【イベントレポート】AI時代のマーケティング実務を再設計──MA講座で学ぶ、顧客理解と分析の最前線

株式会社D2Cと株式会社マイナビ出版は、マーケターを対象とした全4回の講座を2025年11月から2026年3月にかけて開催しました。テーマは、「マーケティングオートメーション(Marketing Automation、以下MA)」を軸に、顧客理解、ロイヤル化、データ分析、AI活用を実務へどう結び付けるか。本レポートでは、講義の背景や狙いとともに、各回で扱われた内容や演習の要点を振り返ります。

目次

第1回:MAの基礎と顧客ロイヤル化の全体像を学ぶ

2025年11月から2026年3月にかけて、全4回で開催された「マーケティングオートメーションと顧客のロイヤル化」講座。講師はマーケティング講師の嶋田智成氏

全4回講座の導入編となる第1回では、MAの基本概念と、顧客ロイヤル化をどのように設計するかという全体像が示されました。講師を務めたマーケティング講師の嶋田智成氏は、MAを「顧客行動データに基づき、マーケティング活動を自動化・最適化する仕組み」と定義。単なる配信の自動化ではなく、顧客理解やリード育成、顧客体験の向上、さらには投資対効果の改善までを含む“実務基盤”として捉えるべきだと説明しました。

講義前半では、自動配信、セグメント管理、スコアリング、行動トラッキング、効果測定といった主要機能を整理。特に、AIの導入によって、予測スコアリングやコンテンツ生成に加え、音声・画像を含む分析までが実務に入り始めている点が強調されました。

また、ロイヤルカスタマーを「高頻度かつ継続的に利用する上位顧客」と定義し、継続利用や会員プログラム、ブランドへの愛着や推奨行動といった特徴を踏まえ、顧客のライフサイクル全体を見通して接点を設計することが、MAの中核になると述べました。

また、ChatGPT、Gemini、Copilot、GensparkといったAIツールの使い分けにも触れ、分析結果の妥当性確認には複数のAIを併用すること、資料作成のたたき台にはエージェント型ツールが有効であることを実演。一方で、出力結果には必ずファクトチェックが必要であり、引用元の確認や具体的な指示設計が欠かせない点も指摘されました。

後半は、顧客データをどのように読み解き、施策に落とし込むかという分析パートです。ここでは、「何が」「どうなる」という望ましい状態を定義し、重回帰分析(Multiple Regression Analysis)などの手法も紹介。教材データを用いた検討では、購買金額は比較的予測しやすい一方で、顧客満足度は未測定要因の影響が大きく、定量データだけでは捉えきれない側面があることが分かりました。

第2回:AI活用を前提にした分析設計と実務フローを学ぶ

第2回では、前回の基礎編を踏まえ、AIを活用した「マーケティングワークフロー」をどのように組み立てるかが中心テーマとなりました。

第2回目は、具体的なマーケティングワークフローの構築について解説

まず強調されたのは、分析以前のデータ設計の重要性です。顧客データをそのままAIに入力するのではなく、「顧客情報」と「顧客行動履歴」を分けて整理する必要があることを解説。

たとえば、氏名や年齢といった時間変化の少ない情報は「顧客情報」として、最終アクセスや利用履歴のように時間軸を伴うものは「顧客行動履歴」として管理します。両者を顧客識別子で結び付けることが基本となります。また、社外共有やAI分析に回す際には、企業名など特定につながる情報のマスキングや不要項目の除外といった、実務に即したデータクレンジングの視点も示されました。

続いて、膨大なデータをどのように扱うかが論じられました。数千万人規模のデータをそのまま扱うのではなく、年齢や地域などの属性を踏まえ、代表性を保ったサンプルに縮小することで、分析可能な規模に落とし込むことが重要です。この際、最初から変数を増やしすぎず、意味のある基本項目から検討を始めることで、膨大なデータでも分析に適したものになります。

印象的だったのは、「達成したことから分析する」というアプローチです。成果の出た施策を起点に、反応した顧客の属性や行動履歴、接触コンテンツを分析し、その傾向に近い未達成者へ施策を展開していく考え方です。

このとき鍵となるのが、「ホットな顧客」を見つけるための指標設計です。ポイント利用頻度や最終利用日からの経過日数、ウェブアクセスとアプリ起動の組み合わせなど、成果につながりやすい状態変化を変数として定義することが、パーソナライズ配信の前提になると説明されました。

後半の実践パートでは、ノーコードでワークフローやエージェントを構築できるLLMアプリ開発基盤「Dify」を取り上げ、分析、レポート作成、コンテンツ生成をマーケター主導で進められる可能性にも言及。実演では、顧客一覧と顧客行動履歴のCSVを読み込み、LLMに渡して分析レポートを生成する一連の流れをワークショップ形式でおこないました。

AIは完成品をそのまま採用するためのものではなく、施策の種を増やし、それを検証可能な形に整理するための道具として使うべき––––––この点が、第2回の重要なポイントとなっています。

第3回:データを踏まえた施策立案と提案設計を磨く

折り返し地点となる第3回は、MAの基礎やワークフロー構築を踏まえ、それらを実際の提案へ落とし込む「マーケティングスキルアップ」の回となります。提出された事前課題を題材に、良い点と改善点を確認しながら、各自のシナリオを実務視点で磨いていく構成です。第1回、第2回が概念整理や分析手法、AI活用の基礎を扱ったのに対し、第3回では、「どのターゲットに、どの変数を用い、何をKPIに設定するのか」を具体的に解説していきました。

