運用効率バツグン LINE@のリピーター施策

個人情報登録という壁 LINE@で解決へ

「phocase」(フォケース)は、Webマーケティング事業を行う(株)ベーシックが運営する、スマートフォンアクセサリーなどを扱うECサイト。メインターゲットは20~35歳以下の女性層で、月間PVは260万を超え、ユニークユーザー数は月間約47万人(ともに2016年秋)にのぼる。

「phocase」(フォケース)とは?

(株)ベーシックが運営する、スマートフォンアクセサリーなどを販売するECサイト。1点からの販売対応できる体制、毎週5点の新規デザインカバーを公開するなどで、20~30代の女性層の人気を集めている

phocaseでは、検索を中心とした新規顧客の獲得をメインのマーケティング施策に据えていたが、既存顧客に対するマーケティング施策に課題を抱えていた。

「常に新しい商品を提供できる体制であったことから、メインターゲットとなる20代女性との最適なコミュニケーション手法を探っていました」(ベーシック・林侑平氏)

メールマガジンを使って既存ユーザーへの働きかけも行ってきたが、なかなか結果が伴わず、ターゲット層との親和性が高いLINE@の導入を決断。本格的な運用を始めた2015年夏から現在までに、「友だち」数が50倍以上に増加し、目標のコンバージョン(購買額)を達成している状況だ。

現在では、順調に自社運用の軌道に乗せるまでとなった。

 

本サイトのフッタにバナーを掲出 半年で友だち数が約28倍増

「phocase」の場合、もともとポテンシャルがあった背景はあるものの、友だち数が増加し、売上増を喚起できたのには、LINE@の特性をつかんだ知恵を実行してきたからこそである。ここから具体的な対策の中身を見ていく。

phocaseの課題を難しくしていた1つの要因が、メイン商材の特性だ。主力のiPhoneやAndroidなどのスマホケースは、なかなか頻繁に買い替える商品ではない。

「キャリア変更のタイミングで買い替える場合、2年に1度くらいの頻度になります。好きな方でも3週間に1度くらい。買い替えサイクルを考えると、戦略上、優先的に新規獲得へリソースを割きたい考えがあります」(林氏)

とはいえ、リピーター層や顕在層も無視できない一定数を抱えていた。そこで、利用層との親和性のほかに、囲い込みツールとしても力を発揮しやすいことから、LINE@正規代理店のギブリーと1年の提携を結び、2015年7月から運用のテコ入れを開始した。

「2014年にアカウントはつくられていたものの、友だち数が約450名という状況でした。直近の課題として、友だち数を向上させて、配信後のサイト流入数を根本的に引き上げることと設定して、phocaseのLINE@アカウントを周知させる施策を打ちながら、配信内容を改善していくようにしました」(ギブリー・小谷田太河氏)

そこで、本サイトのフッタにLINE@アカウントを周知させるバナーを設置。効果は顕著で、2016年1月時点で1万人超えを達成した。LINE@経由のコンバージョンが、LINE@以外の流入ユーザーより2倍近く高いというデータも出るようになり、個人情報なしで即登録できるLINE@の気軽さが、“気が向いたら購買を検討したい”という顕在層にフィットした。

LINE@運用前後の友だち数の変遷

LINE@アカウントを伝えるバナーの設置と、スクロールせずに閲覧できる分量での配信を徹底し、友だち数が増加。本格運用前から2016年1月に約28倍、10月現在では約50倍となった

 

売上に寄与する配信回数や内容への配慮

もちろん、友だち数の大幅増加の背景は、フッタのバナー設置とともに行った配信内容の改善が大きく寄与している。

「当初は配信頻度がまちまちで、内容を優先して長いコメントを配信していました。それらを改めて、配信サイクルは週二回と定め、スクロールしないで見られる長さを徹底するようにしました」(小谷田氏)

