成果が出る「よいコンテンツづくり」とは? 株式会社リーピーに聞いた運用と制作のコツ
人が集まるWebサイトには、ユーザーを惹きつける「コンテンツ」が必要不可欠です。株式会社リーピーの鬼頭慶多さん、玉井貴之さんに、成果をもたらすコンテンツづくりのポイントなどを伺いました。
教えてくれたのは…

鬼頭 慶多さん
株式会社リーピー
クリエイティブデザイン部
部長

玉井 貴之さん
株式会社リーピー
マーケティングデザイン部
マネージャー
株式会社リーピー
「地方の未来をおもしろくする」をビジョンに掲げ、「Webサイト制作」、「ブランディング支援」「アウトソーシング事業」、「人材紹介事業」、「Webサービス開発」の5つの事業を展開。全国の地方企業、地方自治体に対して、“デザイン”と“デジタル”の面から売上や採用、DX化の課題を支援している。
https://leapy.jp/
良質なコンテンツは
明確な目的意識から生まれる
Webサイトにおけるコンテンツは、「認知の入り口」と言っても過言ではありません。目的を持ってサイトに来訪してくれる人もいますが、それだけでは集客の幅が狭まってしまいます。だからこそ、ユーザーを惹きつけるコンテンツを用意し、Webサイトを通じて企業やサービスを知ってもらうきっかけをつくることが大切です。
では、「ユーザーを惹きつけるコンテンツ」とは一体何なのでしょうか。それは「目的意識のあるコンテンツ」だと言えるでしょう。コンテンツをつくる目的は、大きく分けて4つ。①集客(リード獲得・予約数確保など)、②採用(人材確保など)、③ブランディング、④効率化・DX(よくある質問などのコンテンツを充実させ、問い合わせを減らすことなど)が挙げられます。
なかには「コンテンツをつくること」が目的となってしまっているケースも見受けられるのですが、それでは思うような成果につなげることはできません。「そのコンテンツがどのような目的を果たすものなのか」「本当に必要なコンテンツなのか」を整理しながら、目的に合ったコンテンツを考えることが重要です。
ユーザーに向き合い、
ニーズと属性を見極める
しかし、目的意識を持ってコンテンツをつくったとしても、ユーザーに見てもらえなければ目的を達成することは難しいでしょう。そこで、もう1つ忘れてはいけないポイントが「ユーザーに向き合い、ニーズを見極めること」です。
情報を届けたいターゲット層を明確化するだけでなく、ユーザーの悩みやニーズも細かく分析。その人だけに刺さるようなコンテンツをつくることができれば、同じような悩みやニーズを抱えたユーザーを惹きつけることができるはずです。
また、集客を増やそうとSEO対策ばかりを意識するのも注意が必要です。たしかにGoogleのアルゴリズムは、ユーザーに役立つコンテンツを評価し、検索上位に表示しています。そのため、SEO対策に注力していればアクセス数を稼ぐことは可能ですが、「問い合わせを増やす」「ブランド認知度を高める」といった本来の目的につながるかといえば、必ずしもそうとは言い切れないのです。
つまり、成果につながるコンテンツをつくるためには、ユーザーに向き合う姿勢が非常に大切です。「Googleを見るのではなく、ユーザーを見る」ことを意識してみてください。
そして、ユーザーを意識する際は、サイトを訪れる「ユーザーの属性」もしっかりと把握しておく必要があります。
例えば、BtoCのECサイトであれば、主に、実際に商品を購入したりサービスを利用したりするユーザーが訪れます。一方BtoBのサイトでは、決裁権のない担当者がサイトに訪れ、サイト上にあるコンテンツから情報を得て上司に報告する、というケースもあるでしょう。そのため、ホワイトペーパーを用意して社内共有しやすくするなど、エンドユーザー(決裁者)だけでなく、実際にサイトを見る担当者が使いやすいコンテンツを準備することは、非常に重要な視点だと考えています。
ユーザーを惹きつけるには
「パーソナライズ化」が鍵
Webコンテンツにはさまざまな種類がありますが、なかでも「お客様の声」や「商品レビュー」といったような「ユーザー生成コンテンツ(UGC)」は、今も重要視されています。さらに言うと、「よりパーソナライズ化したコンテンツ」が求められていると感じます。ニーズの異なるユーザー一人ひとりに向き合い、求める情報をしっかり提供することができるかという視点は、コンテンツづくりにおいて今後一層意識すべきポイントとなってくるでしょう。
リーピーのコーポレートサイトにある制作実績ページも、「パーソナライズ化」に重きを置いて設計しています。最大の特徴は、細かな絞り込み検索が可能な点です。530を超える事例のなかから、つくりたいサイトの種類はもちろん、色やテイスト、制作の目的など、さまざまな視点から検索することができます。業種も細分化しており、例えば「建設業」であれば、そこから「エクステリア・外構」「土木・建築」「リフォーム・リノベーション」「塗装業(外壁・屋根)」と、セグメントに分けて掲載。「同じ業界・業種の会社がどのようなサイトをつくっているか知りたい」というニーズに対して、迅速にお答えできるような設計にしています。ユーザーが自社と同じ境遇の事例を探しやすくなっただけでなく、「この事例のようなサイトをつくりたい」とサイトを見たクライアントが希望のテイストを伝えてくれることが増えたため、制作側としてもユーザーのニーズやイメージを把握しやすくなったというメリットが生まれています。