前半では、参加者一人ひとりの施策案に対して嶋田氏が講評をおこないました。たとえば、期限付きポイントを保有しているにもかかわらず使用していない層に対し、「損をしたくない」という心理を刺激して再訪を促す案については、損失バイアスをどう施策に落とし込むか、LINE開封率やアプリ起動率といったKPIの妥当性、通知文言やクリエイティブの設計まで、「検証の視点」が重視されていた点が印象的です。

後半では、カードや決済サービスの利用促進、休眠顧客の呼び戻し、若年層への決済定着といった、より事業成果に直結するテーマが扱われました。ここでは、「高年収層を狙う」といった抽象的な設定では不十分であり、継続年数や決済履歴、ポイント保有状況などをもとに、反応しやすいユーザー層を具体的に特定する必要があると指摘されました。時系列データをもとに、どの段階にいるユーザーに対して何を促すのかを設計することが、シナリオ構築の基盤になると示されました。

あわせて、AIで生成したダミーデータを用いてシナリオの有効性を事前に検証する手法も紹介されました。必要なカラムやデータ形式を明示し、時系列の整合性を保ったうえで仮説検証に活用するという考え方は、第2回で扱ったAI活用を、提案検証の段階まで発展させたものといえます。

第4回:分析結果を施策と継続運用へ結び付ける

総仕上げとなる第4回では、これまでの学びを実データの分析と施策設計に結び付けることがテーマとなりました。

嶋田氏は、顧客情報のような静的データと、購買や利用履歴といった時系列データを組み合わせ、分析から考察、施策立案までを一連で設計する重要性を示しました。単に数値を見るのではなく、抽出条件やデータクレンジング、正規化、視覚化、考察までを含めて設計することが、実務では不可欠であると強調されました。

ここで指摘されたのが、「高い定着率に見える数字を、そのまま評価してはいけない」という点です。たとえば定着率96%という一見良好な数値であっても、その内訳を分解すると、ポイント施策に依存して維持されている可能性があります。「ポイント残高の確認のみで来訪している層」と「決済や他機能の利用まで進んでいる層」を分けて捉えなければ、「見かけの定着」と「本当の定着」は区別できないという考え方です。

「高い定着率に見える数字を、そのまま評価してはいけない」と指摘する嶋田氏

また、ポイント施策に依存しない来訪理由の設計についても議論が及びました。通知やトップページ誘導といった量的な接点よりも、決済や申し込み、検索、コンテンツ閲覧といった目的の明確な接点のほうが価値を持つとされます。趣味・関心データの活用においても、単なるクーポン配布ではなく、生活に近い関心領域に応じた加盟店提案へとつなげることで、実際の行動変容を促すことが重要だと示されました。

後半では、分析結果を踏まえた具体的な施策とKPI設計が提示されました。最優先施策として挙げられたのは決済サービスの利用促進であり、あわせて複数サービスへの導線強化や、ポイント以外のコンテンツ導線の整備も重要施策として整理されました。短期・中期・長期の視点で段階的に取り組むロードマップの考え方が示された点も特徴的です。

加えて印象的だったのは、分析を単発の作業で終わらせず、継続的な運用へと繋げる姿勢です。属人的な判断に依存しない再現性のある分析体制を構築し、改善を回し続けることの重要性が強調されました。

国内のMA市場は拡大が見込まれ、今後も伸び代のある領域となっています。本講座は、そんなMAを単なるツール活用にとどめず、分析と施策を往復しながら顧客理解を深めていく“実務”として捉え直す機会となりました。

企業ニーズに応える、マイナビ出版の講座づくり

開催後にはアンケートを実施。受講者の80%が講座内容に「満足」、90%が「実務に活かせる」と回答するなど、本講座が現場に寄り添った実践的な内容であったことが読み取れます。また、顧客データ活用やスコアリングモデルの最適化といった、より専門性の高いテーマへの関心が集まり、講座を通して受講者の学習意欲も向上しました。

この講座を主催したマイナビ出版は、こうした企業ニーズを的確に捉え、領域に縛られない講座設計を行える点を強みとしています。編集・コンテンツ制作で培ってきた知見を生かし、内容を理解しやすく「現場で使える形」に落とし込むノウハウを持っていることは、同社ならではと言えるでしょう。講義型やワークショップ型など、実施形式も柔軟に対応可能です。

テーマを問わず、自社課題に即した講座や研修の実施を検討している企業担当者は、ぜひマイナビ出版へ問い合わせてみてはいかがでしょうか。

株式会社D2Cについて

2000年6月1日、株式会社NTTドコモ、株式会社電通、株式会社NTTアドの3社合弁で設立。2026年1月より株式会社CARTA HOLDINGSの子会社となる。D2Cでは主にNTTドコモが保有するデータを起点とした広告マーケティングソリューションの企画開発事業を中心に、戦略立案からメディアプランニング、データ活用、クリエイティブ、CXなど、デジタル領域を中心に幅広いマーケティング支援を展開しています。
URL:https://www.d2c.co.jp/

※株式会社D2Cは、2025年10月1日付で、株式会社D2C Rおよび株式会社D2C IDと合併いたしました。以下のサイトでは、D2Cの各事業領域に関する有益な情報を引き続き発信しております。
 D2C マーケティングエージェンシー事業 :https://www.d2cr.co.jp/
 Webマーケティングメディア「CANVAS」: https://canvas.d2cr.co.jp/
 D2C マーケティング&クリエイティブ事業:https://www.d2cid.co.jp/

文:栗原亮、写真:マイナビ出版

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