限られた予算でも使える? LINE@の効果的な使い方

新規獲得よりもユーザーの離脱防止策に!

LINE@の魅力の一つは、費用。LINE@の場合、アカウントだけなら、無料からつくれるという敷居の低さがある。だからこそ、LINE@の効果を引き出す一定の条件についても、あわせて頭に入れておきたい。

LINE@を施策に取り入れる上で、もっとも適している条件は「すでにWeb広告をはじめ、Web流入に力を入れている場合」か「リアル店舗にかなり比重を置いた集客施策を行っている場合」だと、(株)ギブリー小谷田太河氏は語る。その理由は、「ターゲットユーザーに“LINE@をやっています”と周知されていなければ、効果が見込めない」からだという。つまり、いきなりLINE@を始めるだけでは、目に見えた効果は期待できず、けっして新規の顧客獲得策には向いていない。先の両者は、ターゲットユーザーとのタッチポイントがあらかじめ確保できているという共通点があり、その点がLINE@に適した条件を満たしている。

まずは前者についてさらに掘り下げたい。例えば、Webへの流入は一定数見込めるが、資料請求や来場予約といった成果に結びついていない場合。これは、流入するユーザーはいるにもかかわらず、ゴールにたどりつくユーザーが少ない、もしくは大量の見込みユーザーが離脱していることを意味する。そこで、離脱を放置せず、LINE@への登録に誘導すること(01)。これが「離脱=Webへのコストの無駄」を防ぐのにつながる※1。

※1 サイト流入からのコンバージョン獲得が一般的に約0.5%といわれるなか、P051で紹介するフリーダムアーキテクツデザインの場合、約1.5%がLINE@へ登録。「離脱の食い止め」という成果が出ている

LINE@の有効的活用の一例

01 ランディングページにさまざまな手段で多くの流入があっても、ゴールを前に離脱ユーザーが生じがち。その離脱を食い止める施策にLINE@が有効とされる

 

ユーザーにとって敷居が低いLINE@への登録

なぜ離脱したはずのユーザーをLINE@だと食い止められるのか?

ここで取り上げるのは、東京・日本橋に本社を置くフリーダムアーキテクツデザイン(FA)のLINE@施策。FAは年間370棟(2015年度実績)の注文住宅を扱うハウスメーカーだ※2。FAが抱える課題は、来場予約数や資料請求数。もともとWebへの流入には力を入れてきたが、その分、離脱ユーザーも多く、非効率的だった。

「離脱したきりとなる層が少しでもLINE@に登録してくれれば、ゴールへの道が残されるわけです。来場予約や資料請求をしたい場合、通例なら細かな個人情報の登録が求められます。これでは、仮に興味があっても、よほど積極的でなければ敬遠する方は多いでしょう。LINE@の登録だけで済むなら、個人情報入力が求められません(02)」

鍵を握るのが配信頻度。FAは、週に一度一件のみと限定配信を貫いている(03)。

ボタン一つで登録完了(1)

02 ランディングページにあるLINE@登録画面をクリック(左)、あとはボタンを押すだけで完了(右)

ボタン一つで登録完了(2)

03 自分の意志で登録した相手からの通知、しかもUI上の通知を解消したい欲求も重なって(左)、多くの登録者の開封率が期待できる。その前提を崩さないために、節度を保った配信が必要(右)

「施工例、展示会、メディア掲載など、各種の情報を厳選し提供しています。ただ、どれほど多くの出したい情報があっても、配信ペースは崩していません。なぜなら、配信はあくまで“きっかけづくり”だからです。その先の詳細情報にユーザーがたどりつくことがゴールです」

気にはなっている、というライトユーザー層をいかに取り込んでいけるか、である※3。FAのLINE@登録の年齢層は04を参照。30代以上が過半数を超えているのも特徴だ。

※2 全国に14事務所を抱える建築事務所 http://www.freedom.co.jp/

※3 LINE経由で毎月100件近いコンバージョン(資料請求)を得ているほか、最終契約者の約60%がLINE@登録者という結果(同社アンケート結果より)も出ている

LINE@登録の年齢層_フリーダムアーキテクツデザインの場合

04 (株)ギブリーの調査より。この結果からも、LINE=若者に特化したサービスでないことがわかる。同社では、LINE@から配信したメッセージ経由の平均クリック率が25%(一般的なメルマガ施策では難しい数値)を記録している

細部への気づかいでクリック率は高くなる

Webからの流入があればLINE@施策が成功するかといえば、そうではない。すでに配信回数に触れたが、他にもちょっとした気づかいで、数%単位でCTR(クリック率)が変わってくると、小谷田氏は解説してくれた。

