
開発期間を約80%に削減。AIプラットフォーム「Base44」がWeb制作会社のビジネスモデルを変える理由

バイブコーディングでアプリ・Webサイト開発を行えるAI搭載のプラットフォーム「Base44」。中小企業を中心にAI活用を支援しているジャングルジム代表取締役の江頭淳さんは、そのアンバサダーとして、Base44に関する情報の発信やBase44コミュニティの運営に携わっています。また江頭さんは、プロダクト開発などにBase44を日々活用していると言います。
アプリ開発をする手段がさまざまある中で、江頭さんはなぜBase44を選んだのでしょうか。その活用方法や導入メリットについて語っていただきました。また、Web制作の現場にBase44を取り入れる可能性についてもうかがいました。

江頭 淳さん
ジャングルジム株式会社 CEO
1981年福岡生まれ。大学卒業後、宝飾小売業のMg、Vantanにて広報・販促・新規事業の立ち上げを実施。この頃から副業としてグラフィックデザインやデジタルアートブック等の出版編集などを中心に活動する。その後マイナビにて広報戦略プランナー・制作ディレクターを務める。中堅印刷会社の社会事業としてサイドワークでスタートアップ支援を実施。2016年独立後、2019年「価値創造」をテーマとしたジャングルジム株式会社を設立した。Base44アンバサダー /Base44の法人パートナー。
目次
アプリがすぐ形になる「Base44」がもたらすメリット
–––––ジャングルジムではどのような事業を手掛けられていて、その中でAIをどのように活用していますか。
江頭淳(以下、江頭) 私たちは「気づきのきっかけをつくる」という理念のもと、顧客の変容をお手伝いしています。主に中小企業を対象に、AIが当たり前に使われる状態となる「AIネイティブ化」を支援しています。
事業としては3つの柱があり、1つは自社サービスの「AIオンボーディング」を提供しています。これは、企業がAI活用にどのような体制・方針で取り組めばよいかをお手伝いするもので、業務アプリの内製化を伴走・支援します。
2つ目が、プロダクト開発です。こちらはSEOの最適化を支援するプロダクトなど、弊社または顧客と協業で開発しています。
3つ目はブランディングで、大手企業の採用ブランディングなどを手掛けています。Base44を活用しているのは、主に1つ目と2つ目の事業です。
–––––江頭さんご自身のキャリアとしては、ディレクター職とエンジニア職どちらですか。
江頭 ディレクター・プロデューサー寄りです。何の課題を解決するためにどういう設計をするとよいか、どんなシステムを組めばよいか、どの言語で実装し、どのようにして運用に乗せていけばよいのかといった全体像は描けます。ただ、コードは書けないので、従来はエンジニアに実装を依頼していました。

–––––AIを活用したアプリ開発には、どのようなきっかけで取り組み始めましたか。
江頭 ChatGPT(GPT-3.5ベース)の台頭を起点に、2023年初頭から、AIを実装にどこまで活用できるのか試すようになりました。コーディング以外は自分でできるので、そこをAIでできたら便利になると考えたからです。2025年8月頃にはバイブコーディングという概念が広まり始め、Claude CodeやCursorを使ったプロダクト開発にも取り組みました。ただその頃は、AIが今ほど優秀ではなかったのもあり、高頻度でエラーが出て、監視をするのが大変でした。
–––––案件にもバイブコーディングを活用していましたか。
江頭 バイブコーディングの活用でいくと、この頃はクライアントワークでのWeb構築やシステム構築、自社ツールの開発にClaudeとCusorを使っていました。ただ、現在でいうところの自己学習ループがなかったので、あれこれ苦心していました。
そうした中で、良い方法はないかとYouTubeで情報を探していた際に、Base44の広告を見て。試しに触ってみたら、すぐに動くものができ上がり、「これだ!」と思いました。それまでにLovableやBolt.new、Replit、v0といったAI搭載のアプリ開発プラットフォームも触っていましたが、その中でも速さやクオリティが圧倒的でした。

