
【デザイナー3年目の教科書】「なぜ?」を大切に、“小さな成功体験”を積み重ねよう。加藤千歳さん(BISCOM)に聞いた「スキルアップ」するためのコツ
新たな役割や課題に直面し、デザイナーとして次のステップを意識し始める“3年目”。第一線で活躍するデザイナーたちは、3年目に必要なスキルや視点をどのように身につけ、乗り越えてきたのでしょうか。長年のデザイン経験から、デザインプロセスの言語化を得意とするBISCOM・加藤千歳さんに、「スキルアップ」にまつわるアドバイスをいただきました。
答えてくれた人

加藤 千歳さん(BISCOM)
ディレクター/アートディレクター。山梨県甲府市のWeb制作会社、株式会社BISCOMの代表取締役。独学でWeb制作をはじめ、フリーランスのWebデザイナーを経て、2016年にBISCOMを設立。現在はWeb制作のみならず、印刷物やロゴ作成、Webコンサルティングやブランディング、企業の総合的なサポートを行っている。
スキルアップするには、とにかく“つくる”しかない
デザインスキルを高めるためには、手を動かすことが大切です。ポイントは、架空の商用サイトなど仕事を意識したものではなく、自分のテンションやモチベーションが上がる個人サイトをつくることです。趣味だったり、推し活だったり、好きなものを対象にすると、湧き出てくるアイデアやこだわりも違ってきます。
夢中になってつくるうちに、「こんな表現をしたい」「こんな機能を入れてみたい」などと難しいことにも挑戦したくなります。その結果、妥協や諦めから遠ざかり、スキルアップへとつながるはずです。

モチベーション維持のポイントは、“小さな成功体験の積み重ね”
一生懸命努力していても、自分のスキルがなかなか理想に届かなかったり、まわりの人のデザインと比べて落ち込んだりすることもあると思います。しかしコツコツ続けていれば、必ず成果(スキルアップ)につながるはずです。
トレンドや世の中の流れを掴むための情報収集も大切ですが、まわりに囚われ過ぎず、長期的な目標に向かって、目の前の仕事に向き合ってみてください。モチベーションに波があるという方は、先に紹介した“自分の好きなサイトをつくること”がとてもおすすめ。なぜなら、自分の世界観の中で誰にも邪魔をされず手を動かすことができるので、小さな成功体験が積みやすいんです。
次第に自分で自分を認める習慣が身につき、モチベーション維持の原動力になるでしょう。
「なぜ」を深掘りする癖をつけよう
若手デザイナーの方からは「自分のデザインがしっくりこないけど、違和感の正体がわからない…」といったお悩みをよくお聞きします。自分で違和感の原因に気がつくことが難しい場合は、まわりの方にフィードバックをもらって原因を解明することがベストです。
とはいえ、「チェックバックを受けられる環境がない」という方も多いと思います。その場合、あらゆるデザインを細かく分析する作業を行ってみましょう。
「なぜこの配色なのか」「このあしらいはどんな意味があるのか」など、「なぜ」を深掘りする癖をつけることで、気づきの視点を増やすことができます。よいと感じるデザインを積極的に分析して、その基準を自分の中に構築してみてください。
加藤千歳さんが「3年目の自分」にメッセージを送るなら…
私が3年目のときは、個人サイトを夢中でつくっていました。当時の自分に声を掛けるとすれば、間違いなく「そのまま、好きなサイトを好きなだけつくって!」です。
たくさんのサイトを夢中でつくるうちに、多くのことを経験し、自分自身の力で学ぶことができました。もちろん失敗もたくさん味わいましたが(笑)、いま振り返ればよい経験だったと思います。また、フリマアプリやnote、ストックイラストなど「ネットで売る」経験もぜひ、と思います。ユーザー視点を持つことの重要性や、マーケティングやビジネスの全体像を知るきっかけとなり、成果につながる視野を養うことができますよ。
Text:掛谷泉、横塚瑞貴、室井美優(Playce)
※本記事は『Web Designing 2025年2月号』の掲載記事を一部引用・再編集しています。