次世代のデザイナーに欠かせない要素とは

デザインの価値が低く認識される日本

この10年を振り返ってみると、スマートフォンの登場により、インターネットが世に出た時以来の大きな変化が起こった時代だったと言えます。ビジネススクールでデザインシンキングは必須になり、近年では日本のスタートアップでもCXO、CDO、CCOなど「ユーザー体験」や「デザイン」に責任を持つ役員が急増しています。

日本はGDP世界3位でありながら、デザインへの投資額は米国の約6分の1であることから、未だにデザインの価値に対する認識が低い状況がおわかりいただけるでしょう。

デザインへの投資額が低いということはつまり、日本のデザイナーの給与はいつまで経っても上がらないということです。デザイナーの価値を底上げすることで、給与を上げ、憧れられる職業にしていく必要があります。そして、経営層に対してもデザインの価値を理解してもらい、投資を促す必要があります。

自ら領域を超えるデザイナーへ

では、どのようにしたらデザインのの価値に対する認識を高めていけるのでしょうか。2018年のデザイナーに求められる領域の変化に沿ってご紹介します。

数年前までは、きれいなモノをつくれればそれで良いと思っている、ビジュアル志向のデザイナーが市場から重宝されました。コミュニケーションスキルが低くても、プログラミングやビジネスなどの他領域に興味がなくても、デザインの意図をロジカルに語れなくても、デザイナーの仕事は絶えず存在しました。しかし、Webサービスやアプリが飽和状態になり、デジタルネイティブと呼ばれる若者たちが消費者となってきた2018年のいま、デザイナーは自ら“越境”していく必要があるのです。

上図は、私たちグッドパッチのデザイナーが日々手がける仕事の範囲です。では、経営からユーザー視点まで、ビジネスの幅広い範囲を行き来する次世代のデザイナーは、どのようなマインドセットを持っているのでしょうか。今回は、僕が現時点で必要だと思っているものを8つ紹介します。

1. アントレプレナーシップ(起業家精神)

自分がいま身につけているスキルや資源が足りなくても、自ら道を切り拓くチャレンジングな姿勢を持っている。

2. リーダーシップ

プロダクトを開発するチームをリードし、クリエイティブに関しても適切な判断ができる。

3. 領域を超える

問題解決のために、自分の仕事を狭い範囲に限定せず、デザインとビジネス、エンジニアリング、マーケティングなど違う分野への好奇心や視点を持つ。

4. 翻訳力

領域の異なる相手への理解を示し、相手が使う言葉にあわせて言語化できる。短時間で相手の業界を知るための努力ができる。

5. ビジネス(成果)へのコミットメント

PL(損益計算)を理解し、責任を持ち、目的達成のためであれば愚直にやり切る強い意思を持っている。

6. 再現性

デザインとビジネス結果の関係性を紐解き、デザインでビジネスを成長させる法則を解き明かすことができる。

7. バランス感覚

経営視点とユーザー視点をはじめとして、具体と抽象、定量と定性、論理と感性など反対の概念の往復ができ、フェーズやシチュエーションによって使い分けることができる。

8. Whyと情熱 

表層的なものでなく、泥臭く一次情報を取りに行き、ユーザーの課題などの本質を見極め、「なぜそれをすべきなのか」を情熱を持って語ることができる。

私たちは今、業界を挙げて日本人のデザインへの認識を変え、デザインやクリエイティブのことを理解し、経営的な意思決定ができるデザインマネジメント人材を育てていかなくてはなりません。

私はこれからの時代に必要なデザイナー像を再定義し、デザイナーの領域を広げ、新たなデザイナーのスタンダードをつくっていきたいと思っています。

 

土屋尚史さん
株式会社グッドパッチ 代表取締役
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