
決済導入でマーケティング力をアップする
電子決済で業務効率化とカゴ落ち防止
電子決済の導入には、他ページのようにさまざまなメリットがある。では実際に導入することで、売り上げやマーケティングに、どのようなメリットが期待できるのか、ここではその側面を見てみよう。
決済代行サービスを提供するソフトバンク・ペイメント・サービス(株)の長田直樹さんは、電子決済を導入するメリットを次のように挙げる。
「電子決済を導入するビジネスには、大きく2種類あります。1つは、飲食店など、リアルな店舗を運営する企業。もう1つは、ECやWebサービスを提供するオンラインのビジネス。リアル店舗における導入メリットは現金の受け渡しを減らすことで、業務効率が上がり、売り上げと現金があわないといったミスを減らすことができます。一方、ECでは、ユーザーが利用する決済手段の幅を増やすことで、カゴ落ちを減らすことにつながります」
ただし、電子決済を導入する上で知っておきたいのは、広く普及しているSuicaやEdyなどの電子マネー決済や、最近、注目を集めているキャリア決済を導入しても、ユーザーの個人情報は得られないということ。電子決済はあくまでお金のやりとりをするだけであって、利用者の名前や年齢や住所、性別などの個人情報を導入企業が得ることはできない。そうした個人情報は、各店舗が独自に会員登録や配送に必要な情報として、ユーザーに登録してもらう必要がある。なかには「キャリア決済」や「ウォレット決済」「Amazon Pay」のようにユーザーのメールアドレスや住所など一部の情報が連携できる場合もあるが、まだ一部の決済手段に限られている。
導入に際しては、各電子決済提供会社の審査があるが、ここで重視されるのは、取り扱い商品やサービスの内容。企業の規模や売上金額などはあまり関係がないという。そのため、小規模の事業者でも、電子決済を導入することは可能だ。電子決済導入には、クレジットカード決済を基本として、他にどの決済方法を採用するかが重要と覚えておこう。
マーケティング重視ならインハウス型
マーケティングとしての活用を重視して電子決済を導入するなら、広く使われている電子決済ではなく、インハウス型(独自型)と呼ばれる電子決済を検討する方法もある。インハウス型とは、自社ブランドやグループ店のみで利用できる電子マネーのことで、大手コーヒーチェーンなどで導入されているのが有名だろう。独自カードごとに入金や決済の必要があるため、さまざまな店を利用するユーザーにとっては利便性が高いとは言えないが、ブランド力やリピート率の高い店舗であれば、ユーザーとのエンゲージメントを高める手段として有効だろう。
「インハウス型のメリットは、ユーザーの囲い込みが期待できることと、登録やチャージの際に、個人情報を入力してもらうことができるので、その後のキャンペーンなどに活用しやすいことがあげられます。ただ、広く利用されている電子決済とは異なり、導入費用が高くなりますし、Tポイントのように『あのポイントがたまっているから、この店で利用しよう』といった外部からの流入は期待できなくなります」(長田さん)
また、他の電子マネーと異なり、独自型電子決済の場合、利用やチャージに際して、インセンティブをつけやすいこともメリットだ。

汎用型電子決済と独自型電子決済の特徴を、○、△、×の三段階で評価。運営する店舗やECサイトの特徴にあわせて、選ぶといいだろう
利用者データにあわせた電子決済で売り上げアップ
では、電子決済の導入によって、売り上げアップに繋げるには、どのようにするとよいのだろうか? 長田さんは、そのカギは利用者データの活用や商材、ターゲットと電子決済の特徴を結びつけることだという。
「例えばこれまでの利用者に学生や主婦の方が多いという情報を持っていれば、キャリア決済を導入することで、大きく売り上げアップにつながる可能性があります。なぜなら、学生や主婦の方には、クレジットカードを持っていない方も多いため、キャリア決済を導入することで、新たなユーザーを取り込むことができるからです。ほかにも、Yahoo!ショッピングや楽天、Amazonなどをよく使っているユーザーが多いということがわかっていれば、そうした決済方法を導入することでも売り上げアップを期待できるでしょう。実際、弊社の導入先で、若年層向けの商材を扱うECでは、キャリア決済を導入したことで20%近く、売り上げが上がったケースもあります」
ここ最近、急速に導入が増えているキャリア決済の一番の特徴は、「クレジットカードの紐付け」がなくても利用できることだ。たとえば、クレジットカード決済だけを導入する場合は、クレジットカードを持っていないユーザーは購入できない。しかし、キャリア決済の場合は、クレジットカードを持っていなくても、携帯電話料金の支払いに合算できる。さらに、ECサイトで購入する際に都度、支払い情報を入力する手間もはぶけるのも利点だ。そのため、若年層や、クレジットカードを持たない主婦層や高齢者など、これまでECを利用しづらかったユーザーにも使いやすい決済方法になっているという。
長田さんによると、若年層・主婦向けの商材を扱っているECや店舗なら、キャリア決済。幅広い層をターゲットにしていたり、ECでしか手に入りづらいなど、ネット通販慣れしているユーザー向けの商品を扱っている場合は、Yahoo!ウォレットや楽天ペイ、Aamzon Payなど、モール系決済を導入するのがおすすめだという。
自社の商材やターゲット、現在のユーザー層にあわせた電子決済方法を導入することで、大きな売り上げアップにつながる可能性があるのだ。

店舗が取り扱っている商材やサービスにあわせた電子決済を導入することで、売上げアップが期待できる。どの電子決済を導入すればいいのかわからない場合は、電子決済代行会社に相談するのもいいだろう
マーケティングサポートをする動きも
電子決済導入にさらに付加価値をつけようとする動きもある。ソフトバンク・ペイメント・サービスでは2017年8月から、導入企業に向けて、マーケティングのサポートも開始。これは決済サービスを導入している加盟店向けに、プレスリリース配信サービス「@Press(アットプレス)」が利用できるマーケティング支援プランを提供するというもの。通常であれば1本3万円かかるプレスリリースの配信が、3本まで無料になるというものだ。
「せっかく電子決済を導入してユーザーの購入のハードルが下がっても、集客方法がわからないというお客様が非常に多い。そうした悩みをサポートする目的で、今回のサービスを始めました」(長田さん)
売り上げアップに繋げるためには、ユーザーの選択肢を増やす上で電子決済は非常に有効。しかし、それはユーザーの特性やターゲットを考えた電子決済の種類と、さらにそうした取り組みを広く認知してもらう必要がある。上手に組み合わせて、電子決済を売り上げアップに繋げていこう。

ソフトバンク・ペイメント・サービスが2017年8月下旬から提供するサービス。同社の電子決済サービスを利用することで、プレスリリースを配信することができる。 プレスリリースはWebや雑誌、新聞などさまざまなメディアに配信され、それを目にしたメディアの担当者が記事にすることで、読者に情報を伝えられる仕組み

クレジットカード決済から、キャリア決済、コンビニ決済など多彩な決済手段を一括導入可能なサービスを提供している

- 教えてくれたのは… 長田 直樹
- ソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社 営業本部 加盟店事業推進部 部長