AI時代に必要な視点は
「経験」と「独自性」
現在、生成AIの台頭により、世の中はコンテンツであふれています。そこで他に埋もれない良質なコンテンツをつくるために重要なのが「経験」と「独自性」の2つです。
「経験」は、コンテンツ制作者が持つ経験や実体験に基づいた情報であるかどうか、ということ。Googleが定めるWebサイトの評価基準「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼)」の頭文字にもある通り、検索エンジン側は「経験」に基づいたコンテンツを評価する傾向にあります。前述の「ユーザー生成コンテンツ(UGC)」が重要視されている理由にもつながるのですが、生成AIは経験談をオリジナルで生み出すことができないため、「経験」に基づいたコンテンツを用意することは、他サイトに埋もれないための1つの要素となっています。
そしてもう1つが「独自性」です。今や一般的な情報コンテンツだけを載せているサイトはますます淘汰されていく時代。他サイトと差別化するためにも、独自性を持ったコンテンツづくりは欠かせません。例えば企業サイトの場合、「その企業にしか提供できない情報」や「その企業独自の強み」を発信することで、独自性を確立できるでしょう。そして、その強みを1つの起点にして、サイトの枠組みやコンテンツを考えていくことが大切です。
しかし、なかには「自社には強みがない」と感じている企業も少なくありません。以前当社がブランディング支援とサイトリニューアルを担当させていただいた「近江リース株式会社」様も、はじめは「自社の強みが何か」を悩んでいました。ヒアリングやワークショップを重ねるなかで見つけた強みは「人」。そこから、「働く人」を見せるデザインや「人の想い」を感じてもらえるコンテンツ、同社スタッフの呼び名である「レンタルマン」というキーワードを使ったメッセージを押し出すなど、「人」を軸としたコンテンツ制作を行いました。クライアント側で「強みが見つからない」という場合、制作側がブランディング支援から伴走し、強みを見つけ出していくアプローチが効果的だと考えています。
ただし、見つけ出した「強み」がユーザーのニーズと結びつかなければ、ユーザーに選ばれる良質なコンテンツをつくることは難しいでしょう。必ずユーザーの視点を意識したうえで、独自性のある強みを見つけていくことが重要です。

更新頻度に固執せず
柔軟なコンテンツ運用を
コンテンツはつくって終わりではなく、ユーザーを長く惹きつけ、継続していく意識が不可欠です。良質なコンテンツを継続していくためには、まず制作開始のタイミングで「再現性」があるかどうかをしっかりと見極めなければいけません。
例えば、集客目的でブログを追加したとしても、更新にリソースを割くことができず古い情報しかなければ、ユーザーはネガティブな印象を抱くでしょう。コンテンツ制作に着手する前に、まずはそのコンテンツを継続していくことができるのかどうかを慎重に判断することが必要です。
更新頻度はWebサイトによって異なりますが、少なくとも月2回を目安にするとよいでしょう。しかし、「更新頻度に固執しない」という意識も大切です。例えば「新しい記事コンテンツを月に4本アップする」という目標を立てていても、いつしか記事更新がノルマ化し、ユーザーが望まないコンテンツができあがってしまう、というケースも少なくありません。目標を立てて、計画的な運用を心がけることは必要ですが、集客やブランディングといった本来の目的から外れないためにも、柔軟な運用を意識してください。
また、既存のコンテンツを見直すことも欠かせません。定期的にアクセス状況を確認したり、日々変化するユーザーのニーズを察知したりしながら、今のユーザーに刺さる形にアップデートしていく必要があります。コンテンツ改善については、常に「目的」に立ち返り、優先度を見極めて進めることが重要です。
例えば、「問い合わせにつながっている記事」と、「アクセス数は多いものの問い合わせに結びつかない記事」があれば、まずは前者を強化し、成果をさらに向上させることが効果的。その後、問い合わせに結びついていない記事を見直し、リーチ改善のためにリライトを行うといった優先度判断をしっかりと行った上で、コンテンツの改善を進めていきましょう。
最後に、Webサイトやコンテンツを運営する企業が常に魅力的であり続けることも重要です。チャレンジを続ける企業は、ユーザーにとっても魅力的に映るものです。制作側もクライアントの成長を支え並走してくことで、そこからまたユーザーに響く新たなコンテンツを生み出すことができると信じています。

Text:室井 美優(Playce)
※本記事は、「Web Designing 2024年12月号」の記事を一部抜粋・再編集して掲載しています。
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