「例えば、リンクしたいURLの冒頭にスマートフォンのアイコンがあると、ない場合より約1~3%CTRが高くなるという弊社の統計が出ています(05)。そのほか、メッセージを閲覧する際に、リンクの場所が画面の中央にきていると、そうでない場合より約5%CTRが高いという統計や、スマホ画面の中央からやや左上よりの場所がクリックされやすいという統計なども出ています(06)。つまり、スマホユーザー全般の特徴が統計にも現れていて、ユーザー目線と統計データを掛けあわせた配信もCTR対策になります」

素材や配置で大きく変わるクリック率(1)

05 メッセージ最後にURLを残す場合、スマホのアイコンを冒頭に置くだけでCTRが変わってくる

素材や配置で大きく変わるクリック率(2)

06 青のエリアが、ギブリーの統計で一番クリックされやすいエリア。片手(左)で操作する場合、親指が押しやすい場所に相当する。そのほか、写真は大きいほうがクリック率が上がるという調査結果も出ている

また、ランディングページのヘッダとフッタに「LINE@」登録ボタンを配置すると、両者のクリック率に違いが出ないという統計も出ているそうで、興味深い。

「弊社が手がける場合、フッタに登録ボタンを置くことが多いですね。その分、ファーストビューで飛び込んでくるヘッダには、もっと深い情報を掲載します。LINE関連は効果測定がしづらいという方もいますが、実際は各アクションに応じた測定が細かく可能です」

ユーザーへの気づかいにつながる機能も紹介したい(07)。特定のキーワードを入れると、自動返信してくれる機能のことで、ギブリーでも別施策で取り入れている※3。

「人力負担を減らせるメリットはありますし、メッセージを送る以外にもユーザーとのエンゲージを高められる施策を試しています」

※3 REISM(リズム)は東京23区を中心に事業を行う不動産会社 http://www.re-ism.jp/

自動返信機能でユーザーを待たせない

07 不動産ブランドREISM(リズム)のLINE@施策より。「賃貸」「相談」など特定のキーワードを入れると、自動返信で必要な情報を収集できる

 

どうしても新規獲得でLINE@を使いたい?

ここまでの取材を通して、改めてLINE@の最適な利用方法は、コミュニケーションを通じたユーザーとのエンゲージメント強化だとわかってきた。確かに、LINE@だけで新規獲得を目指すのは適していないのかもしれない。とはいえ、中小企業のWeb担当者に、LINE@の導入コストは敷居が低く魅力的なのは確か。そこで、新規獲得に絡んだ二つの可能性についても言及したい。

一つ目が、リアル店舗に集客力がある場合(08)。P051で触れた、LINE@を施策に取り入れる最適な条件にあてはまるケースについてだ。

Webに力を入れていなくてもLINE@が活かせるケース

08 リアル店舗で直接顧客と接する機会で、QRコード入りのカードやリーフレットを用意してLINE@アカウントの存在を周知できれば、LINE上でのコミュニケーションが可能となる

「店舗というタッチポイントが確立できているので、Webでの集客に頼らずLINE@への登録を促せる土壌があります。例えば、LINE@アカウントを書いた、QRコード入りのカードなどを用意すれば、お店のファンなら登録したくなりやすい。ここでLINE@への登録のしやすさがとても活きてきます」

二つ目が、まさしくゼロからスタートしたいケース(09)。小谷田氏はLINE@と他サービスとの連携を提案する。

「まずFacebook広告でランディングページに誘導し、そこからLINE@の登録を促すという導線です。Facebook広告はターゲティングができるので、メインターゲット層にセグメント化して配信すればいい。また、1万円からといった配信ができますし、連携によってスモールスタートがしやすいメリットはあります」

LINE@を開始したら、何でもすぐに効果が出るわけではない。ただ、使いどころや期間を定めて取り組めば、コスト以上の効果を得られる可能性を秘めたサービスなのだ※4。

※4 ギブリーの「おまかせプラン」(LINE@)を導入すると、初月が初期費用(20万円)+30万円(税抜)~。次月以降は月額30万円(税抜)~のみ。企画から運用までを含んだプラン提供がギブリーの特徴

新規獲得に「LINE@」を活用したい場合

09 LINE@はユーザーとの関係性強化に活用したい。集客から始める場合、すぐには結果が出づらい。認知と集客の両方について一定の時間を見ながら行いたい

 

Interviewee:小谷田 太河
(株)ギブリー 事業部長 https://givery.co.jp/
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