
[いきなり!ステーキ]リピートに繋げる、いきなり!ステーキの電子決済戦略
電子決済のインセンティブが呼んだ想像以上の反響
美味しいステーキを食べたい量だけ、立ち食いで食べるという斬新なコンセプトで、2013年の創業以来、急速な成長を続けるペッパーフードサービスの「いきなり!ステーキ」。
第一号店のオープンからわずか3年8か月にもかかわらず、今や全国に142店舗(2017年8月4日現在)。その急激な成長の一つの要因となっているのが、独自に発行している電子決済機能付きのカード「肉マイレージカード」だ。カード導入のきっかけを、同社の取締役を務める川野秀樹さんは次のように説明する。
「いきなりステーキはオープン以来、おかげさまで非常に多くの方にご利用いただくことができたのですが、いきなりステーキの特徴は、何度も足を運んで下さるリピーターの方が非常に多いこと。しかも、昨日は何グラム食べたと、楽しそうに話して下さる。そこで食べていただいた肉の量を記録できるようにしたら喜んで頂けるのではと考えたのが、肉マイレージカードの始まりです」
同店ではオープン当初から交通系や電子マネーに対応していたことから、「肉マイレージカードにもプリペイドカード機能を持たせるのは、当初からの予定」だったと川野さん。しかし、食べた肉の量を記録できるというカードのコンセプトを強く打ち出すためにも、プリペイド機能はカードのスタートから1年ほど遅れて追加。とはいえ、当初はプリペイドへの入金はそれほど期待していなかったという。しかし、いざプリペイド機能をスタートすると、想像を大幅に超える入金があったという。その理由を川野さんはこう分析する。
「一番大きいのは、やはりインセンティブだと思います。いきなり!ステーキはランチタイムでも1,000円以上と、決して安い価格帯ではありません。でも、何度も通いたいから、少しでもお得に利用したいというお客様が非常に多かったのだと思います」
肉マイレージカードは、3,000円以上の入金で1%、5,000円以上で2%、10,000円以上の入金で3%のインセンティブを受けられるのが特徴。それがリピート率の高い客層に広く支持されたのではないかと川野さんは言う。
それを象徴するのが、2016年2月に実施した「肉の日・5倍デー」だ。これは2月9日と、毎月29日に入金すると、いつものインセンティブが5倍になるキャンペーン。すると、大きなPRはしていないにもかかわらず、通常の10倍を超えるチャージがあったという。また、2014年7月からは同店のアプリ「いきなり!肉マイレージアプリ」もリリース。アプリでは、これまでに食べた肉の量がわかるだけでなく、全国ランキングも表示。さらに2017年4月からは、それまでプリペイドカードへの入金は店頭での現金入金のみだったのが、アプリからのクレジットカード入金にも対応。これによって、さらにチャージの頻度も上がったという。

「いきなり!ステーキ」のWebサイト。迫力ある肉の画像が印象的。肉へのこだわりのほか、肉マイレージカードも大きく扱っている。ペッパーフードサービスのECサイトにもここからアクセス可能

「いきなり!ステーキ」の内観。基本は立ち食いだが、最近は椅子を導入している店舗も増えている
プリペイド機能だけではない、肉マイレージカードの仕組み
決済機能を持たせた肉マイレージカードが、ファン作りと売り上げアップなど、大きな効果を生んでいる「いきなり!ステーキ」。店舗における独自型電子決済導入のメリットを川野さんはこう説明する。
「うちのようなプリペイドカード方式の場合、一度入金すれば、たとえば給料日前でも利用していただきやすくなりますし、部下や同僚にもご馳走しやすい。何度もリピートして頂ける理由の一つに、肉マイレージカードがあるのは間違いありません」
現在、肉マイレージカードの発行枚数は、約200万枚。うち、会員登録者数は33万人。店頭でカードにチャージするだけなら会員登録は必要ないが、会員登録することで、ドリンク無料や、誕生日月のステーキプレゼントなども用意している。特にこれらのキャンペーン情報などをアプリでプッシュ通知することで、利用率も高まっているという。
また肉マイレージカードは、何も登録しなくても使えるが、会員登録やカードへのチャージ、食べた肉の量によって、カードをゴールドやプラチナ、ダイヤモンドへとランクアップさせることができるなど、カードの機能を使っていくことで、受けられるインセンティブを段階的に用意しているが、それにも理由がある。
「肉マイレージカードには、これまでに食べた量や全国のランキングがわかったりするほか、チャージ機能や会員特典など、さまざまな機能があります。でも、それを最初からすべて伝えることは難しい。お客様が興味を持って会員登録してくださったり、チャージなどのアクションをすることで、いきなり!ステーキが提供するサービスをより深く体験できるようになっているんです」
一方で、肉マイレージカードによって得られる情報の活用には、これ以上分析する必要がないと考えている。
「もちろん、会員登録して頂いた方へのメールマガジンやキャンペーンのお知らせなどはしていますが、それ以上の利用は今のところ考えていません。それよりも肉マイレージカードの利用や会員登録によって、いきなり!ステーキの良さをもっと知って頂きたいと考えています」


肉マイレージカードは、食べた量によってメンバーズカード、ゴールドカード、プラチナカード、ダイヤモンドカードとランクアップするのが特徴。ランクによって、会員特典も豪華になる仕組み
ECにも及ぶ効果
いきなり!ステーキと肉マイレージカードの効果は同社のECサイトにも及んでいる。
「それまでは正直、あまり成果が出ていなかった」という同社のECサイトだが、2016年6月から「いきなり!ステーキ」の商品を扱うようにし、Webサイト上でも大きくPRしたところ、ECの売り上げは大幅アップ。現状では肉マイレージカードでECサイトの支払いはできないが、それも検討しているという。
「ECサイトでの肉マイレージカード利用を導入すれば、これまで以上に売り上げも期待できると思います。いきなり!ステーキは非常にファンが多い店舗ですが、『ファンになっていただける環境』を作っている要因の一つに、肉マイレージカードがある。ECでも使えるようにすれば、よりお客様の利便性も高くなるでしょう」
電子決済機能を持たせたプリペイドカードに、さまざまな仕掛けを作ることで、ユーザー拡大に繋げている「いきなり!ステーキ」。ぜひ電子決済利用のヒントにしてほしい。

「いきなり!ステーキ」の商品取り扱いを始めたところ、ECの売り上げも大幅にアップ。ギフト用として、チャージ済みの肉マイレージカードを購入することもできる

「いきなり!ステーキ」のアプリのトップ画面。これまでに食べた肉の量がマイレージとして表示されるほか、全国ランキングもわかる

「いきなり!ステーキ」の会員証画面。アプリをインストールすることによって、カードレスでの支払いも可能になっている

- 川野秀樹_Hideki Kawano
- 株式会社ペッパーフードサービス 営業企画本部長 取締役