CMSで実現したリード獲得と新たな営業フロー

CMS導入・刷新の理由として、コンテンツマーケティングを挙げる企業も多いのではないでしょうか。CMSを使うことで、どのようなことが可能になるのか? どのような課題が生まれるのか? 共同印刷が運営するメディアから考えます。


神 香澄
共同印刷株式会社 プロモーションメディア事業部 営業推進部営業推進グループ マーケティングチーム リーダー
「Hint Clip」 共同印刷

CMSの刷新でコンテンツマーケティングを強化

出版からパッケージの印刷、ICカードや包装材料まで多種多様な製品、ソリューションを手がけ、幅広い客層を持つ共同印刷株式会社。同社のプロモーションメディア事業部が2015年10月にスタートさせたのが、販売促進担当者に向けて発信するオウンドメディア「Hint Clip」だ。ローンチ以来、ユーザーを着実に増やし、オープンから約2年後、2017年7月にリニューアルを実施。CMSの刷新とデザインの大幅なリニューアルを行った。

「弊社は2017年6月に創業120周年を迎えました。そのタイミングでオウンドメディアとしての発信力を高めたいという理由から、リニューアルを実施しました。以前は別のCMSを使って構築していましたが、機能を追加しようとするとプラグインとの相性で問題があったことや、よりコンテンツマーケティングを重視したメディアに育てたいという思いもあり、CMSの変更を決めました」

こう話すのは同社のプロモーションメディア事業部 マーケティングチームのリーダーを務める神 香澄さん。CMSの刷新にあたって重視したのはオウンドメディアとして発信力を高めていくことに向いていること。そして検討の結果、コンテンツマーケティングに強いイノーバが提供するCMS「Cloud CMO」を導入。

現在は共同印刷が提供する幅広いソリューションを、販売促進担当者に向けて週に2回、発信している。

「オウンドメディアということもあって、日常的に一番使っているのは、ブログ機能です。CMSでは日常的に扱う機能が使いやすいことがまずは重要だと思います。発信するコンテンツに関しては、スタート直後からイノーバさんにノウハウを教えてもらいながら進めたこともあり、ずいぶんコツを掴めてきたと思います」

初心者でもスムーズにWeb更新と情報発信が可能

Hint Clipでは、同社のソリューションに関連した資料のダウンロードをコンバージョンとして設定。情報発信のほか、リニューアル後から開始したメールマガジンへの誘導なども実施している。

「ブログ機能のほかによく使うのは、資料ダウンロードのためのファイル管理や、人気コンテンツのチェック、メールマガジンの作成などです。Hint Clipではメールマガジンも配信していて、その登録への誘導にも力を入れています。メール配信やWeb上で取得した顧客情報の管理などはSFA・MAツールとして『Salesforce』、アクセス状況の細かな分析は『Google Analytics』とツールを使い分けています」

今でこそCMSを使った情報発信に慣れてきたという神さんだが、以前は同社で営業を担当。CMSをさわったことがなく、当初は不安だったと振り返る。

「ITはあまり得意ではないので不安がありましたが、操作に関してはすぐに慣れることができました。ブログ機能などを使うのは私1人ですが、ファイルのアップロードなどはほかのスタッフも戸惑うことなく使えています」

CMSと他のツールとの使い分け

Hint ClipではCMSで使う機能をある程度絞り込み、ほかのツールと使い分けることで、業務の効率化を図っている

CMSを使ったメディア運用でリードナーチャリングを実現

リニューアルから約1年半。新たなCMSによるメディア運用と、展示会やセミナー、広告、インサイドセールスなど、さまざまな展開の相乗効果によって「これまで弱かったリード(見込み客)の獲得とナーチャリング(見込み客の顧客化)が実現できています」と神さんは言う。

「既存のお客様とは各営業担当者がコミュニケーションをとっていますが、短期的な売り上げにつながりにくいリードの獲得はどうしても後回しになりがちでした。ですが、CMSを使ってメディアを構築し、情報を定期的に発信することで、例えば資料をダウンロードしてくださったお客様の情報を営業担当者につなぐことで、これまでできなかったリードの獲得や、新規のお客様へのアプローチの効率化が実現できています」

またメディアを運用することで、ブランディングや顧客の課題の気づきにもつながっている。

「メディアを構築して、データを取得する前は『こういう課題を持っているお客様もいるだろう』と想像することはできても、その裏付はできませんでした。でも、どんなコンテンツにアクセスが多いのかがわかれば、その裏付けになります。また予想以上にアクセスが多いコンテンツを見ていけば、お客様のニーズや課題が見えてくるのも、新しい発見でした」

マーケティングに最適なCMSで作業効率アップ

Hint Clipでは、カタログダウンロードのバナーやメールマガジン登録バナーがサイドバー部分の目立つ場所に置かれている。差し替えもCMS上で容易に行える
もちろんマルチデバイスにも対応。1度の作業で各デバイスに最適化される

CMSを起点にした営業フローの実現

さらにHint Clipでは、Web上へのアクセスを増やしたり、獲得したリードを売り上げにつなげるための工夫も行っている。

1つはコンテンツを印刷して冊子にまとめ、展示会などで配布するアプローチ。

「ふだん、自分が何かを調べているときでも、どのメディアを見ているかというのはあまり意識していません。ですから、Webのコンテンツをまとめて展示会などで配布することで、メディアの認知向上にもつながると考えました。紙になると、営業ツールとしても使いやすいというメリットもあります」

もうひとつが、Webサイトで集客した顧客向けセミナーの実施だ。

「せっかくCMSを使ってメディアを運営したり、リードが獲得できていても、それだけでは売り上げに結びつきません。そこでメールマガジンに登録してくださっているお客様向けのセミナーを開催することで、お客様とリアルなコミュニケーションがとれますし、その場で営業担当につなぐこともできます。私たちのビジネスはBtoBのため中長期的なアプローチが必要ですが、Hint Clipがあることで新規のお客様へのアプローチが増え、少しずつ売り上げにもつながっています」

一方で、課題は社内への認知です。

「現状では、CMSを活用したマーケティングを評価する人と、売り上げに直結するわけではないという意見を持つ人が半々です。ですから、今後は社外向けの認知向上はもちろん、社内向けにメディアの目的や、できることをもっと伝えていく必要があると思います。理想は営業の担当者から、こういうコンテンツを発信してほしいというリクエストがくることです。それを発信して、お客様への営業ツールとして使ってもらったり、CMSで取得したデータから、お客様の課題を推測して営業担当者に伝えるなど、こちらから働きかけもしていきたいと思っています」

メディア運用とさまざまな展開を組み合わせることで、リードの獲得や新たな営業フローを実現し、売り上げにも結びつけている共同印刷。CMSを使ったコンテンツマーケティングやオウンドメディアの運用を考えている企業には大きなヒントになりそうだ。

CMSを使ったメディアを起点にした営業フロー

Webサイトに訪れた見込み客を、セミナーで営業担当者につないだり、Web上のコンテンツを営業ツールとして使ったりと、CMSによるメディアを起点に、新たな営業フローを構築している

Text:奥田高大

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