–––––他のプラットフォームで制作した場合と、どのくらい違ったのですか。
江頭 たとえばWebサイトの場合、ClaudeやFigma Makeを使用してデザインを調整し、モックアップやカンプをつくるのに、どんなに急いでも2日ほどかかっていました。それがBase44では10~15分くらいでできて、しかも動くんですよ。もちろん初期段階では粗がありますが、動く要件定義として機能するので、実現可能性を早い段階で検証できます。
従来は1カ月半~2カ月かけてつくった要件定義書を顧客に見せ、承認を得て実際につくってみたら、「ちょっと違う」という話になることも往々にしてありました。しかしBase44で動くものをつくって見せると、具体的なフィードバックがもらえ、齟齬が少なく制作を進められます。「この項目は不要だけれど、この項目を追加してほしい」といった声にも、その場ですぐに対応できますし。
コンペに参加したときも、オリエン資料をもとにBase44でデモをつくってプレゼンしました。要件定義書などから非エンジニアの方がアプリを正確にイメージするのは難しいですが、実際に動くものを見せられれば話が早いです。Base44を使うようになって、プロジェクトの進む速度が大きく変わりました。
–––––アプリの開発自体もスピーディになりましたか。
江頭 体感では、他のSaaSを使って同等の機能を開発する場合と比べて、70%~80%ほどの期間でつくれます。そうなると、おのずと開発コストも下がります。従来は予算面でITへの投資が難しくDX化やAI活用が進まなかった中小企業にとっても、救いの一手となります。自社に何が必要かという課題を適切に見つけて、それをどのようなステップで改善していくのかというロードマップが書けさえすれば、短期間で形になります。
–––––課題を見つけて、ロードマップを書くところが、ジャングルジムで担っている部分ですね。
江頭 そうです。
「Base44」で開発したアプリでさまざまな企業課題を解決
–––––実際にBase44で開発したアプリには、どのようなものがありますか。
江頭 自社用に開発したものでは、名刺管理アプリ「Meishift」があります。スマホカメラで名刺の写真を撮影すると、自動で文字データが読み込まれます。ここまでは一般的な名刺アプリと同じですが、その際にタグを登録でき、それを元に配信管理をできる点が特徴です。一斉配信はもちろん、ステップ配信などタグに応じたメールマーケティングを行えます。
名刺を営業活動に活用する際、名刺情報をCRMに取り込むプロセスが手間でボトルネックになると感じたため、こうした仕組みにしました。裏側でメール配信エンジンであるblastengineのAPIを連携させているので、メールの配信状況や開封率などのデータも取得できます。Base44は、さまざまなAPIと連携できる点も強みです。
–––––制作期間はどのくらいかかりましたか。
江頭 Base44での制作に慣れていることもありますが、3日ほどでできました。
ほかに顧客と共同開発したものとしては、食品のプロデュース事業を手掛ける会社の営業促進ツールがあります。この会社では、発酵食品などの日本食材を台湾やフランス、イギリス、アメリカなどで展開しています。食品の海外輸出はプロセスがとても複雑なので、優れた製品を開発していても、自社で輸出を行うのは難しいという企業は少なくありません。Base44で、そうした課題を持つ食品製造会社に対して効率的に営業を行うためのCRMを開発しました。

