レスポンシブWebデザインが時代遅れになる!?

PCのWebブラウザで利用することからはじまったあらゆる個人向けサービスは、スマートフォンへの対応が迫られてきた。「PCが主、スマホが従」から「モバイルが主、PCが従」という「モバイルファースト」も当たり前になりつつある。一方、グローバルレベルでみると、スマホのみで利用する「モバイルオンリー」ユーザーの増加という新しい現象が注目されている。

Facebook (FB)は四半期の決算資料でMAU(月間アクティブユーザー数)を継続的に公表している。2015年第4四半期(10~12月)は15.91億人であった。注目されたのはMobile-only MAU(モバイルのみで利用するユーザー数)が8.23億人(51.7%)と、初めてMAU全体の過半数を超えたことだ。2013年第1四半期には1.89億人(17.0%)に過ぎなかった。

このモバイルオンリーユーザーの増加には二つの要因がある。一つは、新規ユーザーがアジアなどの新興国で増えていることだ。これらの国では家庭にはPCがあまり普及しておらず、ネットへのアクセスはスマホのみというユーザーが多い。彼らにとって、FBはスマホネイティブなサービスなのである。

デバイス別のMAU(Monthly Active Users)を見ると、モバイル経由の総数が、時期を追うごとに全体の総数に限りなく近づいている(グラフ中のQは四半期の意味。PCに関する数値は発表資料より計算して算出)
出典:Facebookの四半期レポート(2016年1月27日発表) 

もう一つは、PCとスマホを併用してきた既存ユーザーが、次第にPCを使わなくなってきたことの影響だ。以前はPCでも使っていたFBやTwitterも、最近はスマホからという読者は多いだろう。MAUからMobile-only MAUを差し引いたPC MAU(PC利用のアクティブユーザー数)は7.68億人で、2013年第1四半期の9.21億人から2割近く減少している。PCのみのユーザーは1.49億人で全体の10%を切り、下落傾向が続いている。

こうした変化はFBだけに限らない。緩急の差はあっても、ニュースメディアでもECでも起こることは確実である。PCとスマホの最適化を同時に目指すレスポンシブWebデザインにはどうしても制約がでる。PC対応を後回しにしてでもスマホに100%最適化すべきという考え方も増えてくるのではなかろうか。

 

Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
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