回しか着なかった、あの店員さん止めてくれればよかったのに、と思われてしまいます。似合わないと思ったら『それはやめたほうがいいね』とハッキリ伝え、その人が何度も着るようなものをススメることで、信頼度が上がってくるんです」

商品の良さは大前提ではあるものの、こうした真摯な態度の接客が、SNSでも実店舗でも顧客の心を掴んでいるのだろう。

 

 
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