江頭 仕組みとしては、まず経済産業省が提供する「Gビズ」という法人データ提供サイトから、法人名や法人番号をAPIで取得します。次に、アメリカのPerplexity社が提供するリアルタイムWeb検索ができるAIモデル「Sonar」を使って、Webサイトをクロールし情報を収集します。あらかじめ営業活動に必要な項目を30個ほど設定してあり、収集した情報をBase44でつくったアプリ上で統合します。収集項目の中にはメールアドレスもあるので、Meishiftと同様の配信機能を使って、初期営業を自動化できます。単なるアプリ開発ではなく、業務フロー全体を構築しました。
過去にはこうしたシステムをゼロから開発した経験もありますが、非常に大変です。それが、Base44を使ったら1週間ほどで形になりました。他にも、CRMやSFA、ウェビナー運営アプリなどを、業務フローとあわせて開発することが多いです。
–––––Base44で制作したアプリは改善・改修がしやすい点も強みですが、納品後は企業内でプロンプトを入れて修正しているのでしょうか。
江頭 はい。ただ、複雑に組み上がったものを触ることに不安を抱き、「ここを触って大丈夫でしょうか?」と連絡が来ることが多いです。「もし何かあっても、リバートして元に戻せるので安心して触ってください」とお伝えしているのですが。そうした不安を解消し、社内で運用・自走できるようにしていくことが、今後の課題だと思っています。そのためにも、制作段階から一緒につくって慣れてもらう案件が最近は多くなっています。
また、Base44をアプリ開発だけに使っているわけではなく、先述した「AIオンボーディング」の基盤としても活用しています。そのアプリにこれまでどのような指示を出し、どのように構築してきたのか。背景には何があったのか、といった情報をまとめたヘルプドキュメントをNotionなどに保存しておきます。アプリに手を加える際に、その情報を参照して、どうすればよいのかをBase44に相談してもらうという仕組みにしています。そしてClaudeとBase44をMCPで繋いで、Claudeの画面上から構築を進めていけるようにしています。
そうした全体像をつくっておかないと、Base44などのAIツールをただ導入しただけでは、企業のAIネイティブ化はなかなか進みません。ガイドラインやガバナンスとともに、既存のIT基盤を含む全体設計があって初めて組織全体のAIネイティブ化が進むと考えています。
–––––Base44を使っていて、特に便利だと思う点はありますか。
江頭 たくさんありますが、2026年6月に独自のLLM「Base 1」が導入され、提案される内容の精度が大きく上がったと感じています。先ほど、ヘルプドキュメントを読みにいって判断する仕組みにしているというお話をしましたが、Base 1以降はそれが不要となりました。
あと「ずっとこれが欲しかった!」と思った機能としては、最近追加された「テストリンク」があります。テストリンクボタンをクリックするだけでダミー環境ができるので、すでに公開・運用中のものを改修する際や、顧客など外部に共有する際にも便利になりました。
少し前に追加された「テスティングエージェント」でも、作業時間が大幅に軽減されました。アプリをつくった後に、画面遷移をしていく上でエラーが発生しないかを確認する必要があります。昔はそれを人海戦術で行っていましたが、エージェントがある程度のシナリオを考えて、人の代わりに実行してくれます。ハッピーシナリオのみですべてのケースを網羅できるわけではありませんが、それだけでもコーヒーを飲んでいるくらいの短時間で終わるのはとても助かります。
他には「ワークフロー」もすごい進化だと思います。それまでは、たとえばGoogle Meetで実施したミーティングを議事録に起こし、Notionに保存してみなに共有し、そこからタスクを抽出して担当者に振っていくというようなワークフロー支援ツールを、ZapierやMake、n8nなどで構築していました。それが、Base44だけで組めるようになりました。
2026年8月末には、Base44のSuperagentがさらなる進化を遂げました。Agentが会議に入って議事録を作成し、それをタスクとして分解し、自動で参加者に送り分ける、といったこともできるようになっています。しかもその議事録は、「ノート」というAgentの記憶に蓄積されていくため、私より正確に要件を覚えてくれます。現在のトレンドの一つである「AI社員」が、ここまで手軽に実装できるのは驚愕です。Base44は毎週のようにアップデートがかかるので、こうして日々便利になっています。
「Base44」で変わる、Web制作会社・Web制作者のビジネス
–––––ジャングルジムでは、どのような体制でBase44を使ったアプリ開発をしていますか。
江頭 用途によりますが、たとえばコーポレートサイトをリニューアルする場合は、フロントエンドのUIデザインとバックエンドで回すワークフローは一度切り離して、別々に考えます。UIについては、タッチポイントのガイドラインを決めてから外部のデザイナーに依頼し、Figmaで制作してもらいます。
バックエンド側では、問い合わせフォームをCRMに入れて名刺データとも紐づける、といった設計をします。我々はデザインだけを受けることはあまりなく、戦略ベースでの設計や業務設計全体なども含めた、ビジネスコンサルティングの面も考えていきます。
そのフロントエンドとバックエンドを統合するために、Base44を使います。デザインはFigmaのデータをもとに実装できるので、コーディングの工数が大幅に減ります。
–––––Web制作会社やWebクリエイターの方々にも、Base44は役立ちそうですね。
江頭 売上が上がると思いますよ。フロントエンドのコーディングやバックエンドの開発工数が大幅に減るので、おのずと受けられる案件の数が増えますから。また、従来のWeb制作は広報宣伝やマーケティング部署からの依頼が主だったと思いますが、Base44でCRM開発など他の部署の課題を解決する仕組みをつくれるので、1社当たりのLTVを高められます。
さらに、Base44で効率化して空いた時間で自社サービスを開発し、ストック型のビジネスで新たな収入源をつくることもできます。クライアントワークをたくさん手掛けていると、多くの企業に共通する課題が見えてきますよね。そうした課題を解決するSaaSをつくればいいんですよ。
–––––Web制作者の方々は、そうした知見をたくさん持っていそうですね。
江頭 いっぱいあると思います。社内でBase44を使ったハッカソンをやると、それまで培った資産を活用したアイデアが出てくるのではないでしょうか。
–––––バイブコーディングでアプリの実装を行えるようになった今、エンジニアの役割はどのように考えていますか。
江頭 バイブコーディングをする場合でも、エンジニアがいる方がプラスになります。仕組みを理解して、何が必要か見えているのと見えていないのとでは、大きく違うからです。エンジニアがBase44を活用すると、開発工数は非エンジニア以上にぐっと下げられます。また、コーディング作業が減る分、彼らのリソースを再配分することができるので、さらなるプロダクト開発にも取り組めるでしょう。
Base44は非エンジニアにとってもわかりやすく、なおかつエンジニアが使っても良い成果を出すことができるツールなので、非エンジニアとエンジニアの橋渡し的な存在にもなり得ます。
–––––今後、Base44を活用してどのようなことを実現していきたいですか。
江頭 最初にお話した通り、我々が目指しているのは「気づきのきっかけ」を提供することです。Base44を使ってみて「自分たちでもつくれる、AIを活用できる」ことが理解されれば、それをきっかけにさまざまな気づきが生まれると思います。その結果、顧客のビジネスがよりよい形になっていくことをご支援できたらと考えています。

取材・文:平田順子 撮影:黒田彰