回数や中身は、配信を重ねながら並行してデータ検証を進め、より確度が高く売上に貢献するベストバランスを模索したという。

「商材の特性を考えると、定期的な配信にも細心の注意が必要でした。かといってあまり控えていると、ブロック数が抑えられたとしても売上の機会を損失しかねません。そこで、ギブリーさんと連携しながら、ブロック数と売上の兼ね合いが最善となる配信頻度のバランスを、検証を重ねながら見出すようにしました」(ベーシック・佐藤美侑氏)

ブロック数と売上から勝ち筋バランスを探る

配信回数が少ないとブロック数は抑えられるが、ユーザーへの働きかけも減り、売上にも響く。商材の種類、配信内容も加味して、最善の組み合わせを探すと、phocaseは週2回が最高の成果だとわかった

配信の中身は、先に触れたとおり短めを徹底し、ペルソナとしてiPhone 5やiPhone 6所有ユーザーを意識。小さめのスマホ画面でも完結して見られる短さ、といった具体像を想定したり、スマホカバーの新着デザインについて、画像のある/なしで条件を分けて、コンバージョン(購買)の高さを検証していった。

「画像の有無については、売上額で見ると、私たちの場合は変わらずでした。画像ありだと、わざわざサイトに遷移しなくていい、と思うユーザーが増えた一方で、来訪ユーザーは購買目的が多い傾向が見られました。CTRやCVRは相関性があるので、CTRだけ、CVRだけとつまんで検証しないようにしています」(林氏)

配信の中身とコンバージョンの関係性

配信パターン別で、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン=購入)の相関性を見ながら「効果の高い配信」を模索。phocaseの場合、画像の有無で率の違いは出たものの、売上額に違いは出なかった

 

勝ちパターン確立で効率的にLINE@を運用する

phocaseは、2016年10月現在でLINE@の友だち数が約2万4,000人。週2回の配信で、1回あたり10~20人、1カ月で約300人のコンバージョンを確保するようになり、毎月確実に100万円超えの売上を達成し、安定した運営の軌道に乗せている。今年8月から吉田一貴氏がマネージャーとして全体を統括しつつ、基本は佐藤氏1名が運用全般を担当、サポートでアルバイト1名という体制をとっている。

つまり、phocaseの現状は、LINE@での運用サイクルをほぼ確立できたことで、必要最低限の人員を充てた自社運用を確立し、残りのリソースを新規獲得対策に注力できている。

「定期的にフローティングバナーも活用するようにして、2016年に入ってからも友だち数の増加に努めてきました。さらに1万人以上を効率よく増やし、現状のユーザーに継続的に質の高いコミュニケーションを行うことが今のフェーズです」(ベーシック・吉田一貴氏)

フローティングバナー

2016年からは、スクロールに追従するフローティングバナー(囲み部分)も定期的に活用したことで、1月時点から友だち数がさらに1万人を超えて増加した

「ユーザー目線の運営が大前提です。少ない人員ながら、ユーザーとのコミュニケーションには、自動返信機能も使い、ユーザーがより望んだページに遷移できればと考えています。今後も“ここぞ”という場面に合わせて最適な人的リソースをそそぐ予定です」(佐藤氏)

自動返信機能の活用

特定のキーワードに自動返信できる機能を使って、ケースデザインのパターンを質問。よりユーザーの望みに沿ったランディングページへと誘導している

今後、LINEプラットフォームで購買を含めて完結できる仕組みが整備された場合、LINE@専用のオリジナルランディングページを用意するなど、「次のフェーズへの意向も徐々に視野に入れたい」(林氏)とも話してくれた。次に向けて余裕を持ちながら備えられるのは、phocaseが明確な目的のもと効率的なLINE@運用で、成果の継続に成功しているからなのだ。

 

(株)ベーシック EC事業部 ガジェット部 部長

林 侑平

https://basicinc.jp/
(株)ベーシック メディア事業 ガジェット部 マーケター

佐藤美侑

 
(株)ベーシック EC事業部 ガジェット部 マネージャー

吉田一貴

 
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