
巧みなSNS広告運用でDAUが半年で5.5倍に 犬・猫10秒動画共有サービス「モフール」
犬・猫動画共有アプリの宣伝にTwitter広告を選んだ理由
日常における癒しのパートナーとしてペットとの暮らしを求める人が増えている。その中でも特に人気が高い犬と猫に特化して、最大10秒というショート動画共有サービスを展開しているのが「mofur(モフール)」だ。
2015年12月にリリースされたばかりの同サービスを運営するのは、大阪に本拠地を置くソフトウェアデザイン・開発会社のフェンリル。この新規事業であるmofurの開発責任者である佐伯雅和氏に、SNS広告の運用とその実施結果について尋ねてみた。
そもそも、数あるSNS広告からTwitter広告を選んだ理由として「アプリ広告としての効率性(CPA)の良さ」「サービス内容とTwitterの親和性」「ユーザー獲得後のコミュニケーションの行いやすさ」が挙げられるという。
「当初は手探りで始めた部分もありますが、mofurアプリのインストールについてはFacebook広告やInstagram広告では費用対効果が悪かったという事情もあります。また、ユーザーのスマートフォン投稿動画という画質のクオリティを考えると、InstagramよりもTwitterのほうが相性が良かったのです」

3期にわたって展開されたTwitter広告の推移
mofurでは、サービス開始時から約9カ月間、同アプリのインストールを目的にTwitter広告を実施した。3カ月(四半期)ごとにその効果を確認し、キャンペーンの手法を見直して3期にわたって進めてきた。現在、投稿された動画は7,000本以上、累計再生は200万回以上となり、Webサイト版は月間PVが360万(8月実績)にまで成長を遂げている。
もちろん、広告施策と並行してサービス自体の改善があったことは見逃せないが、ここまで短期間での急成長にTwitter広告が果たした役割も大きいだろう。なお、月間インプレッションが3,000万に達して効率の追求も一段落したことから、現在はいったんSNS広告を停止してWebメディアに掲載するインストール保証型のネイティブ広告を実施している。
Twitter広告の一番のメリットはアクションへのつながりやすさにあると語る佐伯氏。
「広告を見てもらった後にアクションを引き起こすという点では、Twitter広告のほうが有利かと思います。Facebookでは『いいね!』は得られやすいのですが、アプリのインストールというところまで到達する率は低めでした」
サービス開始直後から展開された第1期(2015年12月~2016年2月)のTwitter広告では、オーソドックスに犬や猫のストックフォトを利用した静止画中心のキャンペーンを実施した。その結果、アプリのインストール数はそれなりに伸びたが、DAU(アクティブユーザー)や投稿数の伸びは期待したほどではなかったようだ。
「この段階でわかったのは既存のイメージ素材を使う場合、どのクリエイティブがウケるかは予測が難しいことです。クリックやインストールにまで誘導するには“ストーリー性”が重要で、例えば、一番反応がよかったのは神社の参道を歩く猫の写真に『どこにいくの?』というテキストを付け加えたものでした」
この第1段階でのクリエイティブ改善は効果が見えにくかったことから、SNS広告代理店の運営コンサルティングの助言も得ながら第2期のプロモーション展開へと続くことになった。

有名犬・猫コラボでダウンロード数&DAUが向上
Twitter広告プロモーション第2期(2016年3月~5月)では、より多くの犬・猫好きを巻き込んで認知度を高めるため、mofurアプリ内の「ユーザーフォロー」機能を追加するタイミングに合わせ、SNSで著名な犬・猫アカウントとのコラボ企画を実施することになった。そこでまずPR大使として起用されたのが、Instagramで圧倒的な支持を得る「柴犬まる」であった。このキャンペーンで期間限定動画の投稿を開始したところ、その直後にアプリダウンロード数は25倍、DAUは7倍へと増加。さらに、人気猫漫画家うだま氏をPR大使として迎えることで、ダウンロード数は5倍、DAUは13倍と大きな成果を上げた。

この提携相手の知名度の高さを借りたコラボレーション戦略は短期的にはもちろん成功であったが、すべてが目論見どおりにはいかず解決すべき課題も生じたという。
というのも、Twitterで人気のあるコラボ相手のファンは、すでにそのアカウントをフォローしているので、キャンペーンの周知を目的にした広告を打っても結果的には興味がそこまで高くない人向けへの周知になってしまい効果が薄かったこと、さらに持続的な効果を得るには新たなキャンペーンも実施し続けなければならないことが判明したのだ。サービスをグロースさせるタイミングを見計らって実施するのには効果があるが、継続的なキャンペーン実施は中小ビジネスでは負担になることも留意すべきだろう。
動画広告は効果アリ! 誘導先の改善も重要
第3期(2016年6月~8月)の広告キャンペーンではmofurに投稿された人気のユーザー動画を用いたクリエイティブの配信を開始した。ここでポイントになったのは動画とテキストの組み合わせである。
SNS広告の中でもTwitter広告は比較的くだけた表現が好まれるというイメージがあるが、実際に1つの動画に複数のテキストのパターンを組み合わせて実施したところ意外な結果が得られたという。
「いかにも広告的な表現から、動画の内容に合わせた表現まで4パターンを実施しましたが、広告的な表現のクリエイティブのほうがパフォーマンスが高かったのです。これはあまり予想していませんでしたが、おそらく思わせぶりなテキストよりはアプリの特徴や訴求したいメッセージが伝わりやすい表現のほうがよかったのでしょう」

Twitter広告の場合、配信のリアルタイム性は高いものの、顧客のタイムラインにどのようなシチュエーションで流れるのかは制御できないため、ツイート広告単体の完成度や整合性よりも、どのような場合でも伝わりやすい汎用性が重要なのではないかと佐伯氏は分析する。
また、キャンペーン全体を振り返って言えることは、Twitter広告単体のクリエイティブ改善だけでは、目に見える成果を上げることが思っていたより難しいということだ。
前述のコラボキャンペーンの実施やイメージキャラクター「モッフン」の作成はエンゲージメントの改善に有効で、「誘導先であるアプリストアのクリエイティブを見直す(掲載画像の変更)ことで30%ほどコンバージョンの改善が見られたこともある」という。


そして、Twitter広告では配信時に選択するキーワード選びも重要で、「犬」「猫」「ペット」という同サービスの内容から想像しやすいキーワードを基本にしつつ、フォロワーのプロファイルや発言内容などを参考に「文学」「アニメ」「エンジニア」といったキーワードを追加することで、より効率のよい広告配信が実現できたそうだ。
なお、同社でのTwitter広告運用体制については、部署7名のうち広告のクリエイティブ作成に従事したのは佐伯氏ともう1名、広告運用やコンサルティングについては外部の広告代理店に依頼し、計3名が中心となって行った。
キャンペーン全体を通してみると、月間動画再生は60万回と開始前の約8倍、月間PVは360万回と14倍、月間動画投稿数は5倍とTwitter広告の効果が認められる結果となった。


- フェンリル(株)事業本部 新規事業部 主任
佐伯雅和